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第2話
まさかの同居生活・1
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ティータイムを提案した老執事セバスティアンの機転はさすがだった。
一杯の紅茶とケーキのおかげで無自覚同士が延々とイチャイチャする姿を見せつけられて、もどかしさとイライラが止まらないという地獄絵図からセバスティアンも解放されたし、その後、事業についても前向きな意見が交わされた。
とくに期日について具体的な話が出たのは良い事だった。
期日。それは、ドミニクが王国ジーン・デ・コスタリオの防衛主任を任されている任期にもつながる話だった。現在、パトリシアとドミニクが話をしている屋敷は別宅である。ドミニクは王国防衛の任務を全うするために故郷のサルヴァドール伯爵領から王都に参勤しているだけでしかないのだ。
「僕はこの王都防衛に後五年の任期があり、その後に一旦、地元に帰り領地の政務を監督しなくてはいけない。
つまり、君が王都で事業を展開するにあたって積極的に僕の影響を与えられるのはあと5年と言ったところだ思ってほしい。」
「なるほど。
つまり、5年以内に成果を出せる事業計画を立てるべきだとドミニクは考えているのね?」
ドミニクはパトリシアが話の要点をちゃんと押さえているところに感心して、思わず彼女を指差しながら「そう!」と、答えてしまう。
「パトリシア。その為には速やかな行動が大切だ。まずは水道工事の専門業者に話を聞きに行こう。
ちょうど僕は、明日は仕事がオフだ。一緒に話を聞きに行こう。いいかい?」
ドミニクの言葉にセバスティアンはギョッとした。思わず「・・・ドミニク様っ、明日は・・・・」と進言しかけたがドミニクの刺すような視線で制止されてしまう。そしてその隙にパトリシアが満面の笑顔で「はいっ!!」と返事をするものだから、この話はもうこれで終り。
(・・・・・ああ、パトリシア様のこの笑顔が出たらもうおしまいだ。これが出たらドミニク様は逆らえない・・・・
明日はサンチェス伯との合同練兵についての打ち合わせがあるというのに・・・・・。)
セバスティアンが頭を抱える気持ちに見向きもせずにドミニクはパトリシアと嬉しそうに話を進めていく。その二人の姿を横目に見たセバスティアンは、それ以上何も言えずにため息をつくだけだった。
(なんと痛々しい。お二人とも結婚相手に困らぬ家柄と実力に加えて、絶世の美貌の持ち主。
お互いの距離感がおかしいほど近すぎて訳が分からないことになっているだけで理想の恋人同士だってことに早く気が付いて・・・・・さっさと世継ぎ作って私を安心させてくれっ!! この若造どもっ!!)
心の中で悪態をつきながらもセバスティアンは優れた執事である。心の中のイライラはおくびにも見せずに再び満面の笑みを浮かべて二人の仲が少しでも進展するように後押しする。・・・・もしかしたら、この男の甘やかしが二人の仲をより近すぎる存在にしているのかもしれないが・・・・
「そのお話でしたらドミニク様。長くなりそうなのでパトリシア様をお送りしながらお話なさってはいかがですか?
レディを夜に帰らせるのはよくありませんので。」
セバスティアンの提案を聞いたドミニクは輝きそうなほど美しい笑顔になって返事をする。
「ああっ・・ああっ! そうだな! そうだ!!
さすがセバスティアンだっ!!
すぐに馬車の用意をしてくれっ!! ああ、もちろん、運転は私がするっ!! 護衛も必要ないからなっ!! 私がパトリシアを見送ろうっ!!」
「・・・・・もちろん承知の上でございます。それに護衛と言ってもドミニク様にとって足手まといになりましょう。」
パトリシアと二人きりになりたいドミニクの意を汲んで、そしてさりげなくドミニクの武勇を讃えつつ、セバスティアンはドミニクの命令に従った。(もちろん、当然。遠巻きに護衛をつけるのだが・・・)
そうしてセバスティアンの的確な指示のもと、邸宅の使用人が上に下への大騒ぎの末にすぐに豪華な馬車が用意された。
馬4頭が引く戦車の如き馬車の乗客部はまるで新婚夫婦が乗るようなお花畑な装飾が施されている。
乗客部の外部は真っ白な下地に赤い花柄。内部の装飾まで花柄。上等のクッションに窓には花柄のレース。これらの全てが実はパトリシアのおねだりによって作られたものだ。
「私、可愛い馬車に乗りたいのっ!!」と、14歳のときに駄々をこねたパトリシアのためにドミニクが用意させたものだった。故にこの馬車はパトリシアのお気に入りで、実質的にドミニク家所蔵の品でありながらパトリシアの私物であった。
それ故にその馬車を見たパトリシアは感動の声を上げる。
「わあっ!! この馬車を用意してくれたのっ!?
ありがとうセバスティアンっ!!
