100回目のキミへ。

落光ふたつ

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〖2章〗

〈気になる人④〉

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 図書委員は3年生になっても続けた。
 特段やりがいがあったという訳でもなかったけれど、他よりはマシかなと言う惰性だ。まあ多分、彼と一緒だからと言う理由もあったんだろう。
 結局3年間、彼と同じクラスになる事はなかった。関係性も他人以上友人未満のまま変わる事もなく。
 その時期は彼と当番が重なって、週に一度は話す機会が訪れた。仲良くなるチャンスだとか、そんな風に舞い上がりはしないようにした。あたしから何か行動を起こすつもりはなかったから。
「………」
 彼はやっぱり空いた時間は勉強をしている。
 とは言えもう3年生。むしろ無為な時間を過ごしているあたしの方が疑問を持たれるべきだろう。
 それは彼も同じく抱いたのかもしれない。
「大宮さんは、受験大丈夫そう?」
 あたしが暇していると、彼から話題を振ってくれる事はよくあった。それに少なからずも嬉しくなってしまっている自分がいるから、きっと彼はそうするのだろう。
 恋する乙女に半笑いを浮かべながらも、あたしはこの時間を拒絶出来ないでいる。
「いやぁ、どうだろ。ほら、あたし悪い子だから」
 勉強もしていないし、授業態度も良くはない。へへっと自虐的に笑って見せると、彼は「そうかな?」と首を傾げてくれた。
「そもそもどこの高校行くの?」
「あー、まだ決めてないんだよねー」
 行かないというのはさすがに親が許してくれないだろうけど、出来るなら楽な所が良い。そんぐらいにしか将来を考えていなかった。
 でも彼は違うんだろうとあたしは話を続けてしまう。
「そう言う加納君は、どっか頭良い所行くの? 県外とか?」
 いつもの勉強風景からそんな事を言うと、彼は意外にも首を横に振った。
「いや、仁ト高校にするつもりだよ。家から通える範囲が良かったから」
「仁トかー。それでも割と頭いいとこだよね。うちの兄ちゃんも行ってた」
「あ、お兄さんいるんだ」
「うん、10歳離れてるけど」
 そんな風に、盛り上がる訳でもなく白ける訳でもなく、世間話はなんとなく続いてなんとなく終わる。
 当番の間、ずっと彼の隣に座っているけれど、話さない時間の方が圧倒的に多い。
 しかも大体あたしは手持無沙汰にしていて。そうなると嫌でも思考が動いてしまう。
 ……加納君、仁トに行くんだ。
 手に入れた情報を頭の中で反芻し、そして、記憶を呼び起こしてしまう。
 実を言うならあたしも、親に行くよう勧められていたのだ。
 兄ちゃんも行ったんだからそこにしろって。
 勉強が面倒くさくて適当に流していたけれど、他に行きたい高校がある訳でもない。
 だからまあ、他人のせいなら頑張ってもいいのだろうか。
 その日からなんとなく、あたしの生活に教科書を眺める時間が出来た。
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