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第3章「ゴルゴダの丘」
第43話 対話と恐怖
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エデンの6分の1の国土を切り取ってゴルゴダが建国されて既に2カ月がたちました。ゴルゴダは人間や亜人の住む国々と我が国との折衝地域を広く統治する国家だったので、国土は細く長い不思議な領地を持っていました。
我がエデンから見て東側には人間が住む国家群の支配領域。
東南側にはエルフなどの妖精族が住む国家群の支配領域。
南側には人食い鬼と称されるような鬼族などが住む国家群の支配領域。
北側は土地が瘦せている上に冬季が長いためにあまり強くない雑多な種族の国家群があり、南西側は農耕に適さない湿地帯が広く伸びている地域であったために、これまたあまり強くない国家群が存在しました。
両国の共通点は国土の多くが海に面していたために、海産物や航海技術に優れた国家であるということに加え、その支配領地は魔族以外の国から見ると魔族の国を超えて行かねば衝突が起きないという地形条件であったので、南北の小国家群はまるで魔族の国を防衛ラインとして生存しているような状態でした。ですから両支配地域と私たち魔族とは共存共栄の中にあり、交易に関しては古くから盛んにおこなわれていました。
そんな立地条件を支配領地に持つ私たち魔族の国家エデンの防衛を目的にして作られたゴルゴダは必然的にエデンの東から南までを広く支配する形になっていたので、我が国や西側諸国からはいつしか「東南の壁「と呼ばれるようになったのでした。
「東南の壁」と呼ばれるゴルゴダは単純に軍事的な壁として存在するわけではありませんでした。他の種族にとって魔族国家エデンの内政情報を得ることができない障壁となっていたので、ゴルゴダは政治的にも一枚の壁として、その存在を他国に知らしめるようになっていました。
多種族にとって今、一番の関心事項は明けの明星様でした。
得体のしれない異界の魔王が復活したことによって、15の国家群であった魔族が一つにまとまって超巨大国家を形成するようになってしまったのですから、多種族たちにとってエデンは脅威以外の何物でもなく、また、そんな覇業を成し遂げた異界の魔王に興味を持たない国家など存在しなかったのです。
しかし、多種族がエデンの情報を得るためにはゴルゴダを超えて行かねばならないということになってしまったので、多種族にとってエデンは更に謎多き脅威として知られていくようになるのでした。
それは私にとって喜ばしい事ではありませんでした。
「魔王様。ゴルゴダが建国されてから私たちは多種族との折衝、その脅威から解放されて大変喜ばしい事ですが、本当にこれで良かったのでございましょうか?」
今、執務室には、明けの明星様とアンナお姉様。それと突然、仲間に加わった明けの明星様の妹君であらせられる「混沌と炎の国」の王タヴァエル様の3人がおられます。
政務を行うための執務室ですが、いつしかお3人のリビングルームと化してしまい、政務を行うには適さない環境になってしまったのです。そのため、臣下たちは政務を別の部屋で執り行い、私はこの部屋でその報告を聞いてからハンコを押すだけの簡単なお仕事が主な日課となってしまったのです。
支配者である王が監視していない状況で政務が決められていく。こうなると自分の私利私欲に走る知事たちの不正が起きやすいはずなのですが、これに対しては明けの明星様、アンナお姉様、タヴァエル様が目を光らせていたので、不正が起こればすぐさま御3人のいずれかから粛清されてしまうということになるので誰も不正を起こさなくなったのでした。
起こさなくなったというのは、実際に貧困層への給付金を中抜きをするという不正を犯した者が明けの明星様に声を掛けられて、その場で明けの明星様の粛清を受けた者がいたという事です。
その時の明けの明星様の御怒り具合はすさまじく、不正を犯した知事に対して口から焼けたマグマを吐きかけ、時間をかけてゆっくりと焼き殺したというのですから恐ろしい事です。
「おのれらもよう聞けっ!!
おのれらはずっと俺とアンナとタヴァエルに監視されていると思えっ!!