ねぇっ!! ドミニク!!
馬車の運転は私にさせてっ!! 久しぶりに馬車が引きたいわっ!!」
パトリシアはこの世界の常識では考えられないことを口にする。女性が馬車を引くというのだ。
しかし、幼いころからパトリシアを甘やかしてきたドミニクにとっては日常茶飯事の事。セバスティアンには自分が運転すると言っておきながら「ああ。勿論、構わないよ。」と、快諾しながら助手席に乗り込むのだった。
こうして仲睦まじく二人は豪華な馬車に乗って街に繰り出すのだった。
幼少期から馬に慣れ親しんでいるパトリシアの馬を操る技術は男性顔負けである。さらに女性が放つ優しい空気感や女性特有の優しい力加減から生まれる安心感が馬にも伝わるのか、馬は熟練の御者が操っているかのように穏やかに歩み、馬車には大きな揺れ一つ起きない。これはかなり驚異的な技術であるが、肝心の貴婦人が乗る乗客部には人っ子一人おらず、何故か貴人が二人とも御者のいるべき場所に座っているのだった。
その光景はあまりにも異質で道行く人を振り返らせるのであった。
だが、当のパトリシアは街の人の視線など気にもかからぬ様子で「まぁ、良い子たち。とても優しく歩いてくれるのね!」と、馬に感動ばかりしている始末であった。
ドミニクの方も無邪気に馬を操るパトリシアが可愛くて仕方ないらしく、まぶしいものを見るように目を細めながら微笑んで見守るだけだった。
そうして暫くすると2人はパトリシアが利用しているホテルに到着するのだった。
だが、そこには信じられない光景があった。
あろうことか、貴人が利用するようなホテルの玄関先の往来にいくつもの荷物が積み上げられていたのだった。その美的感覚を損なう行為にドミニクは顔をしかめた。
「むぅ。このような無遠慮な行い。とても権威あるホテルのすることではないな。」と思わず呟くほど非常識な光景だった。
しかも、実はその異変は2人の想像以上の内容だったのだ。
先にその異常に気が付いたのはパトリシアだった。馬車を降りて何気なく道路に積み上げられた荷物を見て、ハッとして叫んだ。
「まぁっ!? なんてことっ!!
これは私の生活用品ですわっ!!」
「なんだとっ?」
ドミニクもパトリシアの言葉に驚きの声を上げる。そして、慌ててその荷物をよく見れば、その荷物を入れた箱には確かにパトリシアの実家・クルス家の家紋が入っているのだった。
家紋を見てそれが自分の荷物だと知ったパトリシアは怒ってホテルの受付に怒鳴り込んだ。
「どうしてっ!?
なんでこんな事をするのですっ!? 説明しなさい!!」
貴族のパトリシアにそう言われた受付嬢は平民である。思わず震え上がって涙目になりながら「あの、それは・・・」と、狼狽えるばかりだ。
これでは埓があかない。パトリシアはウンザリしてため息をついた。
だが当の本人よりもドミニクがこの展開にイラつきを隠せずにいた。
(よくも僕のパトリシアにこんな真似をっ!!)と考えただけで肌がひきつり髪の毛が逆立つ。
そして、その威圧感を隠すこともなく受付で大きな声を上げた。
「私は、この国の筆頭伯爵サルヴァドールだ!!
外に投げ出された荷物について事情を聞きたい!
責任者は速やかに出てきて説明責任を果たせ!!」
その一言でホテル従業員全員に緊張が走った。震え上がらんばかりの恐怖を覚えたのだ。
当然だろう。パトリシアと共にホテルに怒鳴り込んで来た男はこの国の貴族階級を束ねる筆頭伯爵。平民が直接言葉を交わす機会など一生ないであろう雲の上の存在だ。
しかもドミニクは、体格的に一般男性より一回り以上大きく威圧感がある。それに整った顔がむしろ相乗効果として加わってさらなる恐怖感を与えた。
整髪油を使って七三にかき上げられた美しい漆黒の髪。男性らしい力強い眉の下にある灰色の瞳は彫りの深い顔立ちゆえに陰りを帯びているというのに刺すような光を放っていた。彼を見る者は洞穴に潜む大型肉食獣に狙われるような危機感を覚えるはずだ。
しかし、それでいて暗い青色に統一された衣服は上等の布地特有の反射を起こしてキラキラと輝きを放ち、この肉食獣に気品を与えていた。
美と気品と野生味。今の彼の姿を例えるならば百獣の王である。
しかし、それ故に彼の一喝はその場にいた全ての者を恐怖させ萎縮させてしまう。彼の殺気に受付嬢はカチカチと歯を鳴らすほど震え上がった。
その受付嬢の姿を見てさすがにパトリシアも気の毒になって受付嬢の体を優しく抱き寄せてやると、ドミニクに向かって「そんなに脅したら可哀想でしょ!」と苦言を呈するのだった。
筆頭伯爵を一喝するその勇気とその優しさを見て恐怖から解放されたように支配人が慌てて部屋の奥から駆け出してきた。
そしてパトリシアとドミニクの前に立ち、直角90度に腰を曲げて申し開きをした。
「し、しばらくぅ~っ・・・・。わ、私が当ホテルの支配人ブルーノ・ホセです。
伯爵様のお怒りはごもっともでございます!!
