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事の発端
アレッサ令嬢
しおりを挟むこの時のアレッサは、姉妹達を見下ろせるこの事態に歓喜していた。
「ようやく自分が王妃になる時代が来たのだ」と。
アレッサは元々これが狙いで婚約候補者になったのだ。
次期国王であるロズワート王太子と婚約が成立すれば、自身が王妃になることは間違いないのだ。それには邪魔者であるガルシア令嬢達を蹴落とさなければならなかった。
そこでまずアレッサはロズワートを体で手篭めに取り、ロズワートが婚約解消してくれるように仕向けたのだ。
無論、嫌がらせについては事実無根であるが、それくらい話を盛った方がこちら側も有利になる。自分が「嫌がらせを受けた」と言えばそれこそがロズワートの中で事実になるのだから。
しかし、婚約解消しただけでは後に何をされるか分かったものではない。
それもアレッサは頭に入れていた。
そして、今ここで自分が言うべきことであるということも確信していた。
「ロズワート様」
アレッサがそう呼ぶと、ロズワートは嬉々に振り向く。
「どうしたのだ?我が愛しのアレッサよ」
「私、皆様のことを許そうと思いまして」
「何!?」
「だって、婚約解消されてしまって蔑ろにされてしまうなんて、可哀想ではありませんか。確かに、私がされてきたことに比べれば大したことないのでしょうが、それでもガルシア令嬢方を陥れるような真似はしたくありませんの」
「アレッサ……君はなんて慈悲深いんだ!貴様ら!アレッサはこんなにも心優しいというのに、何も感謝を述べられないのか!?」
表情が代わる代わる忙しそうなロズワートを、姉妹達はただ呆然と眺めている。その顔を満足そうに眺めたアレッサは、再び口を開いた。
「ですから、私考えましたの。隣国にいらっしゃるラヴェルト公爵家に嫁いではどうかしらと」
「ラヴェルト公爵家……そうか!そういうことか!」
ロズワートは何かを閃いたように破顔していたが、姉妹達はそれどころではなかった。
ラヴェルト公爵家には、ある噂があったからだ。
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