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第三章 魔王城

第五話

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あのあと、早速ということでゴロージと手合わせすることになった。幹部3人は今から雑事があるということで見物人はヒュプノスだけだ。

「そんじゃ、早速始めますか」
「おい新入り、手加減は必要か?」
「はっ!!なめないでくれよ。そんなもの俺には必要な」
「あ!言ってなかったけど、ボクに剣を教えてくれたのはゴロージだよ」
「是非お願いします」

みっともないと思われようと加減してもらわないと俺は即死するかもしれない。なにせまだヒュプノスのお遊びにすら歯が立たないんだ、それに剣を教えたやつならかなり強いはずだからな。

だから、情けないとは言わせない!!

「んじゃ始めるぞ。今回は俺はこの剣しか使わない。だがお前は魔法でもなんでも使ってこい」

そういうとゴロージは腰に差していた剣を取り出した。

「意外と普通の片手剣なんだな。てっきり魔剣とまではいかなくても業物を使うと思っていたんだが」
「なにを言ってんだ。そんなもん使ったら訓練にならんだろ。お前は好きな武器を使え、結果は変わらないからな」

ほう。引きこもっていたくせにそのようなことを申すか。だったらいいだろう。

「その流儀に合わしてやる。覚悟しろ」
「さっきの刀でも使うのか?そりゃ面白そうだ」
「なにを寝ぼけたことを言ってんだ?こっちは合わしてやるって言ったんだ。ヒュプノス!!」
「はいはい。ボク、これでも魔王なんだけどな」

なにかブツブツ言っているヒュプノスから普通の刀を受け取った。

「・・・なめてんのか?そんな普通の刀で勝てると思っているのか?」
「まあ、引きこもって実力が落ちている奴にはこれで十分だろう」
「後悔するなよ」
「そっちこそ」
「後悔するのはキリサメの方だとボクは思うんだけどな・・・。まあいいか。そんじゃ始め」
「シッ!!」

始まると同時に俺は一気に距離を詰め、そして刀で斬り込む。が、その攻撃は空振りになった。

「なんだ?そんなものなのか?大口叩いた割には弱いな」
「そう言っていられるのも、今のうちだ!!」

一旦距離をとってからまた一気に距離を詰めて切り込む、これを何度も何度も繰り返した。タイミングを測れないように微妙に切り込むタイミングを早めたり遅くしたりしている。その甲斐あってから

「いてっ!!」

やっとのことで一撃入れることができた。まあ、かすり傷だが。そのまま何度も何度も繰り返すと少しずつ攻撃が当たるようになった。まあ、やはりかすり傷なのだが。だが、このままいけば押し通せる。

「よし、あとはこのまま」
「調子にのるなよ」

!?急にゴロージの雰囲気が変わった?

「俺が回避するだけで済ましてやろうと思ったが、やめだ。何か攻撃に変化をつけるかと思えばスピードだけ。かすり傷を俺につけたことは褒めてやるが、予定より早いが遊びはここまでだ。おまえに剣で戦うということを思い知らせてやる」
「は?そんなものとっくに知っている」

実際、俺が刀で修行した際に鉄の刀を使用していた時の方が多い。血を流す戦いも、流させる戦いも少なくなかった。

「斬られれば死ぬ、たとえどんな強者であっても。それが剣で戦うということだろ」
「それはあっている。だが、今貴様がやっている小手先だけの技が通じるのは、格下だけだ!!」
「な!?」

会話しながらも攻撃を繰り返していた俺の刀を素手で掴んできやがった。

「・・・あんた、本当に身体なまってんのか?これでそうならあんた化け物だぞ」
「決まっているだろ?部屋から出なかっただけであって、訓練は欠かしていない。だが、対人戦においてなまっているのは現実だ。その証拠にあんな攻撃をかわしきれなかった」
「強がりを」
「ううん。本当のことだよ。ゴロージが引きこもる前は魔法を使っていなかったとはいえボクの攻撃をいなしたり、回避していたからね」
「まじかよ」

かなりの速度で斬りに行ったはずだ。そして微量ながら血も出ている。だから反応できるはずがない攻撃をこいつは片手で止めやがった。手で止めたせいか若干血は出ているみたいだが、それでも実力に差があるのを嫌という程理解させられる。

「・・・気が変わった。あんたとの実力差がやっとわかった。ここからは訓練とはいえ手は抜けない。じゃないとあんたに攻撃を当てることができないからな」
「ふん。やっと理解したか。わかっているとは思うが、俺はまだ剣を振っていないからな」
「一応聞いておくけど、さっきの俺の攻撃の際中、何回カウンターを打てた?」
「剣を使わないなら5回、剣を使うなら10回以上だ」

はは!!まじかよ。まさかこういうやつがいるとはな。人間の国ならこうはいかなかったな。

「んじゃいくぞ。ここからは暴れさせてもらう」

そう言うと、俺はその時に持っていた刀を手放してヴェルディア・フライトを抜き、早速空間把握を使用した。

「そんじゃ、いくぜ」

早速眞城先生から貰った転移を試すことにした。それで一瞬で間を詰めて斬りかかった。

「うお!?」

流石に急のことだったからか避けきれなかったのかそこそこ手応えがあった。

「このままいくぞ!!」

距離を開けないで何度も何度も斬りかかる。避ける場所とカウンターを空間把握で察知して対応する。

「うおぉぉぉ!!!」

相手に攻撃する隙を与えないように何度も斬りかかる。ゴロージが前方の俺に注目している今こそ勝てる!!

「“転移”!!」
「なっ!?」

俺が転移を使うと、ゴロージは少し慌てた様子を見せた。そのまま俺はゴロージの背後に姿を現して刀を振り下ろ・・・・

「え?」

俺は、確かにゴロージの背後に転移した。しかし、1つ俺はミスを犯してしまった。

「う、うわーー!!!!」

ゴロージの背後ではあるが、そこは訓練場の天井近くに転移し、そのまま落下した。

気を失う前に見たものは、呆れた表情の2人だった。
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