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最終章 龍と英雄の子

第四話

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今日の天気は晴天。いつもなら清々しい天気だと思えるのだが今日は違う。今日は魔国に攻め入り魔族を根絶やしをしに向かっている。

「こんなことをしても、意味は全くないというのにな」
「どうかしましたか?殿下」

ふと後ろを振り向いたらミハナがいた。まあ、俺についてくる奴はこいつだけなんだがな。他の前線部隊の連中は一応王子である俺と同じ場所に居たくないからか先に陣地に行ってしまっている。

「いや、魔族を一方的に攻めようとしているこの行為に意味があるのかと思ってな」
「お言葉ですが魔族も我々人類を殺戮しております。攻め入られても文句を言えないと思います」
「それを言ってしまうと俺たちが魔族を一方的に殺しているのに殺されることに文句を言うの筋違いだろ」
「我々が魔族を根絶やしにすることは正しきことなのです。その為に神は使者を使わせたのです」
「使者、ね」

ふと頭の中を神からの使者と呼ばれていた者がよぎった。その使者を国に取り入れる為に女性を何人も差し出したのだという。そのせいでミハナをドミットに奪われるのだ。

「あの仮面の者が来てから余計に性奴隷が増えた気がしてな」
「はい・・・そうですね。その内数人しか人格を保っている者がいませんしね」

その中にミハナが入れられるのか・・・この侵攻が終わると同時にミハナは俺の側付きを辞めさせられるらしい。いっそ殺された方がいいのかもしれないが、ミハナが死ぬところを見たくないのも本音だ。

「それで、仮面の者はいつ参戦するんだ?姿が見えないんだが」

てっきり早々に使うものだと思ったのだが。

「使者でしたらある程度敵の体力を消耗させたら使うそうです。それと陛下たちは後方で見るだけみたいです」
「モラットとキレニアもか?」
「・・・はい」

モラットとキレニアはヒルドスの所持する聖弓を使用できる人間だ。他にも騎馬隊の隊長であるガレア、魔法を無詠唱で打つことのできる国家魔術師のキエラ、絶対に壊れることのない不壊の聖剣を所持するドミットの側付きであるキュロス。
 他にも手練れが何人もいるのだが、そういった者たちはドミットや父上の護衛にまわされる。本来ならミハナもそこにまわされる予定だったらしいが、まだ俺の側付きだからついて行くと譲らなかったらしい。それでも保身を優先している為前線に出るのは一般の兵だけになってしまう。明らかに火力不足だ。そのくせ失敗したらまた娼婦が増えることになってしまう。いつから俺たちの国は腐敗してしまったのだろう。

そのようなことを考えているとミハナが近くに寄って来た。

「殿下、髪にゴミが付いております」
「は?どこにだ?」

気にする必要はないと思ったが、せっかく指摘してくれたのだからと手で髪を払った。

「どうだ?取れたか?」
「いいえ。まだです」

いったいどこにゴミが付いているのだ?

「殿下、僭越ながら私がお取りしましょうか?」
「ああ、頼む」

自分ではよくわからないのでミハナにとってもらうことにした。そうしてミハナは俺に顔を近づけてきた。

「・・・・・失礼します」

そう聞こえると同時に俺の唇に柔らかいものが触れた。ミハナにキスをされたことに気付いたのはミハナが俺から離れて嬉しそうに自分の唇に手を当てているのを見たときだった。

「ミ、ミハナ?今、なにを」
「なにって、口付けですよ?」
「なっ!?」

どうやら、俺の勘違いではないらしい。まあ、それはともかくだ。なんでミハナが俺にキスを!?

「ミハナ、これはどういう」
「殿下」

ミハナが俺の口に指を当ててきた。

「説明はこの戦いで生き残ったらお教えいたします」
「い、いや。別に今言っても」
「ですので、2人とも生き残りましょう」
「!?」

どうやらミハナにはバレていたらしいな。俺がこの戦いでミハナと共に生き残るべきかどうかを。だから理由を作ったのだろう。この戦いで生き残ろうとする気持ちを作る為に。

「・・・わかった。この戦い、絶対に勝つぞ」
「はい!!殿下」

そう、決意したときだった。

「うわぁ!!!!」
「ギャァァァ!!!」
「た、助けてくれぇぇぇ!!」

前線基地に近いところにいた俺たちは前線部隊が襲われていた様子や悲鳴が確認できた。

「な、なにが起こっているんだ?」
「なにか来ます!!殿下は私の後ろに!!」

意識を集中させると、確かに前方から黒い何かが迫って来た。その影は俺たちの近くで足を止めた。その姿を見て俺たちは迷わず武器を構えた。

「ま、魔族!!」
「なぜこのような場所に!?まさか、今回の侵攻がバレていたのか!?」

その魔族からはなにやら危険な雰囲気を感じた。

「キミたちは・・・・・ボクが相手するまでもないな」

炎すら凍りそうな冷たい声でそう言った。

「貴様、何者だ」
「ボクかい?ボクはヒュプノス。魔王をやっている」
「な!!魔王だと!!」

戦うには最悪な相手がそこにいた。
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