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まだピチピチの24歳です❤ 異論は認めない。
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「起きろ! 起きてくれ莉深くん!! 君はこんなところで終わる女なんかじゃないだろう!? なあっ!!」
どうやら人質を取られて、紅蛾一樹も打つ手が無くなったらしい。「頼むから起きてくれ!」とか、「出てきたら何でもするから!」とか言ってワタシへの呼びかけを必死にしてくるが、いかんせん息のできないワタシの意識は次第に薄くなってくる。
ここはどこだっけ……?
ああ、そっか……、ワタシはこれから死ぬのか……。
そういう諦めの境地を自身の身体が理解した時、ワタシの頭の中には走馬燈のようにこれまでの人生が思い出される。それは、幼少の頃から今の仕事につくまでの一大ダイジェストだった。幼稚園の頃、大きくなったら簡単にお嫁さんになれるのだと思っていた自分。高校の頃、やっと告白のOKが出た初恋の先輩が事故死したと聞いた時の自分。その後の大学時も何人か付き合ってはみるものの、そのどれもがいずれかの不幸に見舞われるという惨状。おかげで呪われているという噂が立ってしまい、避けられてしまう自分。
結局、まともな恋人が出来ないまま卒業となり、就職活動をする事になった自分。だが、当時2067年の日本は、定年退職者の減ったせいで、老人がいつまでも職場に居座ってロクな新規雇用がほとんど無い社会だった。おかげで就職活動も失敗したワタシは父親に言われるがまま今の職業に就き、少子化推進局員としての仕事をやらされる事になる。そうして、そこでワタシが仕事の上で見せつけられたのが、摘発する対象である大量のリア充だった。恋愛格差をむざむざと見せつけられ、フラストレーションの溜まる毎日。仕事の執行にも次第に感情が交じり始め、『鬼の新妻莉深』と呼ばれだす始末だった。
そこまで回想が進むと、今度はワタシの脳裏に今まで摘発したカップル達の一人一人の顔が浮かんでくる。捕まった彼らは皆、例外なく記憶を消されて別れさせられるのだ。それを思うと、今更ながらワタシはなんて非道い事をしてきたんだろうかという自責の念がこみ上げてくる。今ここでワタシがこういう目に遭ってるのも、当然の報いなのかもしれない。
嫉妬ばかりしていた罰なのかな……。
本当は羨ましかっただけなのに……。
今までごめん、みんな……。本当にごめんなさい――。
もうあんな仕事なんて二度とやらないから……。
みんな――――。
そう言った時、見えてきたのは少子化推進局のみんなの顔だった。親友の沙優に部下たち、みんながそれぞれ楽しそうに談笑している。
しかし、そこには少しだけいつもと違う光景があった。みんなの隣にはそれぞれ見た事もない異性のペアがいて、親しげに話しているのである。明らかにそれらはデキているカップルのソレだった。メンバーのほとんどはまだ独身だと聞いていたのに、とんだ裏切りである。さらに衝撃的だったのは、紗優の隣にいる男性の正体だった。その男はどっからどう見ても紅蛾一樹の顔をしていたのである。それは荒唐無稽な悪夢だった。現実的に考えれば、二人の間に接点はほとんど無い筈だったのだが、こういう事を一度考えてしまうと、もうそのイメージは止まらない。二人はチュッチュをしてイチャつき始め、それを皮切りに他のカップルたちも全員、一斉にチュッチュを交わしだす。
そんな光景を見せつけられて、ついに耐え切れなくなったワタシは懐から銃を抜いて涙目で叫びだしてしまう。
「全員、そこに直れぇッ! みんなしょっ引いてやるぅ~ッ!!」
そう叫んだ時、ワタシは唐突に悪夢から目を覚ます。そこでは相変わらず、新妻大輔のスライムに閉じ込められている自分がいて、目の前では紅蛾一樹がワタシに向かって必死に呼びかけている。