その上でラーマを騙そうとなんかしてみぃ、楽に死ねると思うなよっ!? わかったかっ!!」
と、家臣たちに怒鳴り散らされたそうです。
そうです、というのは明けの明星様は私の前ではそのようなことをなさらなかったからです。
「お前の前であんなんやったら、どうせ ” いたずらに苦しめて殺すのは非道です。 私が一思いに ” とか言うて、じっくりと焼け死ぬはずの家臣を一思いに殺してやるやろ。
それではアカン。見せしめにならん。
恐怖とは圧倒的に救いのないものでないと効果がない。懐柔できる余地なんかないと相手に思わせるほど無慈悲な者でないとアカンのや。
そのためにお前のおらんところで殺ったんや。
おかげで見てみぃ。知事共がよう働くこと。」
明けの明星様はそう言って高笑いを成されるのでした。
徹底した恐怖によって政治を支配する明けの明星様。それが良い事なのか悪い事なのかと言えば、正直、微妙です。何故なら明けの明星様方は不正に対しては厳しかったのですが、失敗に対しては寛容であったからです。
大抵のミスは「生き物にミスはつきもの」と言ってミスの再発防止を厳命する程度で終わったからです。
恐怖政治は悪政に対してだけ向けられたので、賛否両論が当然あったのですが・・・。こと、他国に対しての恐怖は逆効果ではないのかと私は心を痛めておりました。それで明けの明星様にゴルゴダと言うベールに隠れた恐怖を他国に覚えさせる恐怖体制について「これでよかったのでしょうか?」と、尋ねたのです。
ちなみに私がこういった意見を明けの明星様にすると、決まってアンナお姉様とタヴァエル様がお叱りになるのです。
「お黙りなさいっ!! ラーマっ!!
たかが魔族と人間の混血が私のお兄様に意見するとは何事ですかっ!!」
「そうですわっ!! 私の旦那様が御定めになされたことに口を出すなんて、いくらラーマでも許しませんよっ!!」
と、始まって、大体いつもお二人は、その後に対立なさるのです。
「あらぁ? 下賤なメス犬がいま、私のお兄様の嫁を気取るような発言をしたようですが、気のせいですかね?」
そういってアンナお姉様の肩を手で掴み、アンナお姉様はそれに対抗して自分のお胸を両手で掴んで見せて、「あら? 旦那様は私の事を大層、気に入って下さっていますわよ?」と返します。
そこから
「この淫乱のメス犬っ!! お兄様がいなかったら命がないと思いなさいよっ!!」
「あらあら。妹君はまだまだお子様のご様子。男女の秘め事についてもう少しお学びになられた方がよろしいのではないですか?」
などと言い合いが始まります。そしてお二人とも明けの明星様に引き剥がされて「やかましいっ!!」と怒鳴られるまでがほぼルーティーンと化しています。
妹君様とアンナお姉様のこういった対立は、きっといつまでも続くのでしょうね。
そうして、そんなお二人の会話を聞いていても仕方がないとばかりに明けの明星様は私に尋ねるのでした。
「で? お前は具体的に何が不満なんや。
思う事を有体に言うてみぃ」
明けの明星様が私を睨みつけるようにそう言うと、タヴァエル様とアンナお姉様は対立をやめて席に座ると私の言葉を待ちます。
こんな高位なお3人に対して意見を言うのは確かに気が引けるのですが、エデンとヴァレリオ様の将来の事を考えたとき、私は黙っているわけにはいかないのでした。
「それでは、お言葉に甘えて言上仕ります。
明けの明星様。現在のエデンは他国から見ると謎と恐怖に包まれた超国家です。
多種族は噂に耳する異界の魔王であらせられる明けの明星様の御威光に怯えつつも、その情報はヴァレリオ様が支配するゴルゴダに阻まれて詳しいことを知ることができません。」
「こうなれば、他国の不満と恐怖は積もります。
場合によっては私たちに対抗すべく自分たちも一枚に纏まり超大国を形成するようになるやもしれません。
そうなった時、矢面に立たされるヴァレリオ様やゴルゴダの民は常に戦争の脅威にさらされることになりましょう。
恐怖が続けば、起爆剤となって戦争がはじまりかねないからです。」
「私は思うのです。恐怖による束縛よりも対話による共存こそが望ましいと。
世界は明けの明星様という光の下に集結することがあるべき姿なのではないでしょうか?」
明けの明星様は私の話を腕組みしたままお聞きになり、何度も「うむ。」「うむ。」と相槌をついておられましたが、私の話を全て聞き終えた後にこう仰ったのです。
「アホたれ。」と。
あ、アホたれ。これまでも散々、明けの明星様に私はアホたれアホたれと言われていますが、いつまで経っても慣れませんね。これは・・・。結構イラっと来ます。
「お前の言う事はもっともや。
もっともすぎてそんなことお前に言われんでもこっちはわかっとるわって言いたいわ。」
「お前な。対話で解決するとか簡単に言うけどな、対話で本当に解決したと言えることなんかあり得ると思ッとんか?」
「種族や文化の違う相手と対話による解決を求めた場合はな、実はその先には、もっと厄介な障害が必ずと言っていいほど起きるものなんやぞ。
敵は俺らを懐柔できると考えたり、交渉次第で自分たちがより優位な立場を得ようとする。」
「例えば、どこかの交易地を貸し与えたとするやろ?
