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第2章 新国家「エデン」
第38話 姫様無双!!
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フェデリコは、言いました。自分たちが敗北しない限り和平はないと。そして、そのようなことは私達エデンには不可能な事でした。元より兵数はエデンが3千、スパーダが推定2万5千という8倍以上はあると見越されたスパーダ軍とエデンが戦って勝てる見込みはなかったのです。ヴァレリオ男爵達もそれは承知の上で敵に自分たちと戦うことのリスクをわからせるために戦うという、勝利を目的とした戦闘をしていたわけではなかったのです。
(私は敗北したのですね・・・)
(死んでいった皆、ごめんなさい。)
(結局、私には何もできませでした・・・皆さんの死を無駄にしてしまった私を許してください。)
(あとはせめて、ヴァレリオと一緒に死なせてください・・・)
そう思いながら、私は戦場に散らばる多くの遺体を見つめました。そして、自分もそうなるべきだと考えたのです。右手に短剣を握り首を切って死のうと思いました。
ですが、そこでフト気がついたのです。私のエデンにはもはやスパーダ軍と戦える兵力などありませんが、今の私には大変な数の兵士がいてくれることを。
そして、すべての責任を思い返せば、やはり明けの明星様に行き渡ります。ならば、その責任をとっていただこうではありませんかっ!!
私は立ち上がると明けの明星様に向かって叫びました。
「明けの明星様っ!! 御身は未だ私に対して果たさねばならない責務を果たしてはおられないっ!!
それでは私の夫よぶにはふさわしい男とは言い難いっ!!
男ならば、まず責任を果たしていただきましょうっ!!」
かなり挑発的に明けの明星様に向かって言葉を吐きました。それも指差しながら。
流石に明けの明星様も不機嫌な顔になられて言い返します
「アホタレっ!! 己と言う女は未だにわからんのかっ!!
俺はお前らみたいなちっこいもんの争いに関わらんっ!
それもわからんと俺を挑発するとは何事や!?
ちょっとアホみたいに乳がデカくて可愛いからって、調子にのっとったらぶち殺すぞ、ワレっ!!」
明けの明星様はそう言って私を脅しますが、完全な勝ち口が見えている今の私がこれに怯む道理はございません。
ですからはっきりを言い返しました。
「私は今、スパーダ軍との戦いに加担してくださいとは言っておりませぬ。
そうではなく、私に対して責務を全うしていただくためにも支払うものを支払っていただこうというのですっ!!」
そう言われて明けの明星様は愉快そうに笑って応えました。
「可可可可っ!! この期に及んで何を申すか?
責務やと? 支払いやと?
真の魔王であるこの俺に何かを要求するというのか?
アホのくせに傲慢で面白い女よっ!! 興味があるぞっ!!
何が欲しいっ!? 言うてみいっ!!」
私は答えます。
「御身は我が夫だと仰いましたが、それを主張するには果たすべき責務が抜けているというのですっ!!
御身は仰ったっ!! 結婚は一つの商売だとっ!! なれば、私の夫とお名乗り遊ばされるためには持参金が必要ですっ!! ですが御身はそれを未だお支払いしていいないっ!!
スパーダ国王もアンドレア様も大金をはずまれましたが、御身はまやかしでございました。これでは我が夫とは呼べません。
本来、この持参金は結婚の前に支払うもの。であるならば、私はまだ未婚であり、御身は夫ではありません。」
「御身が小物と笑う存在は大金を払ったというのに、御身は何もされていない。これほどの甲斐性なしがありましょうや?
さぁっ!! 御身が私を妻にするためにお支払う気があるや否やお聞かせくださりませっ!?」
私の話を腕組したまま最後まで聞いていた明けの明星様は首をかしげて「お前、アホな娘だとは思っていたが、そこまでとはな・・・。」と言って話を切り出されました。
「お前な。俺から大金せしめて、その金で和平締結のための賠償金にするつもりか?
ラーマよ・・・フェデリコの話をちゃんと聞いとったんかい?
今さら金でどうこうなる話やないぞ? 賠償金をせしめたスパーダは、今度は国土をよこせと要求のハードルを上げるだけや。
お前に必要なんは金やない。スパーダ軍を止める兵力や。」
明けの明星様は子供を諭すようにお話になるのですが、私はその説明を「そのお話、元より委細承知の上にて御座候っ!!」と一蹴します。
「御身が仰ったことと同じことをフェデリコも言いましたっ!!。
スパーダ軍を敗北に追いやらねば、和平はならぬとっ!!