ですが、どうぞ私どもの事情をお聞きくださいませ。これも全ては姫様のご実家。クルス男爵家からのご命令。
私達、下々の者に逆らうことなどできるはずもなくかような仕儀に至ったのであります。
どうか、平に。平にご容赦願います!!」
支配人の言葉に二人はギョッとして声を上げる。
「お父様がっ!?」「おじさんがっ!?」
しかし、すぐに心当たりに行き当たりお互いの顔を見合わせた。そう、パトリシアの勘当だ。支配人は二人が心当たりがある様子にホッとして事情をさらに詳しく説明する。
「実は本日、クルス男爵様のお使いの者が来られました。
その者が我らに申し付けたのです。男爵様のお言葉です。
『パトリシア・ベン・クルスは本日をもって当家を勘当といたす。
パトリシアは今後、当家とは一切かかわりがなく、貴族でもない。
よって、当ホテルへの宿泊費は本日以降支払われない。
早急にパトリシアの荷物を往来に放り出し、決して慈悲を与えてはならん。
これに逆らうわ当クルス家への反意とみなし、容赦なき処罰があるものと心得よっ!!』
当ホテルはクルス男爵家には代々お世話になっております。その御当主にこのように仰られては、逆らうわけにもまいりませぬ。
どうか、姫様。不義理をお許しくださいませ。私も従業員の生活を支える立場。姫様に肩入れして御本家から睨まれれば、従業員まで犠牲になります。
お許しくださいませ。
お許しくださいませ。
・・・・・お許し・・・・下さいませっ!!」
支配人は声を絞り出すようにしてパトリシアに謝罪した。その姿にパトリシアは気の毒に思い、彼の肩に手を置いて「わかりました。迷惑を掛けましたね。」と慰みの言葉を言うのだった。
しかし・・・・・これからどうしたらいいのかパトリシアにはわからなかった。
そして、支配人の肩に手を置いたまま困り果てて、ボーっと、一点を見つめて固まってしまった。父親の怒りが本気の物と知ってショックを受けて軽い思考停止を起こしているのだ。
(お父様が・・・・・・・・お父様が私にここまでの仕打ちを本当にされるなんて・・・
私、本当に・・・・・捨てられてしまったのかしら・・・・・)
そう思うと悲しくなって大きな緑の瞳から大粒の涙をポロポロとこぼれ落ちた。
「ああっ・・・!!」
堪えられなくなって声を上げて座り込んでしまいそうになる。足腰から力が抜け落ち、膝がガタガタと震え、もはやこれ以上、一人で立つことなどパトリシアには不可能だったのだ。
「パトリシアっ!!」
沈みゆくパトリシアを見るに見かねてドミニクは駆け寄り、その人一倍太い両腕で彼女の体を抱きかかえあげた。
「・・・・ドミニクっ!!」
抱きかかえられたパトリシアは感極まって両手でドミニクの頭に抱きつくと、そのままシクシクと泣き出した。ドミニクに出来ることは、そんなパトリシアに対して「大丈夫。僕がいる。君には僕が付いているよ。」と励ましてあげるだけだった。
この国の貴族のトップ。筆頭伯爵が一介の男爵家の令嬢をお姫様抱っこして、甲斐甲斐しく慰めている・・・・・・。
この愛し合う二人の美しい光景を見て、感動の涙をこぼす女性たちが出始めた。
ドミニクはそんな者たちの変化に気が付くと、気まずそうに咳払い一つしてから支配人に命令する。
「支配人・・・・ホセとか言ったな? 話は相分かった。
私は今からパトリシアの転居先を彼女と共に探す。半日以内だ。その半日以内の間、すまないがパトリシアの荷物をホテル内に入れておいてくれ。
それから荷物の移動をする業者を呼んでおいてくれ。
私の名の下に依頼すればそちらにも迷惑が出まい。いいな?」
「は、はははひっ!! それは・・・・もちろん、そのようにいたします!!」
支配人は慌てて反射的に返事をするものの、そのあとに大きな疑問について知りたく、つい尋ねたしまった。
「それで・・・・その伯爵様。
姫様とは・・・・・その・・・・どのような御関係で?」
ホセは尋ねてから(しまった!!)と思った。貴人の女性関係を尋ねるなど出過ぎた質問をしてしまったと思ったのだ。しかし、それも致し方ない事。この場にいるもの全てがドミニクとパトリシアの関係を羨ましく思ってしまったからだ。
だがっ!! しかしっ!!
