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最終章 龍と英雄の子
第七話
しおりを挟むヒルドス本拠地。そこは戦場からかなり離れた場所にあり、そこに第一王子であるドミットとその側付きであるキュロスがいた。
「クックック。アーハッハッハッハ!!」
「どうなされましたか?殿下」
「いやな。この戦争の結果あの愚弟は死に、その側付きだったミハナを俺の女にできると思ったら面白くてな」
あの女は第一王子である俺がいくら誘ってもあの愚弟を優先していた。あの愚弟の側にあんなにもいい女がいることがおかしいんだ。
そもそも、なぜ俺の護衛がこんなむさ苦しい男なのにあいつは女の側付きなのだ。
しかもあの愚弟、俺どころか父上も知らないところで迷宮に行って武器を手に入れていたらしいな。まったく気に入らん。
だが、その2つを俺が手に入れる。ミハナは俺なしでは生きていけなくなるほど犯し尽くし、武器も俺が使ってやるとしよう。あの愚弟には身分不相応だったのだ。
「確かに、それは面白そうですなぁ。ミハナがあの男の名前を言いながらドミット様に犯される姿はきっと楽しいでしょうな」
「そうだろそうだろ。アーハッハッハッハ!!」
「おもしろそうだね」
「ん?誰だ?」
声がした方を向くと、そこには顔立ちが整っている女がいた。
「ん?どうしたのだ?まだ夜伽の時間ではあるまい。待ちきれなくなったのか?」
「ンーー。待ちきれないというところは正解かな」
「そうかそうか。ではコッチに」
「殿下、その女から離れて下さい。その女、武器を持っております」
「なに!?」
よく見てみると、確かに剣が腰に下げてあった。
「貴様、何者だ!!」
「ボク?ボクは魔王だよ?」
「マオウ?そういう名なのか。珍しい名前もあったものだ」
「名前?違う違う。・・・魔国の王様だよ」
「殿下はお下がりください!!敵襲だ!!殿下をお守りしろ!!」
そう指示を出した瞬間、魔王に向かって矢が飛んできた。
「おっと、危ないなあ。そういえば強い弓使いがいるって聞いたなぁ。まあ、殺すんだけど」
「ふん。何を言っている。たった1人で本陣に突入してくるとは愚かだな。捕まえて貴様も性奴隷にしてくれる」
「…………………貴様“も”?」
「ああそうだ。街の中にいた魔族どもは女は性奴隷に、男はそいつを匿っていた女を目の前で犯し尽くした後に殺してやったわ。絶望に染まるあの瞬間…………………クックック。思い出しただけで笑いがこみ上げてくるわ!!」
そして目の前にいるこの魔王を捕まえて性奴隷に仕上げてしまえば、他の魔族どもも殲滅できるだろう。ククク。勇者どもより先に滅ぼしてくれるわ。
「……………そうか。数名の潜入員から連絡が取れないと思っていたら、そういうことなのか」
「そうだ。どうだ?怒ったのか?悔しいか?お前も顔はいいからな、同じようにしてやるよ」
そう。魔族の女にも顔がいい者たちがいる。そう言った者たちに“処刑されし者の業”を付けて反抗できなくさせ、そしてじわりじわりと抵抗を失わせていく。そして最終的には種族が違うから子を成すことのなく、回復速度が尋常ではないため次々と男を相手させることのできる雌ブタの完成っていうわけだ。まあ、この女は顔が気に入ったから俺のにするけどな。ははははは。
「…………別に」
「は?」
「彼らがどうなったのか知ることができた。それだけだ」
「き、貴様。自分の部下に対して愛着がないのか!!」
「ないと言ったら嘘だろうね」
「なら」
「でもさ、そうなるかもしれないっていうことがわかっていて行かせたんだ。いちいち感傷に浸っていられないよ」
な!?
「き、貴様!!それでも一国の王なのか!!」
「うん。誰がなんと言おうと今はボクが魔国の王だ。もちろん国民は大切だ。だけど1人の国民とその他の国民ならばボクは迷わずにその他の国民を取る。これは断言する」
「その1人がもし国の権力者だったらどうするのだ!!」
「見殺しにして新しい奴を取り立てる。ただそれだけだよ」
「な!?」
な、なんなのだこの女は。狂っている。
「今キミはボクが狂っているって思っているんでしょ?愚かだと思っているんでしょ?この価値観はボクがそう決めたものだ。だから他の人にも強制させる気は無い」
目の前の女、いや魔王は「でもね」と言葉を続ける。
「やっぱり部下が殺されたり嬲られたりするのは気分が悪いんだよ。そう言った感情は国を守る為には不要なものだ。だけど」
魔王が言葉を区切ると一瞬だけ姿がぶれた。その後すぐに目の前に真っ赤な何かが飛んできた。その何かに顔を向けると、それは人の顔のように見えた。しかも、見慣れた顔だった。
「仇が今の敵だというなら話は別だ」
飛んできた何かとは、先程まで弓を放っていたキレニアのそれだった。
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