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第2章 新国家「エデン」
第39話 ゴルゴダ
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「フェデリコよ。お前が何度死のうが、俺にお前を生き返らせることなんか造作もない事や。
それよりもお前は頭が切れる。戦争においてはかなりのもんや。
どうや? 今後は、ラーマに仕えてみる気はないか? お前みたいなイカれた男がラーマの戦力になれば、これほど心強いことはない。」
明けの明星様はそう言ってフェデリコを生かした理由を語りました。要するに勧誘です。
一度死んで黄泉の世界を見たフェデリコは自分の身に何が起こったのか理解するのにずいぶん手間がかかり、何度も自分の顔や切り裂いたはずの首を自分の手で確かめていましたが、やがてそれが明けの明星様の御威光だと察すると、冷静に戻り、その上で明けの明星様の御誘いを断ったのでした。
「お言葉を返すようですが、私にも騎士の誇りというものが御座いますっ!!
我が王はただ一人っ!! スパーダ国の王のみっ!!」
フェデリコがそう言うと、フェデリコの家臣達も「我が王はスパーダ国王のみなりっ!!」と声を上げて拒否するのでした。
・・・・・・よせばいいのに。
フェデリコもその家臣達もここまできて未だに明けの明星様の恐ろしさを理解されていないのです。勧誘したのに断られるなどと言う無礼を明けの明星様がお許しになるわけがないのに・・・。
私にできることはせめて被害が少なくなるようにと願うのみでした。
そしてやはり、明けの明星様は怒りに身を震わせておられました。
こうなった明けの明星様は誰にも留められないでしょう。
突然、夜空に向かって指を差して命令をするのでした。
「おいっ!! そこの貴様っ!!
全ての天体の王であるこの俺が侮辱されたというのに家臣の貴様が何故、粛清せんのじゃっ!!
星の盟約とかゴチャゴチャ言い訳しとらんでええから、かましたれっ!!
貴様の王が許すっ!!
スパーダ王を城ごと滅ぼしてしまえっ!!」
フェデリコも家臣達も誰もいない夜空を指差して何やら一人でわめく明けの明星様に首をかしげてみておられたのですが、やがてとてつもない爆音を立てて一つの流れ星がスパーダに向けて落下していくのを見て「あっ!!」と、声を上げると、スパーダ国のある方角の夜空が赤々と燃え盛るように輝くのを見届けたのでした。
「ああっ!? 我が国の方角の空が夜明け前だと言うのにあんなにも煌煌と!?」
フェデリコはそう言って自分の国の方角を見て呆然としたあとに肩を落として
「星を落としたというのか?
それでは、先程までの独り言はもしや星との会話だというのか?
馬鹿な・・・馬鹿な・・・そんな話は聞いたこともない。
明けの明星・・・一体どれほどの存在なのだ」
と、ブツブツと語るのでした。
そして明けの明星様は、絶望に沈むフェデリコに対して
「貴様らの王はもうおらんっ!!
これからはラーマがお前の王やっ!! ええなっ!!?」
口答えなど許さぬとばかりに明けの明星様はピシャリと釘をさすのでした。
そんな様子はさすがに気の毒に感じた私ですが、私にはフェデリコよりも大切な問題がございました。
「明けの明星様っ!! フェデリコは確かに優秀ですが、それ以上に私に尽くした者の事をお考え下さいませっ!!
御身のお力をもってすれば、ヴァレリオ男爵やフィリッポの命、復活させることも容易いのでは?」
私は一縷の望みをもって明けの明星様に尋ねましたが、明けの明星様は難色をお見せになられました。
「死んだ命は氷の地獄を支配する氷と泥の国の王の物であることは、死霊術使いのお前の良く知るところのはずや。
そしたら、そうポンポンと生き返らせるわけにはいかんのや。
諦めろ。」
明けの明星様は冷たい目線を私に向けてそう仰ったのです。
ヴァレリオは生き返らせない。それがこの世の道理だと言いたいのでしょう。それは正論です。覆しようがないこの世界の掟。ならば、これまでの事。
(死んでいった家臣達との約束である和平の約束を叶えた今、私にやるべきことなど何もない。)
そう決意した私は、腰の短剣を抜き取るとフェデリコに習って首を切ろうといたしましたが、その手が首を切ることはありませんでした。
動かなかったのです、いえ、動かせなかったのです。私の手は私の意思で1ミリたりとも動させずただ短剣を首に持って行こうとした姿勢のまま固まってしまったのでした。
「アホたれ。死ねる思うなよ。俺がお前を死なせるわけないやろ。」
私は泣いて願いました。
「死なせてください」と。
ポロポロとこぼれ落ちる涙を明けの明星様はじっと見ておられましたが、そのうちに鬱陶しくなられたのか、「ああっ!! もう、ウザいんじゃああああっ!!」と、叫ぶと雷を呼び寄せヴァレリオ男爵の体を打ち貫きました。
「ラーマ。この奇跡、二度はないぞっ!?」
そういうと明けの明星様は全員に一度家に帰る様に命令されました。戦争終結の命令です。
「おのれらっ!! よう聞けっ!!