ドミニクの口から発せられた言葉は「ただの腐れ縁の友達だ。」だった・・・・。
その言葉を最後にメソメソ泣いているパトリシアを愛おし気にお姫様抱っこしたままの姿でホテルに背を向けてドミニクは去っていった。二人の姿が見えなくなるまでホテル内従業員は誰一人として動き出せなかった。思考が停止してしまっていたのだ。
そして、やっとホテル内の誰かが我に返って
「はぁああああああ~~~~っ!?」と、絶叫するのだった。
ホテルを出てきたドミニクは他人から見られないように馬車の乗客部にパトリシアと共に乗り込むと彼女が泣き止むまでその背中をさすってやった。そうして、ようやく彼女が落ち着きを取り戻したころ「大丈夫かい?」と優しく声をかけた。
パトリシアもドミニクの優しさのおかげで次第に冷静さを取り戻していったので、どうにか泣き止み、自分の気持ちを話せるようになった。
「・・・・ドミニク。私、今気が付きましたの。
今まで自分の力で生きていくと言ってはみたものの、心のどこかでお父様が私を本気で見捨てるはずがないとタカをくくっていた・・と。
結局、私は甘えていたのですね。私・・・・自立した女性になるなんて無理だったのかもしれません。」
パトリシアはすっかり傷つき、弱音を吐いた。無理もない。これまで箱入り娘ならぬ箱から飛び出す系お嬢様であったにもかかわらず、これまで両親は彼女を見放すことなく大きな愛で包み込んでくれていた。パトリシアはそういう環境で育てられた「お姫様」だったのだ。だからパトリシアは自分が甘えている部分の大きさに気が付くことなく成長してしまっていた。両親の愛が本当に尽きてしまうことなどないと思っていた。
ところが、今、ここにきて現実を思い知らされる。心のどこかで甘えていた自分に気が付き、そして自分の弱さに気が付いてしまったのだ。
これは大きな挫折である。パトリシアの心は今、ポッキリと折れかけていた。
だが、それを許さぬ者がいた。ドミニクである。
「・・・・・自分には無理だった?
無理だったって、どういう意味だい?
それは・・・実家に戻っておじさんの決めた僕の知らない誰かと結婚しても良いって意味かい?」
ドミニクは思わずパトリシアの顔を覗き込むようにして尋ねてしまう。その鬼気迫った眼差しにパトリシアは驚き、そして自分の心が折れていたことにハッと気が付き、すぐに返答する。
「良いわけないじゃないっ!! いやよっ!! そんなのっ!!
どこの誰とも知らない人と結婚するなんて絶対に嫌っ!!」
力強く反発したパトリシアにドミニクは被せるように言葉を発する。
「だったら・・・・だったら、諦めるなよっ!! 逃げ出すなよっ!
僕は嫌だっ!! 僕のパトリシアを誰にも渡したくないっ!!
だから、いいかい? おじさんが力を貸さないなら僕が君を守る。君を支えるっ!!
何年、何十年と君のそばにいて君を見ているっ!!
だから君も事業を諦めるなっ!! 」
「本当っ!? ドミニクっ!!」
「本当だっ!! 君を誰にも渡さないっ!!」
屋敷の時と同じようにドミニクの力強い励ましの言葉を再び聞いたパトリシアは心を決める。
「わかったわ。ドミニク・・・・。
私には貴方がいてくれるっ!! だから私はもう、迷わないわっ!
必ず事業を成功させて、誰とも結婚しない。あなたのそばにいますっ!!」
その言葉にドミニクは感極まって思わず力強くパトリシアを抱きしめてしまう。
「本当だよっ!? 絶対に誰にも渡さないっ!!
だから僕の可愛いパトリシアよっ!! そばにいてくれっ!!
僕を一人にしないでくれっ!!」
パトリシアを抱きしめたドミニクは肩を震わせて言った。きっと怖かったのだろう。パトリシアが諦めた瞬間、彼女が誰かの物になってしまうかもしれないと想像して・・・・怖かったのだろう。
そんなドミニクの心境をパトリシアはどこまで察しているのかはわからないが、それでもパトリシアはドミニクの頬に優しいキスをして誓うのだった。
「もう、人一倍大きな体のくせに甘えん坊さんなんだから・・・。
どこにもいかないし、誰のものにもなりません。
私はずっとあなたのそばにいます。」
「・・・・ああっ!! パトリシアっ!!」
それから二人は馬車の乗客部の中でしばらく抱き締めあったままお互いの気持ちを確かめ合うのだった。
・・・・・・何かが間違っている。
明らかに間違った方向に進展している。
だがっ!! しかしっ!! 二人はやはり気が付かないのであったっ!!