ですが、私には既にスパーダ軍を圧倒する兵数を有しておりますっ!! 戦争は既に私が勝利していると言って差し支え御座いませんっ!!
御身にはそのための持参金を所望するのですっ!! さぁっ!! 支払う意思が有るや無しやっ!?
男ならばスパッとお答えくださりませっ!!」
私の言葉に明けの明星様もフェデリコも首をかしげて同じことを言いました。
「お前にそのような兵がどこにいる?
混乱して頭がおかしくなったのか?」 と。
そこで私は両手を広げて戦場を指し示し
「私の兵なら既にここに整列していますっ!
この愚かな戦争を終わらせる私の軍勢の姿を露にするためにも、御身には・・・・っ!!」
「持参金として魔力を提供していただきたく願い奉りますっ!!」
私の言葉を明けの明星様以外の者は理解できませんでした。・・・が、明けの明星様だけは私の真意をお見抜かれなされ「・・・あ?」と、拍子抜けのような声をお上げになった後に高笑いでお答えになられました。
「くくくく・・・あははははははっ!!
お前、お前なぁっ!?
あははははははっ!! 何ちゅう面白い女やっ! 何ちゅう面白い事を思いつくんやお前はっ!!」
明けの明星様は高笑いと共に私に歩み寄ると私の肩に手を置き、私の要求を叶えてくださいました。
「委細承知っ!! 好きなだけ俺の魔力を受け取るがいいっ!!
この戦っ!! お前の勝ちやっ!!」
信じがたいほど凶悪な魔力が私の体を覆いました。きっと、明けの明星様の魔力を私が体内で直接受け取ると私が即死してしまうからでしょう。
そうして、明けの明星様は私にだけ聞こえる声で小さく「さぁ、お前の魔法を使うがよい。俺が増幅してやろう。」と言ってくださったのです。
私にはもう迷うものなどございません。明けの明星様を信じて自分の魔法を使うのみです。
この戦場を埋め尽くす幾多の死者に対して、死霊術を・・・。
「氷の地獄を支配なされる氷と泥の国の王の下へとたどり着けぬ幾千万の怨霊、恨み、つらみの果てのオドよっ!!
我が身命を持って許可を成す。
我が国に横たわる死者の体を依り代に再び新たなる命を授けようっ!!
黄泉返りて我が命に従えっ!! 」
死霊術。それは死者の魂ではなく死者が残した無念。恨み。つらみのエネルギーを死者の肉体に宿して使役する闇魔法。その恨みは人や魔族に限らず生きとし生ける生命体全てが死ぬ瞬間に放つものを呼び寄せることができ、そしてその依り代となる遺体は、この戦場にはいくらでもあったのです。
「ああああっ!! き、貴様っ!!
なんいうことをっ!! 死者の肉体に辱めを与えて何とも思わぬのかっ!!』
戦場に広がるおびただしい数の屍の山がゆっくりと起き上がって私を保護するために集結していく様を見てフェデリコが怒りの声を上げます。当然です。死霊術は死者を冒涜する禁呪として魔族の中でも忌み嫌われていたからです。様々な魔法を習いましたが、私にはこれしか会得できなかったことを以前は恨みもしましたが、今は、これが運命だったのですねと納得も出来るのです。
やがて私を取り囲む死者の躯の数が増えていきます。それは魔族の遺体だけでなく、さまざまな動物の死体にも反映し、とてつもない数の軍勢になりました。
さすが魔王様です。優れた死霊術士でも個人では20名ほどの死者しか扱えぬというのに、すでに動物の遺体を合わせれば数千にも及ぶでしょう・・・。
しかも中には私も知らなかったこの地に眠る魔神と思しき遺体まで含まれていました。こんな存在すら明けの明星様は魔力によって使役することができてしまうようです。
これは私にとっても想像外の事で、山を砕いてその魔神の遺体が現れたときには呆気に取られて大粒の汗を流して怯えてしまったのですが、明けの明星様は魔神のことなど気にも留められないご様子でフェデリコに言うのでした。
「さぁっ! どうするフェデリコよっ!?