最初はその貸し代を払ってくれるわ。しかし、恐怖をまとわない相手に対して人はやがて値切り始める。なんやったら無料にせよと言い出す。
そして、そのうち交易地の地域を広げろと言い出していき、自分たちの国の飛び地ともいえる地域を他国に作らせるんや。そこは飛び地と言うだけあって多くの人が移り住む。そうやって交易地に元からいた住民を超える数の移民が住み込みだす。移民が街にあふれだしたら、その後にすることは目に見えとる。」
「自治権の要求や。やれ公共事業の整備をやらせろだの、税金を免除せよだの。自分たちの方が大勢暮らして多くの税金を払っているのだから、税の使い方は自分たちに決めさせろとこう言いだすわけだ。
更に言ったら、その頃には少数派に落ちぶれている元からの住民の多くが移民の富豪に金を借りている立場に陥っているから、逆らう事も出来ん。
そうなってくると今度は独立を言い出すんや。
ここを商業都市の自治区にしろってな。」
「こういうことがなんで可能かわかるか?
それはな、恐怖がないからや。
恐怖する相手に対してこういうことをする奴はおらんのや。わかるやろ? こいつに逆らったら何をされるかわからん思う相手に無理な要求するアホはおらんやろ? それと一緒でな、会話するにしてもその背景に恐怖がないと始まらんのや。」
「国家というものは手を握り合う時には、相手を殺せるナイフを反対の手に持ってないと相手に取り込まれるだけの話や。
お前が求めている対話による共存言うのもな、まずは圧倒的な恐怖を見せつけんことには始まらん言う事を肝に銘じとけ。」
明けの明星様はそう言って私を諭すのでした。
我がエデンから見て東側には人間が住む国家群の支配領域。
東南側にはエルフなどの妖精族が住む国家群の支配領域。
南側には人食い鬼と称されるような鬼族などが住む国家群の支配領域。
北側は土地が瘦せている上に冬季が長いためにあまり強くない雑多な種族の国家群があり、南西側は農耕に適さない湿地帯が広く伸びている地域であったために、これまたあまり強くない国家群が存在しました。
両国の共通点は国土の多くが海に面していたために、海産物や航海技術に優れた国家であるということに加え、その支配領地は魔族以外の国から見ると魔族の国を超えて行かねば衝突が起きないという地形条件であったので、南北の小国家群はまるで魔族の国を防衛ラインとして生存しているような状態でした。ですから両支配地域と私たち魔族とは共存共栄の中にあり、交易に関しては古くから盛んにおこなわれていました。
そんな立地条件を支配領地に持つ私たち魔族の国家エデンの防衛を目的にして作られたゴルゴダは必然的にエデンの東から南までを広く支配する形になっていたので、我が国や西側諸国からはいつしか「東南の壁「と呼ばれるようになったのでした。
「東南の壁」と呼ばれるゴルゴダは単純に軍事的な壁として存在するわけではありませんでした。他の種族にとって魔族国家エデンの内政情報を得ることができない障壁となっていたので、ゴルゴダは政治的にも一枚の壁として、その存在を他国に知らしめるようになっていました。
多種族にとって今、一番の関心事項は明けの明星様でした。
得体のしれない異界の魔王が復活したことによって、15の国家群であった魔族が一つにまとまって超巨大国家を形成するようになってしまったのですから、多種族たちにとってエデンは脅威以外の何物でもなく、また、そんな覇業を成し遂げた異界の魔王に興味を持たない国家など存在しなかったのです。