これが本来ならば、愛の告白であることをっ!!!
一杯の紅茶とケーキのおかげで無自覚同士が延々とイチャイチャする姿を見せつけられて、もどかしさとイライラが止まらないという地獄絵図からセバスティアンも解放されたし、その後、事業についても前向きな意見が交わされた。
とくに期日について具体的な話が出たのは良い事だった。
期日。それは、ドミニクが王国ジーン・デ・コスタリオの防衛主任を任されている任期にもつながる話だった。現在、パトリシアとドミニクが話をしている屋敷は別宅である。ドミニクは王国防衛の任務を全うするために故郷のサルヴァドール伯爵領から王都に参勤しているだけでしかないのだ。
「僕はこの王都防衛に後五年の任期があり、その後に一旦、地元に帰り領地の政務を監督しなくてはいけない。
つまり、君が王都で事業を展開するにあたって積極的に僕の影響を与えられるのはあと5年と言ったところだ思ってほしい。」
「なるほど。
つまり、5年以内に成果を出せる事業計画を立てるべきだとドミニクは考えているのね?」
ドミニクはパトリシアが話の要点をちゃんと押さえているところに感心して、思わず彼女を指差しながら「そう!」と、答えてしまう。
「パトリシア。その為には速やかな行動が大切だ。まずは水道工事の専門業者に話を聞きに行こう。
ちょうど僕は、明日は仕事がオフだ。一緒に話を聞きに行こう。いいかい?」
ドミニクの言葉にセバスティアンはギョッとした。思わず「・・・ドミニク様っ、明日は・・・・」と進言しかけたがドミニクの刺すような視線で制止されてしまう。そしてその隙にパトリシアが満面の笑顔で「はいっ!!」と返事をするものだから、この話はもうこれで終り。
(・・・・・ああ、パトリシア様のこの笑顔が出たらもうおしまいだ。これが出たらドミニク様は逆らえない・・・・
明日はサンチェス伯との合同練兵についての打ち合わせがあるというのに・・・・・。)
セバスティアンが頭を抱える気持ちに見向きもせずにドミニクはパトリシアと嬉しそうに話を進めていく。その二人の姿を横目に見たセバスティアンは、それ以上何も言えずにため息をつくだけだった。
(なんと痛々しい。お二人とも結婚相手に困らぬ家柄と実力に加えて、絶世の美貌の持ち主。
お互いの距離感がおかしいほど近すぎて訳が分からないことになっているだけで理想の恋人同士だってことに早く気が付いて・・・・・さっさと世継ぎ作って私を安心させてくれっ!! この若造どもっ!!)
心の中で悪態をつきながらもセバスティアンは優れた執事である。心の中のイライラはおくびにも見せずに再び満面の笑みを浮かべて二人の仲が少しでも進展するように後押しする。・・・・もしかしたら、この男の甘やかしが二人の仲をより近すぎる存在にしているのかもしれないが・・・・
「そのお話でしたらドミニク様。長くなりそうなのでパトリシア様をお送りしながらお話なさってはいかがですか?
レディを夜に帰らせるのはよくありませんので。」
セバスティアンの提案を聞いたドミニクは輝きそうなほど美しい笑顔になって返事をする。
「ああっ・・ああっ! そうだな! そうだ!!
さすがセバスティアンだっ!!
すぐに馬車の用意をしてくれっ!! ああ、もちろん、運転は私がするっ!! 護衛も必要ないからなっ!! 私がパトリシアを見送ろうっ!!」
「・・・・・もちろん承知の上でございます。それに護衛と言ってもドミニク様にとって足手まといになりましょう。」
パトリシアと二人きりになりたいドミニクの意を汲んで、そしてさりげなくドミニクの武勇を讃えつつ、セバスティアンはドミニクの命令に従った。(もちろん、当然。遠巻きに護衛をつけるのだが・・・)
そうしてセバスティアンの的確な指示のもと、邸宅の使用人が上に下への大騒ぎの末にすぐに豪華な馬車が用意された。
馬4頭が引く戦車の如き馬車の乗客部はまるで新婚夫婦が乗るようなお花畑な装飾が施されている。
乗客部の外部は真っ白な下地に赤い花柄。内部の装飾まで花柄。上等のクッションに窓には花柄のレース。これらの全てが実はパトリシアのおねだりによって作られたものだ。
「私、可愛い馬車に乗りたいのっ!!」と、14歳のときに駄々をこねたパトリシアのためにドミニクが用意させたものだった。故にこの馬車はパトリシアのお気に入りで、実質的にドミニク家所蔵の品でありながらパトリシアの私物であった。
それ故にその馬車を見たパトリシアは感動の声を上げる。
「わあっ!! この馬車を用意してくれたのっ!?
ありがとうセバスティアンっ!!
ねぇっ!! ドミニク!!
