8 / 42
〖序章〗
〈思い出④〉
しおりを挟む
美桜は誰にでも優しくて、男女問わずに人気があった。
中学に入る直前で成長期が来たらしく、今とほぼ変わらない背丈になっていた。飛び抜けている訳ではないけれど男子の中でも目立つぐらいには背が高く、当時は俺の方が小さくて並ぶのには少し抵抗があった。
そんな中学校では俺と美桜は同じクラスになる事は一度もなく。
その分距離が出来、俺は少しずつ彼女を遠くの存在に思うようになっていた。
すると無意識の内に姿を目で追っていて。
それが、俺にとっての気付きだった。
「なんか用?」
「いやっ、なんでもないけど?」
不意に目が合うと美桜は今までのように歩み寄ってくる。それに対して俺は変に一歩離れてしまい、また問い詰められる。
「なに? なんか最近、よそよそしい気がするけど?」
「別のクラスだし、そんなもんだって」
俺としても自然を装うとするのだけれど、じゃれ合うように肩で肩を押され、嫌でも性差を意識してしまう。
それでも美桜は以前と変わらず、俺の変な様子を可笑しいと笑うだけだった。
「というかさぁ、雅文もちゃんと友達作りなよ」
「いやっ、いないことはないからっ」
「えっ!? 誰かと話してるの見たことないんだけど?」
「き、雉尾くんとかとは最近話すし……」
「あー、あの水泳部の人ね。悪い人じゃなさそうだよね」
小学生時代の事もあり、美桜は頻繁に俺の友人関係を気にかけてくる。それが杞憂に終われば、飛び切りの笑顔を浮かべた。
「ま、友達が出来たんなら良かった」
思春期になってもその幼馴染はお節介を焼いてきて。
それが俺は恥ずかしかったのだけれど、やっぱり近くにいられるのは嬉しかった。
それぐらいに、好きだった。
「じゃあまたねっ」
「うん」
手を振って、教室に戻っていく想い人。
その背中が見えなくなるまで俺は見つめていて。
2つ隣のクラス。でもそれ以上の距離を俺は感じていた。
ハッキリとした物言いが出来て、人の考えを読むのが得意。彼女を嫌う人なんて聞いた事がなくて、どれだけ褒められても鼻にかけない。加えて笑顔が無邪気で。
俺とは違うところ。俺にはないもの。
それを美桜は、全て持っていた。
だから俺は憧れたのだ。
夜空に浮かぶ星のように。
手も伸ばす事が出来ずに、ただじっと眺めていた。
中学に入る直前で成長期が来たらしく、今とほぼ変わらない背丈になっていた。飛び抜けている訳ではないけれど男子の中でも目立つぐらいには背が高く、当時は俺の方が小さくて並ぶのには少し抵抗があった。
そんな中学校では俺と美桜は同じクラスになる事は一度もなく。
その分距離が出来、俺は少しずつ彼女を遠くの存在に思うようになっていた。
すると無意識の内に姿を目で追っていて。
それが、俺にとっての気付きだった。
「なんか用?」
「いやっ、なんでもないけど?」
不意に目が合うと美桜は今までのように歩み寄ってくる。それに対して俺は変に一歩離れてしまい、また問い詰められる。
「なに? なんか最近、よそよそしい気がするけど?」
「別のクラスだし、そんなもんだって」
俺としても自然を装うとするのだけれど、じゃれ合うように肩で肩を押され、嫌でも性差を意識してしまう。
それでも美桜は以前と変わらず、俺の変な様子を可笑しいと笑うだけだった。
「というかさぁ、雅文もちゃんと友達作りなよ」
「いやっ、いないことはないからっ」
「えっ!? 誰かと話してるの見たことないんだけど?」
「き、雉尾くんとかとは最近話すし……」
「あー、あの水泳部の人ね。悪い人じゃなさそうだよね」
小学生時代の事もあり、美桜は頻繁に俺の友人関係を気にかけてくる。それが杞憂に終われば、飛び切りの笑顔を浮かべた。
「ま、友達が出来たんなら良かった」
思春期になってもその幼馴染はお節介を焼いてきて。
それが俺は恥ずかしかったのだけれど、やっぱり近くにいられるのは嬉しかった。
それぐらいに、好きだった。
「じゃあまたねっ」
「うん」
手を振って、教室に戻っていく想い人。
その背中が見えなくなるまで俺は見つめていて。
2つ隣のクラス。でもそれ以上の距離を俺は感じていた。
ハッキリとした物言いが出来て、人の考えを読むのが得意。彼女を嫌う人なんて聞いた事がなくて、どれだけ褒められても鼻にかけない。加えて笑顔が無邪気で。
俺とは違うところ。俺にはないもの。
それを美桜は、全て持っていた。
だから俺は憧れたのだ。
夜空に浮かぶ星のように。
手も伸ばす事が出来ずに、ただじっと眺めていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる