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ぷりちーなバイタリティ?

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「どえらっせい!」

「うわあぁああああっ!?」

 菖蒲(あやめ)拓海(たくみ)が周囲のコンテナをまるで豆腐のように斬り刻んでゆく。斬られたコンテナは次々と地面へと崩れ落ちて、凄まじい金属音と砂煙を上げた。

「どういう事だタマ!? アイツまだ追って来てるじゃないか!?」

「スマンだみょん! ミーに転移魔法は一回の跳躍で、半径1キロ以内しか跳べないみょん! だから、さっきからすぐに変身しとくべきだと言ってたみょん!」

 崩れゆくコンテナの中を必死にかいくぐって、ボクはタマと小競り合いながら逃げてゆく。

「じゃあ、さっさとその転移とやらをもう一回使ってよ!」

「それも無理だみょん! ミーの精霊能力である転移魔法は一日一回しか使えないみょん!」

「使えないな!? やっぱりただのオタマジャクシじゃないかっ!」

「マスコットキャラに戦闘スキルを期待されても困るみょん! あとはやっぱり、魔法花婿(ウィザード)である憧太クンが、自分の力でなんとかするしかないみょん」

 そう言ってタマは、ボクの右手の握りこぶしをつついて指さす。嫌な予感がして、おそるおそる手を開いて見てみると、中にはさっきの金の玉があった。どうやらいつの間にかタマが、戦闘のどさくさに紛れてボクに握らせていたらしい。

「ああっ!? いつの間にか握ってしまっているっ!? しかもやっぱ、なんかヌメってるし!?」

 案の定、金の玉は白濁液でベトベトしていた。手に張り付いていてしまって最高に気持ち悪い。そいつに気を取られたせいでボクは、背後にまた敵の攻撃が迫って来ているのにも気付かなかった。

「ぐぁああああっ!?」

 敵の衝撃波に吹き飛ばされて、ボクはコンテナの壁面へと背中から激突してしまう。

「逃げても無駄だぜェ、新人。何処にいたって分かるのさァ。なんたって、俺氏の精霊能力には『追跡案内』(トレーサビリティ)があるんだからなァ―――――」

 痛みで悶えながらも菖蒲拓馬の方を仰ぎ見ると、こちらへゆっくりと歩いて来るのが見えた。よく見ると学校の時とは違って、菖蒲(あやめ)拓海(たくみ)の右眼にはSFっぽい片目グラスがかかっているのが見える。

「とっ、『追跡案内』(トレーサビリティ)だと!? あの一日二回だけ敵の居所が分かるという、あの『追跡案内』(トレーサビリティ)か!? まさか、そちらにはあの第六精霊『バイア』がついて……」

 タマが何やら横でうるさく解説してくれてるような気がするが、こっちは痛みでそれどころではない。

「男を捨てる覚悟は出来たかァ? その金の玉、俺氏が斬り落としてやる……」

 菖蒲(あやめ)拓海(たくみ)は余裕顔で近づいて来る。その逃げ場の無い様子を見て、ようやくボクは言葉通り覚悟を決める事にした。

「くっ、わかったよタマ……。ボクだってこんな所で男を失いたくはない。ボクはどうすればいい? どうすれば勝てる?」

「簡単だみょん。金の玉(ゴールデンボール)を持って、こう唱えればいい―――――『精・命・力・解放』(プリティ・バイタリティー・フルオープン)と! これで晴れて君も魔法花婿(ウィザード)になれるみょん♪」

「その言葉マジかっ!!!!」

 あまりのこっ恥ずかしいワードの数々に、冗談じゃないとは思ったが、もはやとっくにに選択の余地は無いようだった。既に菖蒲(あやめ)拓海(たくみ)はこちらへ走り出してきていて、もう時間は無い。

「ゴチャゴチャと相談してんじゃねーよ新人! 殺すゥ!」

「くっ……それでもやるしかないっ……! やらなきゃ、やられるっ! ――――――『精・命・力・解放』(プリティ・バイタリティー・フルオープン)!!!!!」

 その瞬間、強烈な光がボクの身体を包み込む。それは、まるで体感した事の無い力の奔流だった。
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