馬車の運転は私にさせてっ!! 久しぶりに馬車が引きたいわっ!!」
パトリシアはこの世界の常識では考えられないことを口にする。女性が馬車を引くというのだ。
しかし、幼いころからパトリシアを甘やかしてきたドミニクにとっては日常茶飯事の事。セバスティアンには自分が運転すると言っておきながら「ああ。勿論、構わないよ。」と、快諾しながら助手席に乗り込むのだった。
こうして仲睦まじく二人は豪華な馬車に乗って街に繰り出すのだった。
幼少期から馬に慣れ親しんでいるパトリシアの馬を操る技術は男性顔負けである。さらに女性が放つ優しい空気感や女性特有の優しい力加減から生まれる安心感が馬にも伝わるのか、馬は熟練の御者が操っているかのように穏やかに歩み、馬車には大きな揺れ一つ起きない。これはかなり驚異的な技術であるが、肝心の貴婦人が乗る乗客部には人っ子一人おらず、何故か貴人が二人とも御者のいるべき場所に座っているのだった。
その光景はあまりにも異質で道行く人を振り返らせるのであった。
だが、当のパトリシアは街の人の視線など気にもかからぬ様子で「まぁ、良い子たち。とても優しく歩いてくれるのね!」と、馬に感動ばかりしている始末であった。
ドミニクの方も無邪気に馬を操るパトリシアが可愛くて仕方ないらしく、まぶしいものを見るように目を細めながら微笑んで見守るだけだった。
そうして暫くすると2人はパトリシアが利用しているホテルに到着するのだった。
だが、そこには信じられない光景があった。
あろうことか、貴人が利用するようなホテルの玄関先の往来にいくつもの荷物が積み上げられていたのだった。その美的感覚を損なう行為にドミニクは顔をしかめた。
「むぅ。このような無遠慮な行い。とても権威あるホテルのすることではないな。」と思わず呟くほど非常識な光景だった。
しかも、実はその異変は2人の想像以上の内容だったのだ。
先にその異常に気が付いたのはパトリシアだった。馬車を降りて何気なく道路に積み上げられた荷物を見て、ハッとして叫んだ。
「まぁっ!? なんてことっ!!
これは私の生活用品ですわっ!!」
「なんだとっ?」
ドミニクもパトリシアの言葉に驚きの声を上げる。そして、慌ててその荷物をよく見れば、その荷物を入れた箱には確かにパトリシアの実家・クルス家の家紋が入っているのだった。
家紋を見てそれが自分の荷物だと知ったパトリシアは怒ってホテルの受付に怒鳴り込んだ。
「どうしてっ!?
なんでこんな事をするのですっ!? 説明しなさい!!」
貴族のパトリシアにそう言われた受付嬢は平民である。思わず震え上がって涙目になりながら「あの、それは・・・」と、狼狽えるばかりだ。
これでは埓があかない。パトリシアはウンザリしてため息をついた。
だが当の本人よりもドミニクがこの展開にイラつきを隠せずにいた。
(よくも僕のパトリシアにこんな真似をっ!!)と考えただけで肌がひきつり髪の毛が逆立つ。
そして、その威圧感を隠すこともなく受付で大きな声を上げた。
「私は、この国の筆頭伯爵サルヴァドールだ!!
外に投げ出された荷物について事情を聞きたい!
責任者は速やかに出てきて説明責任を果たせ!!」
その一言でホテル従業員全員に緊張が走った。震え上がらんばかりの恐怖を覚えたのだ。
当然だろう。パトリシアと共にホテルに怒鳴り込んで来た男はこの国の貴族階級を束ねる筆頭伯爵。平民が直接言葉を交わす機会など一生ないであろう雲の上の存在だ。
しかもドミニクは、体格的に一般男性より一回り以上大きく威圧感がある。それに整った顔がむしろ相乗効果として加わってさらなる恐怖感を与えた。
整髪油を使って七三にかき上げられた美しい漆黒の髪。男性らしい力強い眉の下にある灰色の瞳は彫りの深い顔立ちゆえに陰りを帯びているというのに刺すような光を放っていた。彼を見る者は洞穴に潜む大型肉食獣に狙われるような危機感を覚えるはずだ。
しかし、それでいて暗い青色に統一された衣服は上等の布地特有の反射を起こしてキラキラと輝きを放ち、この肉食獣に気品を与えていた。
美と気品と野生味。今の彼の姿を例えるならば百獣の王である。
しかし、それ故に彼の一喝はその場にいた全ての者を恐怖させ萎縮させてしまう。彼の殺気に受付嬢はカチカチと歯を鳴らすほど震え上がった。
その受付嬢の姿を見てさすがにパトリシアも気の毒になって受付嬢の体を優しく抱き寄せてやると、ドミニクに向かって「そんなに脅したら可哀想でしょ!」と苦言を呈するのだった。
筆頭伯爵を一喝するその勇気とその優しさを見て恐怖から解放されたように支配人が慌てて部屋の奥から駆け出してきた。
そしてパトリシアとドミニクの前に立ち、直角90度に腰を曲げて申し開きをした。
「し、しばらくぅ~っ・・・・。わ、私が当ホテルの支配人ブルーノ・ホセです。
伯爵様のお怒りはごもっともでございます!!