お前の軍勢は確かに多いが、ラーマの兵士と戦えば、死者も出ようっ!! そうすれば死者の遺体はラーマの兵と変わり果てる。
そうやってラーマの兵は増え続け、やがてお前の軍勢の全てが飲み込まれるぞっ!?
如何にせんっ!! 戦争継続か? 敗北を認めて敗戦者の賠償を支払う和平交渉をお前が進めるのかっ!?」
フェデリコには選択肢など残されておりませんでした。
だって、魔神の遺体すら使役する魔王様の魔力の大きさを見れば、フェデリコの軍勢全てが飲み込まれると言われても信じるしかないのですから・・・。戦えば、ただ滅ぼされるのではなく、敵の傀儡とされるのがわかっていて戦うわけがないのです。
「・・・ぐううううっ!! 負けだっ!!
我らの負けを認めますっ!!
エデン国女王、ラーマ・シュー様っ!! 和平条約の申し出をいたしますっ!!」
「その上は騎士の習いに従って我が命をもって家臣一同の罪をお許しいただきたく願い奉りいたしたく御座候っ!!」
フェデリコはそう言って唇をかみしめると、部下が腰に差した短剣を抜き取って自分の首をかっ切るのでした。
それが、フェデリコの将軍としての務め。敗戦の将が全ての責を負い自害することで家臣の罪が許されるように願う戦場の習いでした。
・・・ですが、明けの明星様は、そうやって死んだフェデリコを見てこう言いました。
「アホたれ。なにを勝手に死んどんねん。
ワレ殺すんも生かすんも俺の勝手じゃボケ。
寝言抜かしとらんとさっさと起きたれ、アホンダラ。」
明けの明星様がそう言って指先をパチリと擦り鳴らすと、天から雷撃が降り注ぎ、フェデリコを直撃したかと思うとフェデリコは蘇るのでした。明けの明星様はたった一瞬であっさりと再生させることができるお方だったのです。お父様が死にかけていた時に「俺の力やったら、たとえお前が冥府への道を歩み出した最中でも、何もなかったみたいに生き返らしたるわ。」と言っていた言葉をそれ以上の結果を持って証明して見せたのです。それがどれほどの大魔法かは、この場にいるもの全員が語るまでもない程、理解できていました。明けの明星様は私たち魔法使いの魔力を1000人分集結しても不可能であろうことを指先一つで可能にされたのでした。
その奇跡を目の当たりにして私たちは唖然とするばかりでした。
(私は敗北したのですね・・・)
(死んでいった皆、ごめんなさい。)
(結局、私には何もできませでした・・・皆さんの死を無駄にしてしまった私を許してください。)
(あとはせめて、ヴァレリオと一緒に死なせてください・・・)
そう思いながら、私は戦場に散らばる多くの遺体を見つめました。そして、自分もそうなるべきだと考えたのです。右手に短剣を握り首を切って死のうと思いました。
ですが、そこでフト気がついたのです。私のエデンにはもはやスパーダ軍と戦える兵力などありませんが、今の私には大変な数の兵士がいてくれることを。
そして、すべての責任を思い返せば、やはり明けの明星様に行き渡ります。ならば、その責任をとっていただこうではありませんかっ!!
私は立ち上がると明けの明星様に向かって叫びました。
「明けの明星様っ!! 御身は未だ私に対して果たさねばならない責務を果たしてはおられないっ!!
それでは私の夫よぶにはふさわしい男とは言い難いっ!!
男ならば、まず責任を果たしていただきましょうっ!!」
かなり挑発的に明けの明星様に向かって言葉を吐きました。それも指差しながら。
流石に明けの明星様も不機嫌な顔になられて言い返します
「アホタレっ!! 己と言う女は未だにわからんのかっ!!
俺はお前らみたいなちっこいもんの争いに関わらんっ!
それもわからんと俺を挑発するとは何事や!?
ちょっとアホみたいに乳がデカくて可愛いからって、調子にのっとったらぶち殺すぞ、ワレっ!!」
明けの明星様はそう言って私を脅しますが、完全な勝ち口が見えている今の私がこれに怯む道理はございません。
ですからはっきりを言い返しました。
「私は今、スパーダ軍との戦いに加担してくださいとは言っておりませぬ。
そうではなく、私に対して責務を全うしていただくためにも支払うものを支払っていただこうというのですっ!!」
そう言われて明けの明星様は愉快そうに笑って応えました。
「可可可可っ!! この期に及んで何を申すか?