戦争は終わりやっ!! 全員、一旦家に帰れっ!!
そして、家族に会い、抱擁を交わした後に仲間の葬儀をしろっ!!
一月やるっ!! 一月経ったら再びこの地に戻って来いっ!! そしてラーマに服従しろっ!!」
「わかったなっ!?
わかったら、解散じゃっ!! さっさといねっ!!
一刻たってもまだ兵士が残っとったら、反逆とみなして皆殺しにするぞっ!!」
「いねっ!! いなんか~いっ!!」
明けの明星様の声は我々魔族の魂の奥底をガツンと殴るような強制力があり、スパーダ軍もアンドレア様の残党軍もエデンの残党も蜘蛛の子を散らしたようにワラワラと一目散に退散を始めるのでした。その中にはフェデリコの姿もありました。あのフェデリコでさえも理性を失って逃げ出すほど、明けの明星様の一喝は恐ろしかったのです。
私はただ、その様子を唖然と見つめる以外御座いませんでした・・・・・・。
それから1月がたちました・・・。
この度の戦の敗残兵たちの口から明けの明星様のことが各国に知らされることになったのです。
私たちの国エデンには恐ろしい魔王がいて、どうやらその者が戦争を終わらせたらしい。そんなうわさが流れたのです。そうなると各国の諜報部隊が動き、我が国の明けの明星様の事を調べ始めたのです。そうして、明けの明星様の存在がただの噂話ではなく、実在する恐ろしい存在であると各国が認めるところとなったのです。
そうこうしているとスパーダに戻ったフェデリコが王の死を確認して、葬儀を済ませてエデンに戻ってきたのです。理由は勿論、帰順です。
フェデリコは国にかえって、スパーダの惨状を目にしたそうです。明けの明星様が落とした星は、一発でスパーダの王城を破壊せしめ、王はおろかあの夜に働いていた兵士を全て殺してしまったそうです。その惨状を目の当たりにしたフェデリコは血相を変えてことに臨みました。国に生き残っていた重臣たちを説得して王の葬式を済ませると明けの明星様の力の恐ろしさを伝えてエデンへ服従以外生き残る術が無い事を話したそうです。結果としてスパーダはただの一度の敗戦で私たちに帰順することとなったのです。
スパーダのそうした有様を見た各国は震えがったのでした。
「明けの明星と言う魔王がいるらしいぞ」
「異界の魔王らしいぞ。魔神様でも相手にならないほど強いらしい。」
「なんでも夜空の星を従えていて、スパーダの王城は星の一撃を食らって一夜にして滅んだそうだ。」
「あの戦争の時、服従しない国は亡ぼすと叫んだそうだぞ。」
今回の戦争に関与していなかった各国にまであっという間にその噂は流れました。
そして、噂通りにスパーダが臣従すると、各国の王は顔色を変えて続々と私のもとを訪れて臣下の礼を果たすのでした。
そうして戦争終結後、2カ月もするとエデンは15の魔族の国の全てを統一した国家にまで成長するのでした。
その後、明けの明星様は各国の王を呼び寄せて宣言をしました。
「これよりエデンに集結した国々は、我がエデンの一地方となる。各国は国を改めて州を名乗れ。
そうして全ての王族は解体。州の知事に任命する。」
「魔族同士、一致団結して魔族以外の国に対抗するんやっ!!」
各国はその言葉に従い、王族は知事となったのです。
私も暫くの間はその事務処理に追われました。各州にエデンの法律を守らせ、また税も決めて伝えなければいけなかったので、本当に大変でした。それこそ15あった国々の知事の顔と名前を覚えるだけでも大変だったのです。
それでも魔族同士が結託して助け合い支えあう世界が生まれたことは私にとっても嬉しい事でしたので、この度の忙しさは嬉しい悲鳴でもありました。