ですが、どうぞ私どもの事情をお聞きくださいませ。これも全ては姫様のご実家。クルス男爵家からのご命令。
私達、下々の者に逆らうことなどできるはずもなくかような仕儀に至ったのであります。
どうか、平に。平にご容赦願います!!」
支配人の言葉に二人はギョッとして声を上げる。
「お父様がっ!?」「おじさんがっ!?」
しかし、すぐに心当たりに行き当たりお互いの顔を見合わせた。そう、パトリシアの勘当だ。支配人は二人が心当たりがある様子にホッとして事情をさらに詳しく説明する。
「実は本日、クルス男爵様のお使いの者が来られました。
その者が我らに申し付けたのです。男爵様のお言葉です。
『パトリシア・ベン・クルスは本日をもって当家を勘当といたす。
パトリシアは今後、当家とは一切かかわりがなく、貴族でもない。
よって、当ホテルへの宿泊費は本日以降支払われない。
早急にパトリシアの荷物を往来に放り出し、決して慈悲を与えてはならん。
これに逆らうわ当クルス家への反意とみなし、容赦なき処罰があるものと心得よっ!!』
当ホテルはクルス男爵家には代々お世話になっております。その御当主にこのように仰られては、逆らうわけにもまいりませぬ。
どうか、姫様。不義理をお許しくださいませ。私も従業員の生活を支える立場。姫様に肩入れして御本家から睨まれれば、従業員まで犠牲になります。
お許しくださいませ。
お許しくださいませ。
・・・・・お許し・・・・下さいませっ!!」
支配人は声を絞り出すようにしてパトリシアに謝罪した。その姿にパトリシアは気の毒に思い、彼の肩に手を置いて「わかりました。迷惑を掛けましたね。」と慰みの言葉を言うのだった。
しかし・・・・・これからどうしたらいいのかパトリシアにはわからなかった。
そして、支配人の肩に手を置いたまま困り果てて、ボーっと、一点を見つめて固まってしまった。父親の怒りが本気の物と知ってショックを受けて軽い思考停止を起こしているのだ。
(お父様が・・・・・・・・お父様が私にここまでの仕打ちを本当にされるなんて・・・
私、本当に・・・・・捨てられてしまったのかしら・・・・・)
そう思うと悲しくなって大きな緑の瞳から大粒の涙をポロポロとこぼれ落ちた。
「ああっ・・・!!」
堪えられなくなって声を上げて座り込んでしまいそうになる。足腰から力が抜け落ち、膝がガタガタと震え、もはやこれ以上、一人で立つことなどパトリシアには不可能だったのだ。
「パトリシアっ!!」
沈みゆくパトリシアを見るに見かねてドミニクは駆け寄り、その人一倍太い両腕で彼女の体を抱きかかえあげた。
「・・・・ドミニクっ!!」
抱きかかえられたパトリシアは感極まって両手でドミニクの頭に抱きつくと、そのままシクシクと泣き出した。ドミニクに出来ることは、そんなパトリシアに対して「大丈夫。僕がいる。君には僕が付いているよ。」と励ましてあげるだけだった。
この国の貴族のトップ。筆頭伯爵が一介の男爵家の令嬢をお姫様抱っこして、甲斐甲斐しく慰めている・・・・・・。
この愛し合う二人の美しい光景を見て、感動の涙をこぼす女性たちが出始めた。
ドミニクはそんな者たちの変化に気が付くと、気まずそうに咳払い一つしてから支配人に命令する。
「支配人・・・・ホセとか言ったな? 話は相分かった。
私は今からパトリシアの転居先を彼女と共に探す。半日以内だ。その半日以内の間、すまないがパトリシアの荷物をホテル内に入れておいてくれ。
それから荷物の移動をする業者を呼んでおいてくれ。
私の名の下に依頼すればそちらにも迷惑が出まい。いいな?」
「は、はははひっ!! それは・・・・もちろん、そのようにいたします!!」
支配人は慌てて反射的に返事をするものの、そのあとに大きな疑問について知りたく、つい尋ねたしまった。
「それで・・・・その伯爵様。
姫様とは・・・・・その・・・・どのような御関係で?」
ホセは尋ねてから(しまった!!)と思った。貴人の女性関係を尋ねるなど出過ぎた質問をしてしまったと思ったのだ。しかし、それも致し方ない事。この場にいるもの全てがドミニクとパトリシアの関係を羨ましく思ってしまったからだ。
だがっ!! しかしっ!!
