四人の令嬢と公爵と

オゾン層

文字の大きさ
上 下
1 / 101
事の発端

除外

しおりを挟む



 「ガルシア辺境伯令嬢!王太子であるこのロズワートは、今此処で貴様らを婚約候補から除外することを宣言する!!」


宮殿内でそう声高らかに叫んだ王太子の声に、跪いていた4人の令嬢は目を丸くした。





__________



 遡ること10年前。

 ガルシア辺境伯の令嬢であるオリビア、ルーナ、エレノア、クロエの4人姉妹は、未来の国王となるロズワート王太子の婚約候補者となった。
 姉妹は候補者である立場であっても、将来王となる王太子の妃として恥ずかしくないよう、作法から勉学にかけて懸命に励んでいた。時に挫けそうになることもあったが、それでも健気に王妃としての勉学に勤しむ様子を父親であるデカート・ガルシア辺境伯と妻のミシリアは温かく見守っていた。



 しかし、結果はあまりにも報われない形で帰ってきた。


「貴様らはあまりにも醜い!オリビアは大層老けて顔色も悪く、ルーナは令嬢とは思えないくらいに下賎な表情だ!エレノアは歳に似つかわしくないほどに幼稚で、クロエは若いが荒々しくお淑やかでない!そんな貴様らに対してこのアレッサ嬢を見ろ!これほどまでに美しく、清らかな女性を私は今まで見たことがなかった。だかこそ気付いたのだ!貴様らは私の婚約者として相応しくないのだとな!!」


 ロズワートは隣に佇む女性の金の髪を優しく撫で、言い切ったように誇らしげな顔をした。
 ロズワートの隣で穏やかに微笑んでいた女性は、クラシウス男爵家の令嬢であるアレッサ嬢であった。アレッサは1年ほど前に婚約候補者として名乗りを上げた者で、たった1年でロズワートの心を奪った者でもあった。
 そんな彼女が今、ロズワートからの寵愛を見せびらかすように姉妹達を見下ろしていた。


「そしてもうひとつ!!貴様らと婚約解消した理由はこれだけではない!」


 ロズワートは宮殿内にいる使用人達に聞こえるように、声をあげた。


「貴様らはアレッサ嬢を脅迫し、婚約解消させようとした!!それが一番の理由だ!!」


 ロズワートの言葉に、姉妹は顔を見合わせた後、真っ先にロズワートへ顔を向けたオリビアが口を開いた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】君の世界に僕はいない…

春野オカリナ
恋愛
 アウトゥーラは、「永遠の楽園」と呼ばれる修道院で、ある薬を飲んだ。  それを飲むと心の苦しみから解き放たれると言われる秘薬──。  薬の名は……。  『忘却の滴』  一週間後、目覚めたアウトゥーラにはある変化が現れた。  それは、自分を苦しめた人物の存在を全て消し去っていたのだ。  父親、継母、異母妹そして婚約者の存在さえも……。  彼女の目には彼らが映らない。声も聞こえない。存在さえもきれいさっぱりと忘れられていた。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります

せいめ
恋愛
『小説年間アクセスランキング2023』で10位をいただきました。  読んでくださった方々に心から感謝しております。ありがとうございました。 「私は君を愛することはないだろう。  しかし、この結婚は王命だ。不本意だが、君とは白い結婚にはできない。貴族の義務として今宵は君を抱く。  これを終えたら君は領地で好きに生活すればいい」  結婚初夜、旦那様は私に冷たく言い放つ。  この人は何を言っているのかしら?  そんなことは言われなくても分かっている。  私は誰かを愛することも、愛されることも許されないのだから。  私も貴方を愛さない……  侯爵令嬢だった私は、ある日、記憶喪失になっていた。  そんな私に冷たい家族。その中で唯一優しくしてくれる義理の妹。  記憶喪失の自分に何があったのかよく分からないまま私は王命で婚約者を決められ、強引に結婚させられることになってしまった。  この結婚に何の希望も持ってはいけないことは知っている。  それに、婚約期間から冷たかった旦那様に私は何の期待もしていない。  そんな私は初夜を迎えることになる。  その初夜の後、私の運命が大きく動き出すことも知らずに……    よくある記憶喪失の話です。  誤字脱字、申し訳ありません。  ご都合主義です。  

処理中です...