そうしてこの魔族統一国エデンを外敵から守るために一つの公国が作られたのです。公国は魔族以外の国と特に衝突がある折衝地域を切り取って作られました。そのため、公国と言ってもエデンの6分の一に相当する広さを持った超大国でした。人間や亜人の国がエデンを襲う前の防衛ラインとして作られたその公国は「ゴルゴダ」という名前を明けの明星様につけられました。なんでも「しゃれこうべ」を意味する言葉らしく、敵勢力と戦う公国に相応しい不吉な名前だったのです。
そうして、その公国の王にはヴァレリオが明けの明星様に指名されたのでした。
「ヴァレリオ。お前はこの度、ラーマを守るために奮闘した。その忠義に免じて公国の王に指名する。
エデンのための防衛ラインとして責務を果たせ。」
本来、ゴルゴダの地域を支配していた旧王族たちも明けの明星様の決定には逆らえず、誰も文句を言いませんでした。
指名されたヴァレリオは最初困惑していました。私の口から明けの明星様に取り消すようにお願いしてくださいと頼むほど、狼狽えていましたが、私はそれをピシャリと断ったのです。
「明けの明星様の決定をどうして私が止められるというのですか?
諦めてエデンの防衛をお願いします。」
「い、いえ・・。姫様。私等にそのような使命は荷が重すぎまする。
何卒、何卒。姫様の御口から明けの明星様にご進言いただきたく願い奉ります。」
そう言って頑なに断るヴァレリオでしたが、私はそれも拒否しました。そうしてこういったのです。
「ヴァレリオ男爵。いいえ。ヴァレリオ様。
御身はすでにゴルゴダの王です。
どうぞ、私にへりくだった態度などとらずに対等な姿勢で応じてくださいませ。」
私がそう言ってヴァレリオ様の手を取ってお願いすると、ヴァレリオ様は「は、ははは、はいっ!!」と、了承してくださったのです。
こうして世界に存在する魔族の国はたった二国だけになったのでした。
それよりもお前は頭が切れる。戦争においてはかなりのもんや。
どうや? 今後は、ラーマに仕えてみる気はないか? お前みたいなイカれた男がラーマの戦力になれば、これほど心強いことはない。」
明けの明星様はそう言ってフェデリコを生かした理由を語りました。要するに勧誘です。
一度死んで黄泉の世界を見たフェデリコは自分の身に何が起こったのか理解するのにずいぶん手間がかかり、何度も自分の顔や切り裂いたはずの首を自分の手で確かめていましたが、やがてそれが明けの明星様の御威光だと察すると、冷静に戻り、その上で明けの明星様の御誘いを断ったのでした。
「お言葉を返すようですが、私にも騎士の誇りというものが御座いますっ!!
我が王はただ一人っ!! スパーダ国の王のみっ!!」
フェデリコがそう言うと、フェデリコの家臣達も「我が王はスパーダ国王のみなりっ!!」と声を上げて拒否するのでした。
・・・・・・よせばいいのに。
フェデリコもその家臣達もここまできて未だに明けの明星様の恐ろしさを理解されていないのです。勧誘したのに断られるなどと言う無礼を明けの明星様がお許しになるわけがないのに・・・。
私にできることはせめて被害が少なくなるようにと願うのみでした。
そしてやはり、明けの明星様は怒りに身を震わせておられました。
こうなった明けの明星様は誰にも留められないでしょう。
突然、夜空に向かって指を差して命令をするのでした。
「おいっ!! そこの貴様っ!!
全ての天体の王であるこの俺が侮辱されたというのに家臣の貴様が何故、粛清せんのじゃっ!!
星の盟約とかゴチャゴチャ言い訳しとらんでええから、かましたれっ!!
貴様の王が許すっ!!