ドミニクの口から発せられた言葉は「ただの腐れ縁の友達だ。」だった・・・・。
その言葉を最後にメソメソ泣いているパトリシアを愛おし気にお姫様抱っこしたままの姿でホテルに背を向けてドミニクは去っていった。二人の姿が見えなくなるまでホテル内従業員は誰一人として動き出せなかった。思考が停止してしまっていたのだ。
そして、やっとホテル内の誰かが我に返って
「はぁああああああ~~~~っ!?」と、絶叫するのだった。
ホテルを出てきたドミニクは他人から見られないように馬車の乗客部にパトリシアと共に乗り込むと彼女が泣き止むまでその背中をさすってやった。そうして、ようやく彼女が落ち着きを取り戻したころ「大丈夫かい?」と優しく声をかけた。
パトリシアもドミニクの優しさのおかげで次第に冷静さを取り戻していったので、どうにか泣き止み、自分の気持ちを話せるようになった。
「・・・・ドミニク。私、今気が付きましたの。
今まで自分の力で生きていくと言ってはみたものの、心のどこかでお父様が私を本気で見捨てるはずがないとタカをくくっていた・・と。
結局、私は甘えていたのですね。私・・・・自立した女性になるなんて無理だったのかもしれません。」
パトリシアはすっかり傷つき、弱音を吐いた。無理もない。これまで箱入り娘ならぬ箱から飛び出す系お嬢様であったにもかかわらず、これまで両親は彼女を見放すことなく大きな愛で包み込んでくれていた。パトリシアはそういう環境で育てられた「お姫様」だったのだ。だからパトリシアは自分が甘えている部分の大きさに気が付くことなく成長してしまっていた。両親の愛が本当に尽きてしまうことなどないと思っていた。
ところが、今、ここにきて現実を思い知らされる。心のどこかで甘えていた自分に気が付き、そして自分の弱さに気が付いてしまったのだ。
これは大きな挫折である。パトリシアの心は今、ポッキリと折れかけていた。
だが、それを許さぬ者がいた。ドミニクである。
「・・・・・自分には無理だった?
無理だったって、どういう意味だい?
それは・・・実家に戻っておじさんの決めた僕の知らない誰かと結婚しても良いって意味かい?」
ドミニクは思わずパトリシアの顔を覗き込むようにして尋ねてしまう。その鬼気迫った眼差しにパトリシアは驚き、そして自分の心が折れていたことにハッと気が付き、すぐに返答する。
「良いわけないじゃないっ!! いやよっ!! そんなのっ!!
どこの誰とも知らない人と結婚するなんて絶対に嫌っ!!」
力強く反発したパトリシアにドミニクは被せるように言葉を発する。
「だったら・・・・だったら、諦めるなよっ!! 逃げ出すなよっ!
僕は嫌だっ!! 僕のパトリシアを誰にも渡したくないっ!!
だから、いいかい? おじさんが力を貸さないなら僕が君を守る。君を支えるっ!!
何年、何十年と君のそばにいて君を見ているっ!!
だから君も事業を諦めるなっ!! 」
「本当っ!? ドミニクっ!!」
「本当だっ!! 君を誰にも渡さないっ!!」
屋敷の時と同じようにドミニクの力強い励ましの言葉を再び聞いたパトリシアは心を決める。
「わかったわ。ドミニク・・・・。
私には貴方がいてくれるっ!! だから私はもう、迷わないわっ!
必ず事業を成功させて、誰とも結婚しない。あなたのそばにいますっ!!」
その言葉にドミニクは感極まって思わず力強くパトリシアを抱きしめてしまう。
「本当だよっ!? 絶対に誰にも渡さないっ!!
だから僕の可愛いパトリシアよっ!! そばにいてくれっ!!
僕を一人にしないでくれっ!!」
パトリシアを抱きしめたドミニクは肩を震わせて言った。きっと怖かったのだろう。パトリシアが諦めた瞬間、彼女が誰かの物になってしまうかもしれないと想像して・・・・怖かったのだろう。
そんなドミニクの心境をパトリシアはどこまで察しているのかはわからないが、それでもパトリシアはドミニクの頬に優しいキスをして誓うのだった。
「もう、人一倍大きな体のくせに甘えん坊さんなんだから・・・。
どこにもいかないし、誰のものにもなりません。
私はずっとあなたのそばにいます。」
「・・・・ああっ!! パトリシアっ!!」
それから二人は馬車の乗客部の中でしばらく抱き締めあったままお互いの気持ちを確かめ合うのだった。
・・・・・・何かが間違っている。
明らかに間違った方向に進展している。
だがっ!! しかしっ!! 二人はやはり気が付かないのであったっ!!
これが本来ならば、愛の告白であることをっ!!!
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