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第3章「ゴルゴダの丘」
第42話 タヴァエル、お前・・・。
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明けの明星の前に現れたタヴァエル。彼女はキリストが用いたとされる言語であるアラム語の「タヴァ=貴い」という意味の言葉と、多くの天使に冠された神を意味する言葉「エル」を複合した名前を与えられた力の階位の女天使である。
しかし、タヴァエル=貴き神という尊大な意味の名を冠された力天使は、明けの明星から見てせいぜい1億歳ほどしか生きていない少女の天使であり、明けの明星の妹であった。
そんな素性の彼女はラーマたちが暮らす異界「混沌と炎の国」の王に君臨していたのだった。
異界の王。それは世界の管理者を任された大神の事であった。
明けの明星の見立てでは、この世界は、いくつもの異界が同時に同じ場所に存在するのに、次元の壁に阻まれて決して交わることがない不思議な構造をした世界である。
そして重なり合う各世界には、全く別次元の空間からその世界を回すためのエネルギーが常に注ぎ込まれていて、そのエネルギーの余剰分が集まれば新たな異界が生まれる仕組みになっていたのだった。
しかも、その新たに生まれた異界を支配・管理する役目を与えられた「異界の王」と呼ばれる存在には、別の異界で大神に昇華するほどまでに成長した魂が「異界の王」として据えられることになっていた。
つまり、ヴァレリオが一介の騎士から魔王に昇華したように、一つの生命体が高位に昇華して魔神をも超える存在の神「異界の王」にまで成長する可能性がある世界の構造なのだった。
この重なり合う異界のシステムには意外なことに銀河の構造と多くの共通点があった、
銀河が爆発によって新たな銀河を産み出し永久に広がっていくのに似て、この世界は別次元から送られてくるエネルギーの過剰分で新たな世界「異界」が生み出されていくのだった。
また、いくつもの銀河には天使が監督役に据えられる部分と、新たな異界に新たな異界の王が監視役に当てられる構造まで銀河系とこの世界は似ていた。
タヴァエルは、かつて明けの明星が金星の守護者として太陽系の全てを監視させられていたように、「混沌と炎の国」と呼ばれる異界の王として、ラーマたちの世界を管理していたのだった。
・・・ただし、タヴァエルは任期制の臨時の管理者であり、真の管理者は大天使ガブリエルであった。
大天使ガブリエル。明けの明星の妹にして全ての女天使の長。大地母神であり冥界の王という側面を持つ絶大な力を持った天使であった。その威光はすさまじく、ガブリエルは全ての天使の中で最高位に位置する5大天使、4大天使として名が上げられるほど高位な天使として位置付けられていた。
明けの明星クラスの大天使が封禁された異界の管理は本来、彼女のような偉大な天使がするべきであり、決してタヴァエルのような幼い少女に任せて良い案件ではなかった。
ところがである。大天使ガブリエルはある時、明けの明星がいる異界「混沌と炎の国」の管理をやめて別次元に消え去ったという。しかも、その消息は不明。混沌と炎の国の管理を任された後任の天使たちでさえ、この異界の本来の管理者であるガブリエルとは任命された一度だけしかあったことがないのだという。大天使ガブリエルには徹底した秘密管理がなされているのだった。
明けの明星はそれを不審に思うのであった。そして同様にタヴァエルもガブリエルの不在を不思議に思っていた。
そしてこの度、ラーマの働きによって封禁を解かれてしまった明けの明星が現在起こしている行動について、タヴァエルが世界の創造主・自分たちの父親に報告をするために本来の世界に戻っていたので、明けの明星はタヴァエルが何か情報を掴んでこの異界に戻ってきたであろうと推測して、その情報の開示を催促したのであった。
だが、タヴァエルの返事は意外なものであった。
「そんなことよりもお兄様っ!!
今、天界では羊肉に杏ベースのチリソースを塗ったステーキが大流行していますのっ!!
私も食したのですけれど、これが美味しいのなんのってっ!!
