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2024/6/11の天使
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私の大学には天使がいる。話したこともなければ、名前すら知らない。知っているのは、火曜のお昼後の3限の心理学の授業で1番前の窓際の席で堂々とお昼寝していること。
今日、お弁当も財布も忘れてしまった私。一緒に過ごしたいと思えるような友達もいないからと1人でいた事が仇となり、やりたいことも昼食を摂る術もない。
「まあ、いっか…」
私は特に何もすることがないからと、3限の心理学の教室に向かった。教室では、何人かの男子が前の方の席で楽しそうに話していた。私はその明るい雰囲気から逃げるように後ろの廊下側の席に座った。
「お腹空いた…」
「ラムネならあるよ。」
ほら、と横からラムネを差し出されたから、反射で手を出すと、コロンと白いラムネが落とされた。ラムネのように白い手を辿っていくと、目の前には天使がいた。彼の周りだけで踊る光を纏って。
「ありがと…。いつの間に横…」
「珍しくない?こんな早くに教室来るの。」
「えっ?いや…お弁当忘れて…財布も忘れて…」
「だからお腹空いてたんだ笑」
私の隣に座って、いつものように机に伏せる彼。こちらに顔を向けてニコッと微笑む。どこか御利益さえありそうなその笑みを前にして、いつも通りでいられる人なんているのだろうか。
「今日はここにしよっかな。」
彼はそういうと立ち上がって、前の方の席にいる男子に大声で声をかけた。
「ねえ!俺のカバン持ってきて~」
「なんでだよ、めんどくせぇな。」
「いいじゃん!お願い!」
「ほら、持ってきてやったよ。この子は?」
カバンを持ってきた男子が私を指す。
「詩音ちゃん。ラムネあげたから友達。」
「なんだよそれ笑」
呆れるように笑ってその男子は友達の元へ戻って行った。
「なんで私の名前知ってるの…?」
「んー、なんか響きが好きだから。」
「私と友達…?」
「うん、友達。このラムネ友だちの証。やだった?」
覗き込むように顔を見られて、彼の眩しさに目が眩みながら首を横に振った。
「面白いね。詩音ちゃん。」
「からかわないでよ…」
「可愛い。」
真っ直ぐな言葉に驚いて、隣の彼を見るとさっきと同じようにニコッと微笑まれた。
「俺の名前、光!好きなように呼んで!」
「こう…くん。」
「そ、こうくん。来週まで覚えててね。」
光くんの佇まい、柔らかい声、朗らかな笑顔、名前通りだと感じながら、心に『今日の天使』という日記をしたためる。チャイムが鳴って教授が来た。
「おやすみ!」
堂々とそう言って、光くんは机に伏せた。腕の隙間から見える彼の寝顔はやっぱり天使のようで。この世のものでは無いような、そんな不思議な感じがした。
今日、お弁当も財布も忘れてしまった私。一緒に過ごしたいと思えるような友達もいないからと1人でいた事が仇となり、やりたいことも昼食を摂る術もない。
「まあ、いっか…」
私は特に何もすることがないからと、3限の心理学の教室に向かった。教室では、何人かの男子が前の方の席で楽しそうに話していた。私はその明るい雰囲気から逃げるように後ろの廊下側の席に座った。
「お腹空いた…」
「ラムネならあるよ。」
ほら、と横からラムネを差し出されたから、反射で手を出すと、コロンと白いラムネが落とされた。ラムネのように白い手を辿っていくと、目の前には天使がいた。彼の周りだけで踊る光を纏って。
「ありがと…。いつの間に横…」
「珍しくない?こんな早くに教室来るの。」
「えっ?いや…お弁当忘れて…財布も忘れて…」
「だからお腹空いてたんだ笑」
私の隣に座って、いつものように机に伏せる彼。こちらに顔を向けてニコッと微笑む。どこか御利益さえありそうなその笑みを前にして、いつも通りでいられる人なんているのだろうか。
「今日はここにしよっかな。」
彼はそういうと立ち上がって、前の方の席にいる男子に大声で声をかけた。
「ねえ!俺のカバン持ってきて~」
「なんでだよ、めんどくせぇな。」
「いいじゃん!お願い!」
「ほら、持ってきてやったよ。この子は?」
カバンを持ってきた男子が私を指す。
「詩音ちゃん。ラムネあげたから友達。」
「なんだよそれ笑」
呆れるように笑ってその男子は友達の元へ戻って行った。
「なんで私の名前知ってるの…?」
「んー、なんか響きが好きだから。」
「私と友達…?」
「うん、友達。このラムネ友だちの証。やだった?」
覗き込むように顔を見られて、彼の眩しさに目が眩みながら首を横に振った。
「面白いね。詩音ちゃん。」
「からかわないでよ…」
「可愛い。」
真っ直ぐな言葉に驚いて、隣の彼を見るとさっきと同じようにニコッと微笑まれた。
「俺の名前、光!好きなように呼んで!」
「こう…くん。」
「そ、こうくん。来週まで覚えててね。」
光くんの佇まい、柔らかい声、朗らかな笑顔、名前通りだと感じながら、心に『今日の天使』という日記をしたためる。チャイムが鳴って教授が来た。
「おやすみ!」
堂々とそう言って、光くんは机に伏せた。腕の隙間から見える彼の寝顔はやっぱり天使のようで。この世のものでは無いような、そんな不思議な感じがした。
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