しかし、多種族がエデンの情報を得るためにはゴルゴダを超えて行かねばならないということになってしまったので、多種族にとってエデンは更に謎多き脅威として知られていくようになるのでした。
それは私にとって喜ばしい事ではありませんでした。
「魔王様。ゴルゴダが建国されてから私たちは多種族との折衝、その脅威から解放されて大変喜ばしい事ですが、本当にこれで良かったのでございましょうか?」
今、執務室には、明けの明星様とアンナお姉様。それと突然、仲間に加わった明けの明星様の妹君であらせられる「混沌と炎の国」の王タヴァエル様の3人がおられます。
政務を行うための執務室ですが、いつしかお3人のリビングルームと化してしまい、政務を行うには適さない環境になってしまったのです。そのため、臣下たちは政務を別の部屋で執り行い、私はこの部屋でその報告を聞いてからハンコを押すだけの簡単なお仕事が主な日課となってしまったのです。
支配者である王が監視していない状況で政務が決められていく。こうなると自分の私利私欲に走る知事たちの不正が起きやすいはずなのですが、これに対しては明けの明星様、アンナお姉様、タヴァエル様が目を光らせていたので、不正が起こればすぐさま御3人のいずれかから粛清されてしまうということになるので誰も不正を起こさなくなったのでした。
起こさなくなったというのは、実際に貧困層への給付金を中抜きをするという不正を犯した者が明けの明星様に声を掛けられて、その場で明けの明星様の粛清を受けた者がいたという事です。
その時の明けの明星様の御怒り具合はすさまじく、不正を犯した知事に対して口から焼けたマグマを吐きかけ、時間をかけてゆっくりと焼き殺したというのですから恐ろしい事です。
「おのれらもよう聞けっ!!
おのれらはずっと俺とアンナとタヴァエルに監視されていると思えっ!!
その上でラーマを騙そうとなんかしてみぃ、楽に死ねると思うなよっ!? わかったかっ!!」
と、家臣たちに怒鳴り散らされたそうです。
そうです、というのは明けの明星様は私の前ではそのようなことをなさらなかったからです。
「お前の前であんなんやったら、どうせ ” いたずらに苦しめて殺すのは非道です。 私が一思いに ” とか言うて、じっくりと焼け死ぬはずの家臣を一思いに殺してやるやろ。
それではアカン。見せしめにならん。
恐怖とは圧倒的に救いのないものでないと効果がない。懐柔できる余地なんかないと相手に思わせるほど無慈悲な者でないとアカンのや。
そのためにお前のおらんところで殺ったんや。
おかげで見てみぃ。知事共がよう働くこと。」
明けの明星様はそう言って高笑いを成されるのでした。
徹底した恐怖によって政治を支配する明けの明星様。それが良い事なのか悪い事なのかと言えば、正直、微妙です。何故なら明けの明星様方は不正に対しては厳しかったのですが、失敗に対しては寛容であったからです。
大抵のミスは「生き物にミスはつきもの」と言ってミスの再発防止を厳命する程度で終わったからです。
恐怖政治は悪政に対してだけ向けられたので、賛否両論が当然あったのですが・・・。こと、他国に対しての恐怖は逆効果ではないのかと私は心を痛めておりました。それで明けの明星様にゴルゴダと言うベールに隠れた恐怖を他国に覚えさせる恐怖体制について「これでよかったのでしょうか?」と、尋ねたのです。
ちなみに私がこういった意見を明けの明星様にすると、決まってアンナお姉様とタヴァエル様がお叱りになるのです。
「お黙りなさいっ!! ラーマっ!!