なんでも人間で最高位のシェフが天国でお店を開いたことをきっかけに大流行したらしいのですが、本当に絶品なんですよぉ~っ!!」
「あ、もちろんお兄様にもお土産として真空パックで持ち帰っていますよ。あとでチンしてお召し上がりください。
ライ麦パンもご一緒にどうぞっ!!」
そう言ってタヴァエルが差し出すお土産袋を明けの明星は無表情で受け取る。普通はその表情から「今はそういうときじゃないだろう?」と言う事を察するのが常識である。
しかし、故郷に戻るという天使としての一大イベントを終えた幼いタヴァエルの興奮は冷めることが無かった。
「と・こ・ろ・で・・・。
実はお兄様には他にも素晴らしいお土産があるんですっ!!」
「それがこれっ!! 明けの明星お兄様の総受け本の5巻セットですっ!!」
タヴァエルは嬉しそうに薄い本を5冊広げて明けの明星に見せつけるのだった。その時、明けの明星は死んだ魚の目をしていたのだが、タヴァエルの目には映っていないらしい。生き生きと瞳を輝かせて明けの明星ご本人にその内容を解説するのだった・
「いえね? 私も最初はBLってどうなのよ? って思っていたんですのよ。実際、目にするまではっ!!
でも、最近死んで天国にやってきた神絵師が描くBL本が女天使の間で大流行しているっていうので、物は試しってことで先輩女天使のお姉さま方に勧められるままに一度読んでみたのですが・・・。」
「・・・これが、もうっ・・・最っ高なのですよっ!!」
「絵が美しいのは勿論の事、ストーリーがすごいんです。
地獄に落とされて無力化されたお兄様がミカエル様に調教されて、どんどんメス落ちして行って最後には女装緊縛に目覚めるほどなんですよっ!!
最初は ”やめろっ!! 俺はお兄ちゃんだぞっ!! ” って、健気な抵抗をしていたはずのお兄様がミカエル様を見ただけで切なくなっちゃって自分からおねだりし始める展開とか、神がかっていると思いませんかっ!?
もうね、この漫画家は神ですよっ!!」
興奮したタヴァエルの早口はさらに加速し、本の中身まで広げて説明を始めるのだった。
「ほら~。お兄様、メチャクチャ可愛くないですか? このシーンっ!!」
「ね? ね? ほら、どう重います~?
お兄様ったらぁ~~・・・。」
本の中身を見せられた明けの明星は、その中身を見て嬉しそうにしているタヴァエルに同調してやるのだった。
「おおっ!! ホンマやなぁッ!!
滅茶苦茶エロいやんけ、このシーンなんかっ!!
俺、全部丸出しやんけ~っ!!・・・・・」
だが、それが限界だった。
「・・・て、なるかボケーーーっ!!!」
明けの明星は怒りに身を任せてタヴァエルのお土産のBL本を引き裂いた。
なるよね~。
「どこのどなた様が、己がメス堕ちさせられるBL本を読んで興奮するんじゃっ!!
罰ゲームどころか、タチの悪すぎる嫌がらせやぞ、これっ!!」
「お、おおおお、おのれ、妹や無かったら今頃、引き裂いて殺しとるからな?
わかっとんのか、ボケ―――っ!!!」
はぁはぁと、肩で息をするほど怒り狂った明けの明星であったが、タヴァエルはそんな明けの明星に失望したかのように
「ああ・・・。お兄様って、まだそのレベルなのですね・・・。」と、憐れんだ瞳で呟くのだった。
「ワレ、何目線のセリフじゃっ!! それーーっ!!」
「ああ。いいのですわよ、お兄様。今は別に恥じることじゃありませんよ?
私も最初はそうでしたから・・・。
BL? 何それ? ありえな~いって感じでした。」
「でもね。ちゃんと読んでみてください。
開けますよ? 私と同じく新たなる世界の扉が・・・。」
そう言って明けの明星が引き裂いたBL本を魔法で再生させてから「もう、だめですよ?」と言わんばかりに優しく手渡す妹・タヴァエルになぜか敗北した気持ちになった明けの明星は涙をこらえて受け取るしかなかった。
「なんの世界の扉じゃ、それ・・・。
そんなもん、乙女だけが開いて喜ぶもんやろうが・・・。」
可愛い妹には勝てない悲しい兄の姿が、そこにはあった・・・。
しかし、流石にタヴァエルもいつまでも腐った乙女のままではなかった。
明るい表情を一変させて重要な話を始めるのだった。
「お兄様、楽しい会話はここまでです。早々にその大事そうに抱えておられるエロ本をしまってください。全く、いやらしいんだから・・・。
そんなことよりもお兄様には大切なお話があるのですから。
実は、お兄様には偉大なる我々の父上からご伝言があります。」
明けの明星はとっさに(こいつ、マジで折檻してやろうかな?)と、思ったが、そんなことはおくびにも出さずにタヴァエルの話に耳を傾けるのだった。
「偉大なる父上は仰いました。
” るーちゃんよ。最近、教会で見かけないな? 復活したならば、ちゃんと日曜日には礼拝堂に来なさい。
それから、異界で余の威光を知らしめんと思うるーちゃんの殊勝な心掛け、父は嬉しく思うぞ。だが、余計なことはするな。お父さんにはお父さんの考えがあってしている事なんだからね。子供が余計な口出しするんじゃありません。
それと、るーちゃん。お前の悪い友達が目覚めておるぞ。幼い魔神を寵愛しすぎて気が付いてはおらぬだろう?
