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鬼
4話
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鬼か。
衣音は心臓を掴まれたような錯覚に陥った。
違う。
なんと美しい男だのだろうか。
だが、肌とその白い髪は、それを鬼と思わせた。
六間の弟子に、こんな者がいたとは、衣音は知らなかった。
六間が弟子たちと談笑などをする中に、こんな者はいなかった。
「…っ」
なんとか声を押し出そうと藻掻くが、両手が震え、汗を握るばかりだ。
男は、睨んでいたかと思えば、つまらなさそうにこちらを見下ろしている。
「声も出ぬか。鬼よ」
その長い指が、素早く襟元を掴むのが見えた。
「…ぁっ!」
息も声も自由になったのも束の間、乱暴に、引き寄せられ、冷たい床に叩きつけられた。
「…つ…ぅ」
突然の出来事に、衣音は口の中を切った。
錆のような嫌な味が口に広がる。
冷えた床板に手を着き、何事かと辺りを見渡した。
御簾越しの奥間に、灯された蝋燭を見た。
今、乱暴に自分を屋敷内に引き入れた張本人は、と見れば探すまでもなくすぐそばに立っていた。
衣音は睨み上げた。
自分を鬼と呼び、いきなり床に叩きつけたのはどういうことか。
父の六間に言いつけてもおかしい話ではない。
「おまえ、俺が誰かしらないのか」
静かに見下ろすその白い顔に向かって、衣音は憤りをぶつけた。
その男は初めてまともに話す衣音に向かい静かに嘲笑った様だった。
形の良い薄い唇が、弧を描く。
「おまえが、誰かだと?」
「そうだ」
「鬼だろう」
「な…」
衣音は半ば呆れて、次の言葉が出てこなかった。もしかしたら、この男は六間の弟子ではなく、ただの居候ではないか。
衣音は心臓を掴まれたような錯覚に陥った。
違う。
なんと美しい男だのだろうか。
だが、肌とその白い髪は、それを鬼と思わせた。
六間の弟子に、こんな者がいたとは、衣音は知らなかった。
六間が弟子たちと談笑などをする中に、こんな者はいなかった。
「…っ」
なんとか声を押し出そうと藻掻くが、両手が震え、汗を握るばかりだ。
男は、睨んでいたかと思えば、つまらなさそうにこちらを見下ろしている。
「声も出ぬか。鬼よ」
その長い指が、素早く襟元を掴むのが見えた。
「…ぁっ!」
息も声も自由になったのも束の間、乱暴に、引き寄せられ、冷たい床に叩きつけられた。
「…つ…ぅ」
突然の出来事に、衣音は口の中を切った。
錆のような嫌な味が口に広がる。
冷えた床板に手を着き、何事かと辺りを見渡した。
御簾越しの奥間に、灯された蝋燭を見た。
今、乱暴に自分を屋敷内に引き入れた張本人は、と見れば探すまでもなくすぐそばに立っていた。
衣音は睨み上げた。
自分を鬼と呼び、いきなり床に叩きつけたのはどういうことか。
父の六間に言いつけてもおかしい話ではない。
「おまえ、俺が誰かしらないのか」
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その男は初めてまともに話す衣音に向かい静かに嘲笑った様だった。
形の良い薄い唇が、弧を描く。
「おまえが、誰かだと?」
「そうだ」
「鬼だろう」
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