あばずれローニャ

黒神譚

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第2話

幼馴染が追ってくるっ!! 1

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「いや~んっ!! なにこれ。可愛いい~~っ!!」

美少年メイソンに悲しい別れを告げて東に進むこと15日。俺が新たな州についた時。既に夕暮れ刻となっていた。
そう。俺から男としての自我が抜け落ち、完全に女になってしまう時間帯に差し掛かっていたのだった。

そんな事情があって俺がこの州に来て最初に求めたのは宿でも食事でもなく、肌着だった。
前の都市で修道女に指摘された通り、未だ成長中の俺の女体はこれまでのブラのサイズでは胸に少し痛みがあったので、この州で適正サイズで可愛いデザインのブラを求めたのだった。
もちろん、今着けているブラに布をつぎ足し補正をして適正なサイズにする事も可能なのだけれども、そこはやっぱり女の子の部分が強い。資金に余裕があるときは、綺麗な生地のオシャレをしてみたいものなのだ。
だから女になる夜に買い物してしまったら散財してしまう。欲のない男のうちにアッサリと買い物をするに限るのだ。

そう思って、この州の服屋を訪ねて、今、沼にハマってしまったのだった。
この州のデザイナーは優秀だった。そのデザインは全て革新的でそして、可愛かった。
俺は我を忘れては下着選びに没頭し、チャームも俺と共に親身になって選んでくれた。

(俺、このバラのデザインが気に入った。
 あっ!! それにこの百合の花のも可愛くないかっ!?
 あと、この薄紫のフリルが付いているのも綺麗じゃない?)
(駄目よ、あれもこれもじゃ予算が足りないわ。
 ね? ローニャよく考えて。肌着は2枚までよっ!!
 パンツも買わないといけないんだからねっ!!)
(・・・うっ・・・。ぱ、パンツは、まだ大丈夫だもん・・・)
(嘘おっしゃい。また大きくなってるでしょ、お尻)
(大きくなってないっ!!)
(わっかんないな~。男の子って好きよ? 大きいお尻)
(う~~~・・・大っきくないっ!!)

その後。俺は結局、予算を超える上下4セットを買って店を出て、店の外で我に返って激しく後悔した。

(ああああああ~~~っ!! 何やってんだっ!! 俺っ!!
 しっかりしろっ!! まだ夕暮れ時じゃないかっ!! 男だろっ!?)
買い物袋を抱えて往来にしゃがみこむ俺にチャームが追い打ちをかける。
(・・・いや。往生際が悪いわね。あんたもう手遅れでしょ。
 試着して鏡に写った自分の姿を見て「やぁーん。私、可愛い~~っ!!」って滅茶苦茶喜んでたじゃん。)
(ああああああ~~~っ!! 言うなぁ~~~っ!!
 殺してくれっ!! もう、いっそのこと俺を殺してくれ~~~っ!!)

かつて魔神シトリーを討伐した英雄の尊厳はこうしてスリ減っていくのだった。

散財してしまった反省として、俺は今日の宿は食事のでない安宿に泊まることにした。
酔っ払いとならず者も多い酒場で食事をとるのは旅の乙女にとっては危険なことだが、こういう日は安い食事で男に絡まれる前にさっさと済ませ、朝まで寝るに限る。


それが間違いだったことをこの時の俺にわかるはずもなかった。
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