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四の巻 一膳飯屋お多福幽霊騒動
四
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相も変わらず店の食材がなくなるのを見かねて、三太が問いただしたところ――子がいないと言っていた松吉とお紋夫婦には、実は料理人の倅がいたと判明する。
せっかく日本橋室町の浮世小路名にある料理茶屋で修業し腕を上げてきたのにも関わらず、倅は博打にのめり込んで身を滅ぼしてしまった。借金を重ね、料理茶屋から逃げ出して、今は何をしているかもわからないそうだ。
夫婦は倅を思う親心から、浅草にあった店を閉め京橋に移り住み再出発した。行方知らずの倅がわかるよう店名を変えず、いつか戻って来るのを待っていたらしい。
だから、食材がなくなったのは倅が店に忍び込み、夜な夜な漁っているのかもしれないと夫婦は考えていたという。
「……だから、知らん顔を決め込んでいたのじゃな」
菊も頷いて納得した。
「でも、困ったことになってきたんだよ」
ところが、昨晩。食材だけに留まらず店の売上が盗まれてしまったから、さぁ大変だ。
「昨晩、親父さんがうっかり売り上げを、店に置いてきたままにしちまって」
今朝、気づいた時には既に遅く、一銭も残っていない有り様だった。これには松吉もお紋も深く傷つき、とうとう三太に倅の話を打ち明けたという。
ゆくゆくは三太に飯屋を継いで貰いたい。そう望んだ気持ちに嘘偽りはない。だが、あんな自堕落な奴だが、倅も可愛いと泣きつかれたそうだ。
「おいらだってその気持ちはわかるんだ。なんだかんだ言っても、父ちゃんや母ちゃんの方が大事だから」
「で、でも、三太殿はそれで良いのか?」
あまりにも素直に受け入れる三太が心配で、光之介はうろたえる。
「仕方がないだろう。血は水よりも濃いって言うし、親子の縁は切れないもんさ」
三太の両親も松吉、お紋夫婦を信用して息子を預けた。それでも、事情が事情だけに、仕方がないと割り切ってくれるだろう。そう三太は楽観的に答えた。
「料理人の修業なら他でもできるし、何とかなるだろう。でも……」
売り上げを盗んだ倅が真っ当にやり直せるか、そちらの方が気がかりだという。
「三太殿は人が良いな。小島屋を追われた時も文句ひとつ言わなかったのぉ」
思わず三太に同情する菊であった。
「だって仕方がないだろう。おいらは雇われている身だからね」
再び大人の都合によって、三太は居場所を追われる身になってしまうのか。菊と光之助の不安は大きくなっていくばかりだった。
せっかく日本橋室町の浮世小路名にある料理茶屋で修業し腕を上げてきたのにも関わらず、倅は博打にのめり込んで身を滅ぼしてしまった。借金を重ね、料理茶屋から逃げ出して、今は何をしているかもわからないそうだ。
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だから、食材がなくなったのは倅が店に忍び込み、夜な夜な漁っているのかもしれないと夫婦は考えていたという。
「……だから、知らん顔を決め込んでいたのじゃな」
菊も頷いて納得した。
「でも、困ったことになってきたんだよ」
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ゆくゆくは三太に飯屋を継いで貰いたい。そう望んだ気持ちに嘘偽りはない。だが、あんな自堕落な奴だが、倅も可愛いと泣きつかれたそうだ。
「おいらだってその気持ちはわかるんだ。なんだかんだ言っても、父ちゃんや母ちゃんの方が大事だから」
「で、でも、三太殿はそれで良いのか?」
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