たかが魔族と人間の混血が私のお兄様に意見するとは何事ですかっ!!」
「そうですわっ!! 私の旦那様が御定めになされたことに口を出すなんて、いくらラーマでも許しませんよっ!!」
と、始まって、大体いつもお二人は、その後に対立なさるのです。
「あらぁ? 下賤なメス犬がいま、私のお兄様の嫁を気取るような発言をしたようですが、気のせいですかね?」
そういってアンナお姉様の肩を手で掴み、アンナお姉様はそれに対抗して自分のお胸を両手で掴んで見せて、「あら? 旦那様は私の事を大層、気に入って下さっていますわよ?」と返します。
そこから
「この淫乱のメス犬っ!! お兄様がいなかったら命がないと思いなさいよっ!!」
「あらあら。妹君はまだまだお子様のご様子。男女の秘め事についてもう少しお学びになられた方がよろしいのではないですか?」
などと言い合いが始まります。そしてお二人とも明けの明星様に引き剥がされて「やかましいっ!!」と怒鳴られるまでがほぼルーティーンと化しています。
妹君様とアンナお姉様のこういった対立は、きっといつまでも続くのでしょうね。
そうして、そんなお二人の会話を聞いていても仕方がないとばかりに明けの明星様は私に尋ねるのでした。
「で? お前は具体的に何が不満なんや。
思う事を有体に言うてみぃ」
明けの明星様が私を睨みつけるようにそう言うと、タヴァエル様とアンナお姉様は対立をやめて席に座ると私の言葉を待ちます。
こんな高位なお3人に対して意見を言うのは確かに気が引けるのですが、エデンとヴァレリオ様の将来の事を考えたとき、私は黙っているわけにはいかないのでした。
「それでは、お言葉に甘えて言上仕ります。
明けの明星様。現在のエデンは他国から見ると謎と恐怖に包まれた超国家です。
多種族は噂に耳する異界の魔王であらせられる明けの明星様の御威光に怯えつつも、その情報はヴァレリオ様が支配するゴルゴダに阻まれて詳しいことを知ることができません。」
「こうなれば、他国の不満と恐怖は積もります。
場合によっては私たちに対抗すべく自分たちも一枚に纏まり超大国を形成するようになるやもしれません。
そうなった時、矢面に立たされるヴァレリオ様やゴルゴダの民は常に戦争の脅威にさらされることになりましょう。
恐怖が続けば、起爆剤となって戦争がはじまりかねないからです。」
「私は思うのです。恐怖による束縛よりも対話による共存こそが望ましいと。
世界は明けの明星様という光の下に集結することがあるべき姿なのではないでしょうか?」
明けの明星様は私の話を腕組みしたままお聞きになり、何度も「うむ。」「うむ。」と相槌をついておられましたが、私の話を全て聞き終えた後にこう仰ったのです。
「アホたれ。」と。
あ、アホたれ。これまでも散々、明けの明星様に私はアホたれアホたれと言われていますが、いつまで経っても慣れませんね。これは・・・。結構イラっと来ます。
「お前の言う事はもっともや。
もっともすぎてそんなことお前に言われんでもこっちはわかっとるわって言いたいわ。」
「お前な。対話で解決するとか簡単に言うけどな、対話で本当に解決したと言えることなんかあり得ると思ッとんか?」
「種族や文化の違う相手と対話による解決を求めた場合はな、実はその先には、もっと厄介な障害が必ずと言っていいほど起きるものなんやぞ。
敵は俺らを懐柔できると考えたり、交渉次第で自分たちがより優位な立場を得ようとする。」
「例えば、どこかの交易地を貸し与えたとするやろ?
最初はその貸し代を払ってくれるわ。しかし、恐怖をまとわない相手に対して人はやがて値切り始める。なんやったら無料にせよと言い出す。
そして、そのうち交易地の地域を広げろと言い出していき、自分たちの国の飛び地ともいえる地域を他国に作らせるんや。そこは飛び地と言うだけあって多くの人が移り住む。そうやって交易地に元からいた住民を超える数の移民が住み込みだす。移民が街にあふれだしたら、その後にすることは目に見えとる。」
「自治権の要求や。やれ公共事業の整備をやらせろだの、税金を免除せよだの。自分たちの方が大勢暮らして多くの税金を払っているのだから、税の使い方は自分たちに決めさせろとこう言いだすわけだ。
更に言ったら、その頃には少数派に落ちぶれている元からの住民の多くが移民の富豪に金を借りている立場に陥っているから、逆らう事も出来ん。
そうなってくると今度は独立を言い出すんや。
ここを商業都市の自治区にしろってな。」
「こういうことがなんで可能かわかるか?
それはな、恐怖がないからや。
恐怖する相手に対してこういうことをする奴はおらんのや。わかるやろ? こいつに逆らったら何をされるかわからん思う相手に無理な要求するアホはおらんやろ? それと一緒でな、会話するにしてもその背景に恐怖がないと始まらんのや。」
「国家というものは手を握り合う時には、相手を殺せるナイフを反対の手に持ってないと相手に取り込まれるだけの話や。
お前が求めている対話による共存言うのもな、まずは圧倒的な恐怖を見せつけんことには始まらん言う事を肝に銘じとけ。」
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