責務やと? 支払いやと?
真の魔王であるこの俺に何かを要求するというのか?
アホのくせに傲慢で面白い女よっ!! 興味があるぞっ!!
何が欲しいっ!? 言うてみいっ!!」
私は答えます。
「御身は我が夫だと仰いましたが、それを主張するには果たすべき責務が抜けているというのですっ!!
御身は仰ったっ!! 結婚は一つの商売だとっ!! なれば、私の夫とお名乗り遊ばされるためには持参金が必要ですっ!! ですが御身はそれを未だお支払いしていいないっ!!
スパーダ国王もアンドレア様も大金をはずまれましたが、御身はまやかしでございました。これでは我が夫とは呼べません。
本来、この持参金は結婚の前に支払うもの。であるならば、私はまだ未婚であり、御身は夫ではありません。」
「御身が小物と笑う存在は大金を払ったというのに、御身は何もされていない。これほどの甲斐性なしがありましょうや?
さぁっ!! 御身が私を妻にするためにお支払う気があるや否やお聞かせくださりませっ!?」
私の話を腕組したまま最後まで聞いていた明けの明星様は首をかしげて「お前、アホな娘だとは思っていたが、そこまでとはな・・・。」と言って話を切り出されました。
「お前な。俺から大金せしめて、その金で和平締結のための賠償金にするつもりか?
ラーマよ・・・フェデリコの話をちゃんと聞いとったんかい?
今さら金でどうこうなる話やないぞ? 賠償金をせしめたスパーダは、今度は国土をよこせと要求のハードルを上げるだけや。
お前に必要なんは金やない。スパーダ軍を止める兵力や。」
明けの明星様は子供を諭すようにお話になるのですが、私はその説明を「そのお話、元より委細承知の上にて御座候っ!!」と一蹴します。
「御身が仰ったことと同じことをフェデリコも言いましたっ!!。
スパーダ軍を敗北に追いやらねば、和平はならぬとっ!!
ですが、私には既にスパーダ軍を圧倒する兵数を有しておりますっ!! 戦争は既に私が勝利していると言って差し支え御座いませんっ!!
御身にはそのための持参金を所望するのですっ!! さぁっ!! 支払う意思が有るや無しやっ!?
男ならばスパッとお答えくださりませっ!!」
私の言葉に明けの明星様もフェデリコも首をかしげて同じことを言いました。
「お前にそのような兵がどこにいる?
混乱して頭がおかしくなったのか?」 と。
そこで私は両手を広げて戦場を指し示し
「私の兵なら既にここに整列していますっ!
この愚かな戦争を終わらせる私の軍勢の姿を露にするためにも、御身には・・・・っ!!」
「持参金として魔力を提供していただきたく願い奉りますっ!!」
私の言葉を明けの明星様以外の者は理解できませんでした。・・・が、明けの明星様だけは私の真意をお見抜かれなされ「・・・あ?」と、拍子抜けのような声をお上げになった後に高笑いでお答えになられました。
「くくくく・・・あははははははっ!!
お前、お前なぁっ!?
あははははははっ!! 何ちゅう面白い女やっ! 何ちゅう面白い事を思いつくんやお前はっ!!」
明けの明星様は高笑いと共に私に歩み寄ると私の肩に手を置き、私の要求を叶えてくださいました。
「委細承知っ!! 好きなだけ俺の魔力を受け取るがいいっ!!
この戦っ!! お前の勝ちやっ!!」
信じがたいほど凶悪な魔力が私の体を覆いました。きっと、明けの明星様の魔力を私が体内で直接受け取ると私が即死してしまうからでしょう。
そうして、明けの明星様は私にだけ聞こえる声で小さく「さぁ、お前の魔法を使うがよい。俺が増幅してやろう。」と言ってくださったのです。
私にはもう迷うものなどございません。明けの明星様を信じて自分の魔法を使うのみです。
この戦場を埋め尽くす幾多の死者に対して、死霊術を・・・。
「氷の地獄を支配なされる氷と泥の国の王の下へとたどり着けぬ幾千万の怨霊、恨み、つらみの果てのオドよっ!!
我が身命を持って許可を成す。
我が国に横たわる死者の体を依り代に再び新たなる命を授けようっ!!