スパーダ王を城ごと滅ぼしてしまえっ!!」
フェデリコも家臣達も誰もいない夜空を指差して何やら一人でわめく明けの明星様に首をかしげてみておられたのですが、やがてとてつもない爆音を立てて一つの流れ星がスパーダに向けて落下していくのを見て「あっ!!」と、声を上げると、スパーダ国のある方角の夜空が赤々と燃え盛るように輝くのを見届けたのでした。
「ああっ!? 我が国の方角の空が夜明け前だと言うのにあんなにも煌煌と!?」
フェデリコはそう言って自分の国の方角を見て呆然としたあとに肩を落として
「星を落としたというのか?
それでは、先程までの独り言はもしや星との会話だというのか?
馬鹿な・・・馬鹿な・・・そんな話は聞いたこともない。
明けの明星・・・一体どれほどの存在なのだ」
と、ブツブツと語るのでした。
そして明けの明星様は、絶望に沈むフェデリコに対して
「貴様らの王はもうおらんっ!!
これからはラーマがお前の王やっ!! ええなっ!!?」
口答えなど許さぬとばかりに明けの明星様はピシャリと釘をさすのでした。
そんな様子はさすがに気の毒に感じた私ですが、私にはフェデリコよりも大切な問題がございました。
「明けの明星様っ!! フェデリコは確かに優秀ですが、それ以上に私に尽くした者の事をお考え下さいませっ!!
御身のお力をもってすれば、ヴァレリオ男爵やフィリッポの命、復活させることも容易いのでは?」
私は一縷の望みをもって明けの明星様に尋ねましたが、明けの明星様は難色をお見せになられました。
「死んだ命は氷の地獄を支配する氷と泥の国の王の物であることは、死霊術使いのお前の良く知るところのはずや。
そしたら、そうポンポンと生き返らせるわけにはいかんのや。
諦めろ。」
明けの明星様は冷たい目線を私に向けてそう仰ったのです。
ヴァレリオは生き返らせない。それがこの世の道理だと言いたいのでしょう。それは正論です。覆しようがないこの世界の掟。ならば、これまでの事。
(死んでいった家臣達との約束である和平の約束を叶えた今、私にやるべきことなど何もない。)
そう決意した私は、腰の短剣を抜き取るとフェデリコに習って首を切ろうといたしましたが、その手が首を切ることはありませんでした。
動かなかったのです、いえ、動かせなかったのです。私の手は私の意思で1ミリたりとも動させずただ短剣を首に持って行こうとした姿勢のまま固まってしまったのでした。
「アホたれ。死ねる思うなよ。俺がお前を死なせるわけないやろ。」
私は泣いて願いました。
「死なせてください」と。
ポロポロとこぼれ落ちる涙を明けの明星様はじっと見ておられましたが、そのうちに鬱陶しくなられたのか、「ああっ!! もう、ウザいんじゃああああっ!!」と、叫ぶと雷を呼び寄せヴァレリオ男爵の体を打ち貫きました。
「ラーマ。この奇跡、二度はないぞっ!?」
そういうと明けの明星様は全員に一度家に帰る様に命令されました。戦争終結の命令です。
「おのれらっ!! よう聞けっ!!
戦争は終わりやっ!! 全員、一旦家に帰れっ!!
そして、家族に会い、抱擁を交わした後に仲間の葬儀をしろっ!!
一月やるっ!! 一月経ったら再びこの地に戻って来いっ!! そしてラーマに服従しろっ!!」
「わかったなっ!?
わかったら、解散じゃっ!! さっさといねっ!!