お前がそれほど女に執着するとは珍しいが、それも成長なのかもしれん。だが、逆に鈍くなっていることも自覚せよ。いいか、女には気をつけろ?
「私と仕事とどっちが大事なのっ!?」って、そのうち言いだすからな。その時に折れたら一生負けるぞ。かといってないがしろにしたら泣かれるわ拗ねられるわで大変だから、ちゃんとケアしてあげなさい。それが良き夫の務めだぞ。決して上から目線や暴力的な言葉遣いで言い聞かせるようなことはしてはいかんぞ。女は大事にしなさい。
・・・・・・あ~。なんの話をしていたんだっけか・・・?
ああ、とにかく昔の悪い友達に気をつけなさい。それから日曜日にはちゃんと教会の礼拝堂に行きなさい。わかったね?
るーちゃんも本当は良い子だから、お父さんとの約束、ちゃんとまもれるよね? ”
以上でございます。お兄様。」
全てを聞き終えた明けの明星は、再び死んだ魚の目をしていた。
「この世界のどこに教会の礼拝堂があんねん・・・。」
そう呟いた明けの明星だったが、嬉しい報告も一つあった。
「それでですね。ガブリエルお姉様の詳細については、お父様は何も教えては下さらなかったのですが、お父様は私に一つ、とても良い命令をなされました。
それは、復活のダメージが多いお兄様の補佐をするように申し付けられたのです。
ですから、これからは私、お兄様とずっと一緒ですっ!!」
そういって明けの明星の腕に抱きつくタヴァエルの柔らかすぎる胸の感触こそが明けの明星にとって今回唯一の福音であったと言える。(※福音とは、良い知らせ。いいことの意)
しかし、タヴァエル=貴き神という尊大な意味の名を冠された力天使は、明けの明星から見てせいぜい1億歳ほどしか生きていない少女の天使であり、明けの明星の妹であった。
そんな素性の彼女はラーマたちが暮らす異界「混沌と炎の国」の王に君臨していたのだった。
異界の王。それは世界の管理者を任された大神の事であった。
明けの明星の見立てでは、この世界は、いくつもの異界が同時に同じ場所に存在するのに、次元の壁に阻まれて決して交わることがない不思議な構造をした世界である。
そして重なり合う各世界には、全く別次元の空間からその世界を回すためのエネルギーが常に注ぎ込まれていて、そのエネルギーの余剰分が集まれば新たな異界が生まれる仕組みになっていたのだった。
しかも、その新たに生まれた異界を支配・管理する役目を与えられた「異界の王」と呼ばれる存在には、別の異界で大神に昇華するほどまでに成長した魂が「異界の王」として据えられることになっていた。
つまり、ヴァレリオが一介の騎士から魔王に昇華したように、一つの生命体が高位に昇華して魔神をも超える存在の神「異界の王」にまで成長する可能性がある世界の構造なのだった。
この重なり合う異界のシステムには意外なことに銀河の構造と多くの共通点があった、
銀河が爆発によって新たな銀河を産み出し永久に広がっていくのに似て、この世界は別次元から送られてくるエネルギーの過剰分で新たな世界「異界」が生み出されていくのだった。
また、いくつもの銀河には天使が監督役に据えられる部分と、新たな異界に新たな異界の王が監視役に当てられる構造まで銀河系とこの世界は似ていた。
タヴァエルは、かつて明けの明星が金星の守護者として太陽系の全てを監視させられていたように、「混沌と炎の国」と呼ばれる異界の王として、ラーマたちの世界を管理していたのだった。
・・・ただし、タヴァエルは任期制の臨時の管理者であり、真の管理者は大天使ガブリエルであった。
大天使ガブリエル。明けの明星の妹にして全ての女天使の長。大地母神であり冥界の王という側面を持つ絶大な力を持った天使であった。その威光はすさまじく、ガブリエルは全ての天使の中で最高位に位置する5大天使、4大天使として名が上げられるほど高位な天使として位置付けられていた。
明けの明星クラスの大天使が封禁された異界の管理は本来、彼女のような偉大な天使がするべきであり、決してタヴァエルのような幼い少女に任せて良い案件ではなかった。