黄泉返りて我が命に従えっ!! 」
死霊術。それは死者の魂ではなく死者が残した無念。恨み。つらみのエネルギーを死者の肉体に宿して使役する闇魔法。その恨みは人や魔族に限らず生きとし生ける生命体全てが死ぬ瞬間に放つものを呼び寄せることができ、そしてその依り代となる遺体は、この戦場にはいくらでもあったのです。
「ああああっ!! き、貴様っ!!
なんいうことをっ!! 死者の肉体に辱めを与えて何とも思わぬのかっ!!』
戦場に広がるおびただしい数の屍の山がゆっくりと起き上がって私を保護するために集結していく様を見てフェデリコが怒りの声を上げます。当然です。死霊術は死者を冒涜する禁呪として魔族の中でも忌み嫌われていたからです。様々な魔法を習いましたが、私にはこれしか会得できなかったことを以前は恨みもしましたが、今は、これが運命だったのですねと納得も出来るのです。
やがて私を取り囲む死者の躯の数が増えていきます。それは魔族の遺体だけでなく、さまざまな動物の死体にも反映し、とてつもない数の軍勢になりました。
さすが魔王様です。優れた死霊術士でも個人では20名ほどの死者しか扱えぬというのに、すでに動物の遺体を合わせれば数千にも及ぶでしょう・・・。
しかも中には私も知らなかったこの地に眠る魔神と思しき遺体まで含まれていました。こんな存在すら明けの明星様は魔力によって使役することができてしまうようです。
これは私にとっても想像外の事で、山を砕いてその魔神の遺体が現れたときには呆気に取られて大粒の汗を流して怯えてしまったのですが、明けの明星様は魔神のことなど気にも留められないご様子でフェデリコに言うのでした。
「さぁっ! どうするフェデリコよっ!?
お前の軍勢は確かに多いが、ラーマの兵士と戦えば、死者も出ようっ!! そうすれば死者の遺体はラーマの兵と変わり果てる。
そうやってラーマの兵は増え続け、やがてお前の軍勢の全てが飲み込まれるぞっ!?
如何にせんっ!! 戦争継続か? 敗北を認めて敗戦者の賠償を支払う和平交渉をお前が進めるのかっ!?」
フェデリコには選択肢など残されておりませんでした。
だって、魔神の遺体すら使役する魔王様の魔力の大きさを見れば、フェデリコの軍勢全てが飲み込まれると言われても信じるしかないのですから・・・。戦えば、ただ滅ぼされるのではなく、敵の傀儡とされるのがわかっていて戦うわけがないのです。
「・・・ぐううううっ!! 負けだっ!!
我らの負けを認めますっ!!
エデン国女王、ラーマ・シュー様っ!! 和平条約の申し出をいたしますっ!!」
「その上は騎士の習いに従って我が命をもって家臣一同の罪をお許しいただきたく願い奉りいたしたく御座候っ!!」
フェデリコはそう言って唇をかみしめると、部下が腰に差した短剣を抜き取って自分の首をかっ切るのでした。
それが、フェデリコの将軍としての務め。敗戦の将が全ての責を負い自害することで家臣の罪が許されるように願う戦場の習いでした。
・・・ですが、明けの明星様は、そうやって死んだフェデリコを見てこう言いました。
「アホたれ。なにを勝手に死んどんねん。
ワレ殺すんも生かすんも俺の勝手じゃボケ。
寝言抜かしとらんとさっさと起きたれ、アホンダラ。」
明けの明星様がそう言って指先をパチリと擦り鳴らすと、天から雷撃が降り注ぎ、フェデリコを直撃したかと思うとフェデリコは蘇るのでした。明けの明星様はたった一瞬であっさりと再生させることができるお方だったのです。お父様が死にかけていた時に「俺の力やったら、たとえお前が冥府への道を歩み出した最中でも、何もなかったみたいに生き返らしたるわ。」と言っていた言葉をそれ以上の結果を持って証明して見せたのです。それがどれほどの大魔法かは、この場にいるもの全員が語るまでもない程、理解できていました。明けの明星様は私たち魔法使いの魔力を1000人分集結しても不可能であろうことを指先一つで可能にされたのでした。
その奇跡を目の当たりにして私たちは唖然とするばかりでした。
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