魔王〜明けの明星〜

黒神譚

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第3章「ゴルゴダの丘」

第59話 5年

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「裏運営……、ムトウさんからのメールで決心がつきました」
『えー、何のー?』

 シュウカさんがのんびりと聞いてくるのを、シュウさんが小突く。

『分からないのか』
『分かんない』
 画面の向こうで肩をすくめているシュウカさん。かわいい。

「私、やっぱりログインします」
『ああ、そのことねー。あたしも付き合うー。でもさっきより気分は楽になったかもー。だって再ログインしたとしても、3日後には強制ログアウトできるんだもんね』

 そう。ログインしたとしても、ログアウトできない状況にはならない。少なくとも、3日後には強制的にログアウトさせられる。

 再ログインの権限は前回ログアウトする前にもらったけど、自由にログアウトできる権限が付与されているかどうかは保証されていなかったからちょっと怖かったんだよね。
 

「とはいえ、色々と考えることがありそうですね」
 そもそも、さっきのシュウカさんの話に関連してるけど、このゲームのヘッドギアってまだまだ品薄状態が続いているんじゃなかったっけ?
 据え置き型ゲーム機や携帯ゲーム機の新世代バージョンが出ると大概、品薄状態になる。店頭や通販での予約は早々に終了となり、発売日には店頭に長蛇の列ができたりする。
 そもそもこのゲーム、元々はそれ以上に、抽選での購入権戦争が激しかったってSNSで確認している。
 予約合戦、抽選合戦、店頭当日張り込み合戦に負けてしまった人たちは、購入を諦めるか、テンバイヤーから購入するかの二択になる。
 テンバイヤー。転売を目的とする買占め屋さん。どうしても増産を待てず、今遊びたいという人たちは、テンバイヤーから購入することになる。テンバイヤーは、定価の倍以上の値段で商品を売っているから、大きな出費だ。

「テンバイヤーさんから購入した人たちからも、文句が出そうですね……」

 これからたくさん遊ぶつもりで定価の倍以上の金額で購入したのに、まさかこんなすぐに、ゲームで遊べなくなるなんて、誰も想像してなかったよね。
 しかも自分が飽きて遊ばなくなるのは仕方がないことだけど、言ってみればサービス終了でゲームが強制的に終了してしまったわけだよね。しかも発売してから何年も経ったわけじゃないし、プレイしている人の人口が少ない訳でもない。絶対文句が出る。

「それに少なくとも、あと3日間は自由にログアウトできない状況が続くということになりますし……」

 私たちみたいにムトウさんが設定した条件をクリアした人は別だけど、それ以外の人は、3日間はログアウトできない。そうなると、ログインしている人たちの現実に影響が出るよね。

「3日間後にはログアウトできるとしても、それまでに私生活に影響が出てまずい人たちもいるはずです。やっぱりログアウト条件を知っている以上、ほっておけませんし、ログインします」
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