一刻たってもまだ兵士が残っとったら、反逆とみなして皆殺しにするぞっ!!」
「いねっ!! いなんか~いっ!!」
明けの明星様の声は我々魔族の魂の奥底をガツンと殴るような強制力があり、スパーダ軍もアンドレア様の残党軍もエデンの残党も蜘蛛の子を散らしたようにワラワラと一目散に退散を始めるのでした。その中にはフェデリコの姿もありました。あのフェデリコでさえも理性を失って逃げ出すほど、明けの明星様の一喝は恐ろしかったのです。
私はただ、その様子を唖然と見つめる以外御座いませんでした・・・・・・。
それから1月がたちました・・・。
この度の戦の敗残兵たちの口から明けの明星様のことが各国に知らされることになったのです。
私たちの国エデンには恐ろしい魔王がいて、どうやらその者が戦争を終わらせたらしい。そんなうわさが流れたのです。そうなると各国の諜報部隊が動き、我が国の明けの明星様の事を調べ始めたのです。そうして、明けの明星様の存在がただの噂話ではなく、実在する恐ろしい存在であると各国が認めるところとなったのです。
そうこうしているとスパーダに戻ったフェデリコが王の死を確認して、葬儀を済ませてエデンに戻ってきたのです。理由は勿論、帰順です。
フェデリコは国にかえって、スパーダの惨状を目にしたそうです。明けの明星様が落とした星は、一発でスパーダの王城を破壊せしめ、王はおろかあの夜に働いていた兵士を全て殺してしまったそうです。その惨状を目の当たりにしたフェデリコは血相を変えてことに臨みました。国に生き残っていた重臣たちを説得して王の葬式を済ませると明けの明星様の力の恐ろしさを伝えてエデンへ服従以外生き残る術が無い事を話したそうです。結果としてスパーダはただの一度の敗戦で私たちに帰順することとなったのです。
スパーダのそうした有様を見た各国は震えがったのでした。
「明けの明星と言う魔王がいるらしいぞ」
「異界の魔王らしいぞ。魔神様でも相手にならないほど強いらしい。」
「なんでも夜空の星を従えていて、スパーダの王城は星の一撃を食らって一夜にして滅んだそうだ。」
「あの戦争の時、服従しない国は亡ぼすと叫んだそうだぞ。」
今回の戦争に関与していなかった各国にまであっという間にその噂は流れました。
そして、噂通りにスパーダが臣従すると、各国の王は顔色を変えて続々と私のもとを訪れて臣下の礼を果たすのでした。
そうして戦争終結後、2カ月もするとエデンは15の魔族の国の全てを統一した国家にまで成長するのでした。
その後、明けの明星様は各国の王を呼び寄せて宣言をしました。
「これよりエデンに集結した国々は、我がエデンの一地方となる。各国は国を改めて州を名乗れ。
そうして全ての王族は解体。州の知事に任命する。」
「魔族同士、一致団結して魔族以外の国に対抗するんやっ!!」
各国はその言葉に従い、王族は知事となったのです。
私も暫くの間はその事務処理に追われました。各州にエデンの法律を守らせ、また税も決めて伝えなければいけなかったので、本当に大変でした。それこそ15あった国々の知事の顔と名前を覚えるだけでも大変だったのです。
それでも魔族同士が結託して助け合い支えあう世界が生まれたことは私にとっても嬉しい事でしたので、この度の忙しさは嬉しい悲鳴でもありました。
そうしてこの魔族統一国エデンを外敵から守るために一つの公国が作られたのです。公国は魔族以外の国と特に衝突がある折衝地域を切り取って作られました。そのため、公国と言ってもエデンの6分の一に相当する広さを持った超大国でした。人間や亜人の国がエデンを襲う前の防衛ラインとして作られたその公国は「ゴルゴダ」という名前を明けの明星様につけられました。なんでも「しゃれこうべ」を意味する言葉らしく、敵勢力と戦う公国に相応しい不吉な名前だったのです。
そうして、その公国の王にはヴァレリオが明けの明星様に指名されたのでした。
「ヴァレリオ。お前はこの度、ラーマを守るために奮闘した。その忠義に免じて公国の王に指名する。
エデンのための防衛ラインとして責務を果たせ。」
本来、ゴルゴダの地域を支配していた旧王族たちも明けの明星様の決定には逆らえず、誰も文句を言いませんでした。
指名されたヴァレリオは最初困惑していました。私の口から明けの明星様に取り消すようにお願いしてくださいと頼むほど、狼狽えていましたが、私はそれをピシャリと断ったのです。
「明けの明星様の決定をどうして私が止められるというのですか?
諦めてエデンの防衛をお願いします。」
「い、いえ・・。姫様。私等にそのような使命は荷が重すぎまする。
何卒、何卒。姫様の御口から明けの明星様にご進言いただきたく願い奉ります。」
そう言って頑なに断るヴァレリオでしたが、私はそれも拒否しました。そうしてこういったのです。
「ヴァレリオ男爵。いいえ。ヴァレリオ様。
御身はすでにゴルゴダの王です。
どうぞ、私にへりくだった態度などとらずに対等な姿勢で応じてくださいませ。」
私がそう言ってヴァレリオ様の手を取ってお願いすると、ヴァレリオ様は「は、ははは、はいっ!!」と、了承してくださったのです。
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