ところがである。大天使ガブリエルはある時、明けの明星がいる異界「混沌と炎の国」の管理をやめて別次元に消え去ったという。しかも、その消息は不明。混沌と炎の国の管理を任された後任の天使たちでさえ、この異界の本来の管理者であるガブリエルとは任命された一度だけしかあったことがないのだという。大天使ガブリエルには徹底した秘密管理がなされているのだった。
明けの明星はそれを不審に思うのであった。そして同様にタヴァエルもガブリエルの不在を不思議に思っていた。
そしてこの度、ラーマの働きによって封禁を解かれてしまった明けの明星が現在起こしている行動について、タヴァエルが世界の創造主・自分たちの父親に報告をするために本来の世界に戻っていたので、明けの明星はタヴァエルが何か情報を掴んでこの異界に戻ってきたであろうと推測して、その情報の開示を催促したのであった。
だが、タヴァエルの返事は意外なものであった。
「そんなことよりもお兄様っ!!
今、天界では羊肉に杏ベースのチリソースを塗ったステーキが大流行していますのっ!!
私も食したのですけれど、これが美味しいのなんのってっ!!
なんでも人間で最高位のシェフが天国でお店を開いたことをきっかけに大流行したらしいのですが、本当に絶品なんですよぉ~っ!!」
「あ、もちろんお兄様にもお土産として真空パックで持ち帰っていますよ。あとでチンしてお召し上がりください。
ライ麦パンもご一緒にどうぞっ!!」
そう言ってタヴァエルが差し出すお土産袋を明けの明星は無表情で受け取る。普通はその表情から「今はそういうときじゃないだろう?」と言う事を察するのが常識である。
しかし、故郷に戻るという天使としての一大イベントを終えた幼いタヴァエルの興奮は冷めることが無かった。
「と・こ・ろ・で・・・。
実はお兄様には他にも素晴らしいお土産があるんですっ!!」
「それがこれっ!! 明けの明星お兄様の総受け本の5巻セットですっ!!」
タヴァエルは嬉しそうに薄い本を5冊広げて明けの明星に見せつけるのだった。その時、明けの明星は死んだ魚の目をしていたのだが、タヴァエルの目には映っていないらしい。生き生きと瞳を輝かせて明けの明星ご本人にその内容を解説するのだった・
「いえね? 私も最初はBLってどうなのよ? って思っていたんですのよ。実際、目にするまではっ!!
でも、最近死んで天国にやってきた神絵師が描くBL本が女天使の間で大流行しているっていうので、物は試しってことで先輩女天使のお姉さま方に勧められるままに一度読んでみたのですが・・・。」
「・・・これが、もうっ・・・最っ高なのですよっ!!」
「絵が美しいのは勿論の事、ストーリーがすごいんです。
地獄に落とされて無力化されたお兄様がミカエル様に調教されて、どんどんメス落ちして行って最後には女装緊縛に目覚めるほどなんですよっ!!
最初は ”やめろっ!! 俺はお兄ちゃんだぞっ!! ” って、健気な抵抗をしていたはずのお兄様がミカエル様を見ただけで切なくなっちゃって自分からおねだりし始める展開とか、神がかっていると思いませんかっ!?
もうね、この漫画家は神ですよっ!!」
興奮したタヴァエルの早口はさらに加速し、本の中身まで広げて説明を始めるのだった。
「ほら~。お兄様、メチャクチャ可愛くないですか? このシーンっ!!」
「ね? ね? ほら、どう重います~?
お兄様ったらぁ~~・・・。」
本の中身を見せられた明けの明星は、その中身を見て嬉しそうにしているタヴァエルに同調してやるのだった。
「おおっ!! ホンマやなぁッ!!
滅茶苦茶エロいやんけ、このシーンなんかっ!!
俺、全部丸出しやんけ~っ!!・・・・・」
だが、それが限界だった。
「・・・て、なるかボケーーーっ!!!」
明けの明星は怒りに身を任せてタヴァエルのお土産のBL本を引き裂いた。
なるよね~。
「どこのどなた様が、己がメス堕ちさせられるBL本を読んで興奮するんじゃっ!!