だが、さっきと違うのは、ワタシの右手にはいつも使っている電磁銃が握られていたという点だった。こんなもの、下着姿のワタシのどこから取り出してきたのかという疑問が湧いたが、よくよく考えると肩に掛かった隊服のブレザーの中にあったのである。それは、紅蛾一樹がワタシを連れて庭へ脱出した時に掛けてくれたブレザーだった。仕事帰りそのままだったから当然、銃も装備されたままだった。紅蛾一樹がさっきから必死に呼び掛けていたのも、どうやらこれに気付かせる為だったらしい。
「……いいじゃない。やったろうじゃないの……」
確かにこいつならば、内部からが一番効く。それどころか、どこに撃とうが当て放題だ。不思議な自信の出て来たワタシは急に力が湧いてきて、雄叫びとともに、めいっぱい引き金を引きまくった。
「こちとら、まだピチピチの24歳なんだ! まだ恋の一つも出来ずに死ねるかよぉおおおおおぉおおおおおおおおおおッッッ――――――――――!!!!」
「ぐぁあああぁあああああああっ!!!?」
パラライザー麻酔弾がスライム内部でいくつも炸裂する。効果はてきめんだった。新妻大輔のスライム体は痙攣を起こして動けなくなり、その隙にワタシはスライムを掻き分けてなんとか這い出る。そうして、どうにか脱出したワタシはすぐに新妻大輔から退避して、紅蛾一樹へと合図を送った。
「紅蛾くん! 今よ!!」
「……それでこそ、俺の見込んだ女だ――――」
その瞬間、彼のレーザーブレードが今までで最高の輝きを見せる。それは、彼がこれまでに溜めに溜めていたエネルギーの最高出力だった。彼は迸る紅蓮の奔流を手にすると、新妻大輔に向けて思いっきり刃を振り降ろす。
「滅却――――――『焼灼(しょうしゃく)切除(エクシジョン)』!!!!」
紅蓮の輻射と熱線は、新妻大輔のスライム体をズタズタに引き裂き、焼き焦がした。
「ぎ、がぁああぁあああああああっうっっ!!!!」
新妻大輔のスライム体部分は全て焼き払われ、中心となっていた核の芯だけが残る。その芯のスライム表面も蒸発すると、そこには変身する前の新妻大輔の本体が現れた。
「ぶげらっ!!?」
全裸になった新妻大輔は落下して、無様に尻もちをつく。人型に戻りはしたものの、それは変身前の状態に戻っただけで、紅蛾一樹に切断された両腕はそのままだった。紅蛾一樹は、新妻大輔のキャンサーに関わる能力の全てだけを焼き尽くしたのである。とはいえ、彼の足とその股に生えているイチモツはまだ健在だったが……。
「あとの処遇は任せたよ。莉深くん……」
紅蛾一樹はレーザーブレードをオフにして格納すると、顎で新妻大輔の方を指し示す。それを見て全てを了解したワタシは新妻大輔の方へと黙って歩いてゆき、へたりこんで動けない様子の彼と向き合う。
「……お父さん……。あなたには、前から言いたい事がありました……」
ワタシの声のただならぬ口調に、新妻大輔は怯えて命乞いを始める。どうやら力を使い果たして動けないのは本当のようだった。
「ひ、ヒイッ! ま、まさかお前、実の父を……殺したりなんてしないよねぇっ……!?」
さっきは自分で、『孤児を買った』とか自白していたクセに、都合のいい時だけ父親ヅラである。いい加減、堪忍袋の緒が切れたワタシは、今までの恨みつらみや別れの意味を込めて、渾身の拳を振りかぶった。
「二度と、ワタシの服と一緒に――――――――――――――洗濯ものしないでッ!!!!」
「は!? はがぁああああっっ!!!?」
全体重を乗せた拳は新妻大輔の横っ面へと大炸裂する。歯は何本も折れて飛散し、彼の身体は数メートル先へと吹っ飛んで転げまわった。
「最近、加齢臭がキツいのよ――――――」
ようやく父親に、決別と遅めの巣立ちを告げられたワタシは、スッキリして毒が抜けたような面持ちで空を見上げる。
すでに夜は明け始めていて、地平線のビル群の向こうから朝日が顔を覗かせていた。それは、今までワタシが気付きもしなかった世界の美しさだった。虚空の蒼の上に差し込む陽光はまるで深海に届いた光のようである。それはきっと、これから旅立つワタシへの祝福のように思えるような光景だった――――――――。
どうやら人質を取られて、紅蛾一樹も打つ手が無くなったらしい。「頼むから起きてくれ!」とか、「出てきたら何でもするから!」とか言ってワタシへの呼びかけを必死にしてくるが、いかんせん息のできないワタシの意識は次第に薄くなってくる。
ここはどこだっけ……?
