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第2話
幼馴染が追ってくるっ!! 3
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颯爽と現れた貴族風の男は俺の幼馴染だった。
アンダルシア地方の都市国家のガルシア伯爵家の次期当主アルバート・ヴァン・カール・フランソワーズ・ガルシア。
俺の実家とは3代に渡って政治的対立をしてきたせいで、少年時代からやたらと俺をライバル視して絡んできていた嫌な野郎だ。
俺が学校の生徒代表に立候補すれば奴も対抗して立候補する。
俺が徒競走の代表に選ばれれば奴も対抗して立候補する。
俺が得意学科で1位を取れば、次の試験では俺を追い抜いてくる。
ちなみに実力差はいかんともしがたく、今のところ全部門の競争記録は212戦中81勝123敗8分けと俺が大きく負け越している。
更に学生時代だけに収まらず冒険者になった俺と違い、奴は教会直属の騎士にスカウトを受け、最年少で最高峰の神官騎士の称号を受勲した。
民間魔術に属する精霊魔法を駆使する魔法戦士の俺とは社会的立場は大きく差がある。
それもきっとあいつにとっては自慢の種なのだろう。いつしか俺は奴の名声が聞こえてこない世界に進んでいった。そして今このザマだ。
そんな俺と奴が皮肉なことに場末の酒場で再会し、しかも荒くれ者共から俺を守ってくれたのだ。
こんな屈辱的なことがあるかっ!?
俺は悔しさで顔が真っ赤になるのがわかった。
しかし、アルバートは女体化した俺の気持ちなどわかるわけもなく、「荒くれ者共から美少女を守る王子様」を演じるのだった。
誰かが叫んだ「なんだ、テメェっ! 怪我したくなかったら黙ってろっ!!」という言葉が言い終わらないうちに腰の大剣を抜いて、叫んだ男の腰ベルトを切り落とす。
「わわっ!!」「ひいっ!!」
眼にも止まらぬ早業だった。その場にいた誰もがアルバートが大剣を抜いた瞬間が見えずに微動だにできなかった。ただ、荒くれ者のベルトとズボンが床にずり落ちるのを見て何が起きたのかを理解して悲鳴を上げるのが精一杯だった。
「消えろ、下郎っ!!
命が惜しくなかったらなっ!!」
育ちの良さを隠せない品のいい声でアルバートが怒鳴ると、荒くれ者共や娼婦たちまでも恐れをなして逃げ出してしまった。
そうして、店には店主と給仕の少年と俺とアルバートだけが残されたのだった。
「客を無くして済まなかったな店主。」
そういってアルバートが気障にも迷惑料としては過分な金貨1枚をカウンターに置くと、店主は恐縮し切った表情でそれを受け取るのだった。
「それより君。大丈夫だったかい?
懐かしいアンダルシア地方のなまり言葉が聞こえてきたから、つい顔を出してしまったが、どうやら正解だったようだ・・・。」
美貌のアルバートは涼しげな笑顔を見せながら、さりげなく俺の隣の席に肩を寄せるように座った。
「懐かしい故郷の言葉を楽しみたい。
私の名はアルバート・ヴァン・カール・フランソワーズ・ガルシア。今宵はご一緒してもいいかな。」
(ううっ!! か、カッコよくなんかないもんっ!!)
俺は必死に自分の欲求と戦っていた。
アンダルシア地方の都市国家のガルシア伯爵家の次期当主アルバート・ヴァン・カール・フランソワーズ・ガルシア。
俺の実家とは3代に渡って政治的対立をしてきたせいで、少年時代からやたらと俺をライバル視して絡んできていた嫌な野郎だ。
俺が学校の生徒代表に立候補すれば奴も対抗して立候補する。
俺が徒競走の代表に選ばれれば奴も対抗して立候補する。
俺が得意学科で1位を取れば、次の試験では俺を追い抜いてくる。
ちなみに実力差はいかんともしがたく、今のところ全部門の競争記録は212戦中81勝123敗8分けと俺が大きく負け越している。
更に学生時代だけに収まらず冒険者になった俺と違い、奴は教会直属の騎士にスカウトを受け、最年少で最高峰の神官騎士の称号を受勲した。
民間魔術に属する精霊魔法を駆使する魔法戦士の俺とは社会的立場は大きく差がある。
それもきっとあいつにとっては自慢の種なのだろう。いつしか俺は奴の名声が聞こえてこない世界に進んでいった。そして今このザマだ。
そんな俺と奴が皮肉なことに場末の酒場で再会し、しかも荒くれ者共から俺を守ってくれたのだ。
こんな屈辱的なことがあるかっ!?
俺は悔しさで顔が真っ赤になるのがわかった。
しかし、アルバートは女体化した俺の気持ちなどわかるわけもなく、「荒くれ者共から美少女を守る王子様」を演じるのだった。
誰かが叫んだ「なんだ、テメェっ! 怪我したくなかったら黙ってろっ!!」という言葉が言い終わらないうちに腰の大剣を抜いて、叫んだ男の腰ベルトを切り落とす。
「わわっ!!」「ひいっ!!」
眼にも止まらぬ早業だった。その場にいた誰もがアルバートが大剣を抜いた瞬間が見えずに微動だにできなかった。ただ、荒くれ者のベルトとズボンが床にずり落ちるのを見て何が起きたのかを理解して悲鳴を上げるのが精一杯だった。
「消えろ、下郎っ!!
命が惜しくなかったらなっ!!」
育ちの良さを隠せない品のいい声でアルバートが怒鳴ると、荒くれ者共や娼婦たちまでも恐れをなして逃げ出してしまった。
そうして、店には店主と給仕の少年と俺とアルバートだけが残されたのだった。
「客を無くして済まなかったな店主。」
そういってアルバートが気障にも迷惑料としては過分な金貨1枚をカウンターに置くと、店主は恐縮し切った表情でそれを受け取るのだった。
「それより君。大丈夫だったかい?
懐かしいアンダルシア地方のなまり言葉が聞こえてきたから、つい顔を出してしまったが、どうやら正解だったようだ・・・。」
美貌のアルバートは涼しげな笑顔を見せながら、さりげなく俺の隣の席に肩を寄せるように座った。
「懐かしい故郷の言葉を楽しみたい。
私の名はアルバート・ヴァン・カール・フランソワーズ・ガルシア。今宵はご一緒してもいいかな。」
(ううっ!! か、カッコよくなんかないもんっ!!)
俺は必死に自分の欲求と戦っていた。
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