罰ゲームどころか、タチの悪すぎる嫌がらせやぞ、これっ!!」
「お、おおおお、おのれ、妹や無かったら今頃、引き裂いて殺しとるからな?
わかっとんのか、ボケ―――っ!!!」
はぁはぁと、肩で息をするほど怒り狂った明けの明星であったが、タヴァエルはそんな明けの明星に失望したかのように
「ああ・・・。お兄様って、まだそのレベルなのですね・・・。」と、憐れんだ瞳で呟くのだった。
「ワレ、何目線のセリフじゃっ!! それーーっ!!」
「ああ。いいのですわよ、お兄様。今は別に恥じることじゃありませんよ?
私も最初はそうでしたから・・・。
BL? 何それ? ありえな~いって感じでした。」
「でもね。ちゃんと読んでみてください。
開けますよ? 私と同じく新たなる世界の扉が・・・。」
そう言って明けの明星が引き裂いたBL本を魔法で再生させてから「もう、だめですよ?」と言わんばかりに優しく手渡す妹・タヴァエルになぜか敗北した気持ちになった明けの明星は涙をこらえて受け取るしかなかった。
「なんの世界の扉じゃ、それ・・・。
そんなもん、乙女だけが開いて喜ぶもんやろうが・・・。」
可愛い妹には勝てない悲しい兄の姿が、そこにはあった・・・。
しかし、流石にタヴァエルもいつまでも腐った乙女のままではなかった。
明るい表情を一変させて重要な話を始めるのだった。
「お兄様、楽しい会話はここまでです。早々にその大事そうに抱えておられるエロ本をしまってください。全く、いやらしいんだから・・・。
そんなことよりもお兄様には大切なお話があるのですから。
実は、お兄様には偉大なる我々の父上からご伝言があります。」
明けの明星はとっさに(こいつ、マジで折檻してやろうかな?)と、思ったが、そんなことはおくびにも出さずにタヴァエルの話に耳を傾けるのだった。
「偉大なる父上は仰いました。
” るーちゃんよ。最近、教会で見かけないな? 復活したならば、ちゃんと日曜日には礼拝堂に来なさい。
それから、異界で余の威光を知らしめんと思うるーちゃんの殊勝な心掛け、父は嬉しく思うぞ。だが、余計なことはするな。お父さんにはお父さんの考えがあってしている事なんだからね。子供が余計な口出しするんじゃありません。
それと、るーちゃん。お前の悪い友達が目覚めておるぞ。幼い魔神を寵愛しすぎて気が付いてはおらぬだろう?
お前がそれほど女に執着するとは珍しいが、それも成長なのかもしれん。だが、逆に鈍くなっていることも自覚せよ。いいか、女には気をつけろ?
「私と仕事とどっちが大事なのっ!?」って、そのうち言いだすからな。その時に折れたら一生負けるぞ。かといってないがしろにしたら泣かれるわ拗ねられるわで大変だから、ちゃんとケアしてあげなさい。それが良き夫の務めだぞ。決して上から目線や暴力的な言葉遣いで言い聞かせるようなことはしてはいかんぞ。女は大事にしなさい。
・・・・・・あ~。なんの話をしていたんだっけか・・・?
ああ、とにかく昔の悪い友達に気をつけなさい。それから日曜日にはちゃんと教会の礼拝堂に行きなさい。わかったね?
るーちゃんも本当は良い子だから、お父さんとの約束、ちゃんとまもれるよね? ”
以上でございます。お兄様。」
全てを聞き終えた明けの明星は、再び死んだ魚の目をしていた。
「この世界のどこに教会の礼拝堂があんねん・・・。」
そう呟いた明けの明星だったが、嬉しい報告も一つあった。
「それでですね。ガブリエルお姉様の詳細については、お父様は何も教えては下さらなかったのですが、お父様は私に一つ、とても良い命令をなされました。
それは、復活のダメージが多いお兄様の補佐をするように申し付けられたのです。
ですから、これからは私、お兄様とずっと一緒ですっ!!」
そういって明けの明星の腕に抱きつくタヴァエルの柔らかすぎる胸の感触こそが明けの明星にとって今回唯一の福音であったと言える。(※福音とは、良い知らせ。いいことの意)
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