ああ、そっか……、ワタシはこれから死ぬのか……。
そういう諦めの境地を自身の身体が理解した時、ワタシの頭の中には走馬燈のようにこれまでの人生が思い出される。それは、幼少の頃から今の仕事につくまでの一大ダイジェストだった。幼稚園の頃、大きくなったら簡単にお嫁さんになれるのだと思っていた自分。高校の頃、やっと告白のOKが出た初恋の先輩が事故死したと聞いた時の自分。その後の大学時も何人か付き合ってはみるものの、そのどれもがいずれかの不幸に見舞われるという惨状。おかげで呪われているという噂が立ってしまい、避けられてしまう自分。
結局、まともな恋人が出来ないまま卒業となり、就職活動をする事になった自分。だが、当時2067年の日本は、定年退職者の減ったせいで、老人がいつまでも職場に居座ってロクな新規雇用がほとんど無い社会だった。おかげで就職活動も失敗したワタシは父親に言われるがまま今の職業に就き、少子化推進局員としての仕事をやらされる事になる。そうして、そこでワタシが仕事の上で見せつけられたのが、摘発する対象である大量のリア充だった。恋愛格差をむざむざと見せつけられ、フラストレーションの溜まる毎日。仕事の執行にも次第に感情が交じり始め、『鬼の新妻莉深』と呼ばれだす始末だった。
そこまで回想が進むと、今度はワタシの脳裏に今まで摘発したカップル達の一人一人の顔が浮かんでくる。捕まった彼らは皆、例外なく記憶を消されて別れさせられるのだ。それを思うと、今更ながらワタシはなんて非道い事をしてきたんだろうかという自責の念がこみ上げてくる。今ここでワタシがこういう目に遭ってるのも、当然の報いなのかもしれない。
嫉妬ばかりしていた罰なのかな……。
本当は羨ましかっただけなのに……。
今までごめん、みんな……。本当にごめんなさい――。
もうあんな仕事なんて二度とやらないから……。
みんな――――。
そう言った時、見えてきたのは少子化推進局のみんなの顔だった。親友の沙優に部下たち、みんながそれぞれ楽しそうに談笑している。
しかし、そこには少しだけいつもと違う光景があった。みんなの隣にはそれぞれ見た事もない異性のペアがいて、親しげに話しているのである。明らかにそれらはデキているカップルのソレだった。メンバーのほとんどはまだ独身だと聞いていたのに、とんだ裏切りである。さらに衝撃的だったのは、紗優の隣にいる男性の正体だった。その男はどっからどう見ても紅蛾一樹の顔をしていたのである。それは荒唐無稽な悪夢だった。現実的に考えれば、二人の間に接点はほとんど無い筈だったのだが、こういう事を一度考えてしまうと、もうそのイメージは止まらない。二人はチュッチュをしてイチャつき始め、それを皮切りに他のカップルたちも全員、一斉にチュッチュを交わしだす。
そんな光景を見せつけられて、ついに耐え切れなくなったワタシは懐から銃を抜いて涙目で叫びだしてしまう。
「全員、そこに直れぇッ! みんなしょっ引いてやるぅ~ッ!!」
そう叫んだ時、ワタシは唐突に悪夢から目を覚ます。そこでは相変わらず、新妻大輔のスライムに閉じ込められている自分がいて、目の前では紅蛾一樹がワタシに向かって必死に呼びかけている。
だが、さっきと違うのは、ワタシの右手にはいつも使っている電磁銃が握られていたという点だった。こんなもの、下着姿のワタシのどこから取り出してきたのかという疑問が湧いたが、よくよく考えると肩に掛かった隊服のブレザーの中にあったのである。それは、紅蛾一樹がワタシを連れて庭へ脱出した時に掛けてくれたブレザーだった。仕事帰りそのままだったから当然、銃も装備されたままだった。紅蛾一樹がさっきから必死に呼び掛けていたのも、どうやらこれに気付かせる為だったらしい。
