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第6話
ヒロイン揃い踏み 2
しおりを挟むアルバートが机の上に広げた地図は精巧なものだった。
方角、地形、位置。その全てが貴族の家に生まれた俺ですら見たことがないものだった。
恐らく、これが国家間を自由に行き来できる教会の力なのだろう。教会には世界に散らばる知識の全てが入って来る。いくら裕福な貴族でも所詮は個人の力。ここまでの物を手にすることは不可能だろう。
「え、ええと・・・?」
受付嬢もアルバートが広げた地図の精巧さに困惑してしまった。
無理もない。きっと彼女が初めて見る正しい世界の形なのだろうから。
そんな受付嬢の動揺を鎮めるためにアルバートは胸元から神官騎士の証である銀の首飾りを見せた。
「神官騎士様っ!?」
首飾りは新たな驚きを受付嬢に与えたが、そのおかげで逆に冷静さを取り戻しつつあった。
その様子を確認したアルバートは質問を続けた。
「闇の勢力の情報が欲しい。奴らは何処に神殿を築いた?
確認されている化物の種族は? 規模は?」
アルバートが冷静な声で話しかけたおかげで受付嬢は性格に返答することができた。
「はい。闇の神殿はおおよそこの位置です。
確認されている化物はオーク。数としては100を下回ることはないだろうとのことです。」
受付嬢は地図に指が触れないように、指を少し浮かした位置で地図上の一点を差し示しながら情報をくれた。
「オークか・・・。そしてこれほどの規模なら恐らく王がいるな。
オークキングが支配する闇の神殿か・・・。」
アルバートは情報を分析すると、その頭目の存在も推測する。
「で? 国は動くのか?
今、どういう状況になっている?」
「は、はい。今現在は、国の兵が動く前に斥候として冒険者部隊の派遣が求められています。
定員30名、報酬が金貨3枚の募集が始まったところです。」
受付嬢の説明を聞いたアルバートは美しい顔を歪めて怒りをあらわにした。
「斥候だと? 冗談だろ?
明らかな威力偵察だ。冒険者を使って敵の戦力を図るつもりだ。
この町にいる冒険者たちなんか30名集めたところで全員無駄死にするのがオチだ。」
アルバートの言葉に受付嬢は混乱した。ナタリアもアルバートの言葉に狼狽えた。
まさか、国が冒険者をそんな風に使うとは考えもつかないからだ。
だが、貴族の家に生まれた俺にはわかる。
この作戦に参加する冒険者はやんごとない方々の世界の事を何も知らない底辺出身の者達だ。
俺のような貴族や騎士の家の者は、上が冒険者を使い潰しにする魂胆なのを見抜いている。
この世界はそういう風にできている。
アルバートはそれが許せなかった。
アナウンスメントコーナーで募集を受け持っている者の元まで行き、彼を押しのけて冒険者たちに向って言った。
「この任務はLV3以下の者は参加するな。戦闘回数が10回以下の者も参加するな。
無駄死にするだけだっ!!」
冒険者たちは突然、目の前に現れた貴族風の大男の言葉に、ただただ驚くのだった。
方角、地形、位置。その全てが貴族の家に生まれた俺ですら見たことがないものだった。
恐らく、これが国家間を自由に行き来できる教会の力なのだろう。教会には世界に散らばる知識の全てが入って来る。いくら裕福な貴族でも所詮は個人の力。ここまでの物を手にすることは不可能だろう。
「え、ええと・・・?」
受付嬢もアルバートが広げた地図の精巧さに困惑してしまった。
無理もない。きっと彼女が初めて見る正しい世界の形なのだろうから。
そんな受付嬢の動揺を鎮めるためにアルバートは胸元から神官騎士の証である銀の首飾りを見せた。
「神官騎士様っ!?」
首飾りは新たな驚きを受付嬢に与えたが、そのおかげで逆に冷静さを取り戻しつつあった。
その様子を確認したアルバートは質問を続けた。
「闇の勢力の情報が欲しい。奴らは何処に神殿を築いた?
確認されている化物の種族は? 規模は?」
アルバートが冷静な声で話しかけたおかげで受付嬢は性格に返答することができた。
「はい。闇の神殿はおおよそこの位置です。
確認されている化物はオーク。数としては100を下回ることはないだろうとのことです。」
受付嬢は地図に指が触れないように、指を少し浮かした位置で地図上の一点を差し示しながら情報をくれた。
「オークか・・・。そしてこれほどの規模なら恐らく王がいるな。
オークキングが支配する闇の神殿か・・・。」
アルバートは情報を分析すると、その頭目の存在も推測する。
「で? 国は動くのか?
今、どういう状況になっている?」
「は、はい。今現在は、国の兵が動く前に斥候として冒険者部隊の派遣が求められています。
定員30名、報酬が金貨3枚の募集が始まったところです。」
受付嬢の説明を聞いたアルバートは美しい顔を歪めて怒りをあらわにした。
「斥候だと? 冗談だろ?
明らかな威力偵察だ。冒険者を使って敵の戦力を図るつもりだ。
この町にいる冒険者たちなんか30名集めたところで全員無駄死にするのがオチだ。」
アルバートの言葉に受付嬢は混乱した。ナタリアもアルバートの言葉に狼狽えた。
まさか、国が冒険者をそんな風に使うとは考えもつかないからだ。
だが、貴族の家に生まれた俺にはわかる。
この作戦に参加する冒険者はやんごとない方々の世界の事を何も知らない底辺出身の者達だ。
俺のような貴族や騎士の家の者は、上が冒険者を使い潰しにする魂胆なのを見抜いている。
この世界はそういう風にできている。
アルバートはそれが許せなかった。
アナウンスメントコーナーで募集を受け持っている者の元まで行き、彼を押しのけて冒険者たちに向って言った。
「この任務はLV3以下の者は参加するな。戦闘回数が10回以下の者も参加するな。
無駄死にするだけだっ!!」
冒険者たちは突然、目の前に現れた貴族風の大男の言葉に、ただただ驚くのだった。
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