100回目のキミへ。

落光ふたつ

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〖2章〗

〈気になる人③〉

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 それはちょっとした出来心だった。
「加納君は、趣味とかないの?」
 2年生になっても続けている図書委員。それは彼も一緒で。ただ、当番が重なる日はほとんどなくなり、今日は偶々、代理を頼まれたからと彼が隣に座っていた。
 久しぶりの二人きりの時間。それに、少し前の修学旅行で他人に気持ちを打ち明けたからか、なんだかより意識するようになっていたのかもしれない。
 だからあたしは、柄にもなく踏み込んでしまったのだ。
「えっ、趣味? うーん……」
 急な問いに彼は困ったように笑いながら頭を捻る。
 そもそも彼が普段どんな生活をしているのかは気になっていた事だ。図書室の利用者は結構まばらで暇な時間も多くあるのだが、そんな時の彼はいつも勉強をしていた。
 今日だって英単語帳を眺めていて、成績も良いらしい。家で何をしたらそんなに勉強が出来るようになるのだろうか。
 と言うのは言い訳で、ただ単に彼の好きなものが知りたかっただけなのだが。
 少し間を置いた彼は、自信なさげに返答をくれる。
「趣味ってほどじゃないけど、ゲームするのは好きだよ」
 年相応なのだけれど少し予想外な答えに、ついあたしは前のめりになっていた。

「なんのゲームするのっ?」

「えっと、全部父さんが買ってくれたものなんだけどね……」
 と、彼は数本のプレイ済みゲームタイトルを挙げてくれた。その内容に少し口角が上がってしまう。
 かくいうあたしも兄の影響でゲームには結構な数触れていて、彼の口から出たゲームタイトルも当然に全て知っていた。
「大宮さんもゲーム好きなんだね」
 表情からバレたのか、ふとそう言われ、あたしは我に返り恥ずかしくなる。
「あ、えっと……女子だし、変だよね」
「そんな事ないよ。せっかくだしお勧めのゲーム教えてよ」
 向こうからそう頼まれて、あたしはどこかぎこちなく応えた。後で振り返ってみれば、もっと好きなタイトルがあったはずなのに、なんでか当たり障りのない作品を教えていたように思う。
 それでも彼は喜んでくれて、あたしに感謝までしてくれた。
「今度機会があったら、そのゲーム買ってみるね」
 その約束に、だったら貸すよ、と言いかけて口をつぐむ。
 なんだか突然に、馬鹿らしくなった。
 舞い上がっている自分が。まるで恋する乙女みたいでとてもじゃないけどあたしに似合わない。
 勝手に緩む頬。高鳴る心臓。自分じゃない何かに変わってしまうような怖さがあって、どうにかして抑え込む。
 別に彼と恋人になりたいとか、そう言うわけじゃない。ただ彼が良い人なのだ、とあたしは知っているというだけ。

 ……それに彼には、好きな人がいるみたいだし。

 眺めていたらそのくらいは分かった。彼は特に分かりやすかったし。
 だから彼との関係性はこのままで良い。
 そう、あたしはあたしに言い聞かせた。
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