「……いいじゃない。やったろうじゃないの……」
確かにこいつならば、内部からが一番効く。それどころか、どこに撃とうが当て放題だ。不思議な自信の出て来たワタシは急に力が湧いてきて、雄叫びとともに、めいっぱい引き金を引きまくった。
「こちとら、まだピチピチの24歳なんだ! まだ恋の一つも出来ずに死ねるかよぉおおおおおぉおおおおおおおおおおッッッ――――――――――!!!!」
「ぐぁあああぁあああああああっ!!!?」
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「紅蛾くん! 今よ!!」
「……それでこそ、俺の見込んだ女だ――――」
その瞬間、彼のレーザーブレードが今までで最高の輝きを見せる。それは、彼がこれまでに溜めに溜めていたエネルギーの最高出力だった。彼は迸る紅蓮の奔流を手にすると、新妻大輔に向けて思いっきり刃を振り降ろす。
「滅却――――――『焼灼(しょうしゃく)切除(エクシジョン)』!!!!」
紅蓮の輻射と熱線は、新妻大輔のスライム体をズタズタに引き裂き、焼き焦がした。
「ぎ、がぁああぁあああああああっうっっ!!!!」
新妻大輔のスライム体部分は全て焼き払われ、中心となっていた核の芯だけが残る。その芯のスライム表面も蒸発すると、そこには変身する前の新妻大輔の本体が現れた。
「ぶげらっ!!?」
全裸になった新妻大輔は落下して、無様に尻もちをつく。人型に戻りはしたものの、それは変身前の状態に戻っただけで、紅蛾一樹に切断された両腕はそのままだった。紅蛾一樹は、新妻大輔のキャンサーに関わる能力の全てだけを焼き尽くしたのである。とはいえ、彼の足とその股に生えているイチモツはまだ健在だったが……。
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紅蛾一樹はレーザーブレードをオフにして格納すると、顎で新妻大輔の方を指し示す。それを見て全てを了解したワタシは新妻大輔の方へと黙って歩いてゆき、へたりこんで動けない様子の彼と向き合う。
「……お父さん……。あなたには、前から言いたい事がありました……」
ワタシの声のただならぬ口調に、新妻大輔は怯えて命乞いを始める。どうやら力を使い果たして動けないのは本当のようだった。
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さっきは自分で、『孤児を買った』とか自白していたクセに、都合のいい時だけ父親ヅラである。いい加減、堪忍袋の緒が切れたワタシは、今までの恨みつらみや別れの意味を込めて、渾身の拳を振りかぶった。
「二度と、ワタシの服と一緒に――――――――――――――洗濯ものしないでッ!!!!」
「は!? はがぁああああっっ!!!?」
全体重を乗せた拳は新妻大輔の横っ面へと大炸裂する。歯は何本も折れて飛散し、彼の身体は数メートル先へと吹っ飛んで転げまわった。
「最近、加齢臭がキツいのよ――――――」
ようやく父親に、決別と遅めの巣立ちを告げられたワタシは、スッキリして毒が抜けたような面持ちで空を見上げる。
すでに夜は明け始めていて、地平線のビル群の向こうから朝日が顔を覗かせていた。それは、今までワタシが気付きもしなかった世界の美しさだった。虚空の蒼の上に差し込む陽光はまるで深海に届いた光のようである。それはきっと、これから旅立つワタシへの祝福のように思えるような光景だった――――――――。
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