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第三章 魔王城
第三話
しおりを挟む「なあヒュプノス」
「なんだいキリサメ」
「確かお前は3人目のところに向かうって言ってたよな」
「ちょっと違うかな。次に行くよとは言ったね」
「細かいことはいいんだよ。それよりも、ここに3人目の奴がいるんだよな」
「うん。この時間帯なら必ずここにいるはずだよ」
「そうか。俺の目が正しいならここって」
見渡す限りの魔物。入り口のところにある券売機。漂う料理の香り。そう。ここは
「うちの魔王城の誇る食堂だけどなにか?」
・・・やっぱりそうか。
「なんだ?3人目は大食いだったりするのか?あそこにいるでかいやつか?」
「ううん。あれはただのオーガジェネラルだよ。それよりもっと」
・・・なんか今サラッと大物がいた気がするんだが。気のせいか?
「なに頼む?」
「飯食いに来たのかよ!!」
「うん。ついでだし。グレイブも頼んでいいよ。今日はおごってあげるから」
「いえいえ。それに甘えるわけにはいきませんよ」
「なにー。ボクが奢った飯は食えないってか。このこのー」
「そうではありませんが・・・」
「いいから今日は奢らせろー」
「はあ、わかりました。ではお言葉に甘えさせていただきます」
「うむ。初めからそういえば良いのだよ」
・・・なんだこの上司が部下を連れて飲み屋に行って会計の時にする感じのやりとりは。しかもテンションが高いからかグレイブが若干ひいてるぞ。
「それで、キリサメはなににするの?」
「え?あ、ああ。お前らは決めたのか?というかどんなものがあるんだ?」
「うーんとね。ボクがカツ・ドゥーンで、グレイブが日替わりだって。あ、今日の日替わりはマーガニクだって。ちなみにボクのオススメはカツ・ドゥーンだよ」
・・・・・カツ・ドゥーンってカツ丼のことか?それとマーガニクってなんだ?マーガっていう生物の肉なのか?
「おお。お主らなにをしておるのだ?」
「ん?ああ、ムロムリじゃないか。いつも通りの格好だね」
「魔王様。これが恒例ですので。キリサメ殿も一度は見たほうがいいですよ」
「ふーん。どれどれ・・・・」
グレイブに言われて後ろを振り向くと、そこには色々な種族の幼児を肩や腕にぶら下げた鎧姿の変態のおっさんがいた。
「・・・なにしてんだ?変質者のおっさん」
「見ればわかるであろう。レディ達とランチに来たのだよ」
「・・・男もいるみたいだが?」
「ハハハ。我から見たら幼ければ全てレディなのだよ。どうだね?お主も一緒に」
「同じ道に進みたくないから遠慮します」
割とガチでそう言うと、ムロムリのところから一人俺の元に走って来て俺の服を摘んだ?
「何かようか?」
「いっしょ。あえよ」
・・・これは「一緒に食べよう」と言ったのか?まあ、普通なら何か思うところがあるのかもしれない。だが、俺は違う。たとえ泣いたとしてもはっきりと言うぞ!!
「わるいんだが、一緒には食わない・・・」
うるうる
・・・その目を向けるのはやめろ。
「あー。キリサメが子供を泣かした!!いけないんだー」
「キリサメ殿!!見損ないましたよ!!」
なんか楽しそうだなおい!!そしてグレイブ!!見損なわれるほど話していないだろうが!!というかなんで知恵の輪しか持っていないんだ。ルービックキューブはどこにやっ・・・ヒュプノスが持ってる六面揃ってる奴がそれじゃないよな。
「・・・悪いんだが先約がいる。また今度な」
「!!にへー。じぇってゃいだよー!!」
そう言うとムロムリの元に戻ってムロムリと一緒に席の方へと向かっていった。その際ムロムリのおっさんが「どうだ?幼子も良いものだろう」などとほざいていたような気がしたが、気のせいだろう。
「それで、キリサメはなににするの?」
「あん?どれ」
読めなくはない字ばかりだが、なんて読むのかわからない時もあるな。ん?これはわかるぞ。
「それじゃあこのサーンの塩焼き定食っていうやつで」
「うんわかった。それじゃあ押すね」
食券を持って3人でカウンターに移動した。なんか忘れている気がするが腹も減ってきたし丁度いいだろう。
「すみませーん!!注文よろ」
「はーい。今そちらにいきます!!」
するとかっぽう着をきた少女がこちらに来た。
「あ、そうそう。ついでだし3人目をそろそろ教えよっか」
忘れてた!!そのために来てたんだった!!
「それで、3人目ってのは何処にいるんだ?」
「ん?そこにいるじゃん」
ヒュプノスが指をさした方向に視線を向けると、先程の少女がいた。
「は?何言ってんだ?そんなわけが」
「ミーナ。こいつが新生クインテットの最後の幹部になるキリサメだよ」
「あ、そうだったんですね。どうりで見慣れない方だと思いました。私は炊事洗濯と魔王軍遊撃部隊隊長であり、クインテットの1人のミーナと申します。これからよろしくお願いしますね」
・・・マジでした。
「ああそうそう。キミ男の子だから間違いが起こらないために先に言っておくよ。彼女の種族はサキュバスだよ」
は?
「しかも部族長の娘」
はい?
「サキュバス?え?マジで?男を魅了するっていうあの?」
「うん。そうだよ」
まじか。結構可愛いのに、残念だ。・・・って顔真っ赤!!
「あ、そうそう。彼女の肩書きは『純情』種族の中では失敗作って呼ばれてて、サキュバスの特性の話を聞いただけでこんな感じに顔が真っ赤になるんだよ。ここに来たのもインキュバスのところの男と結婚するのが嫌だったかららしい」
・・・そういうことも、あるんだな。
「あ、え、あの、その、えっと、あの、その!!」
「あ、これ注文ね」
「は、はい。しばらくお待ちください!!」
このあと落ち着いたらしいミーナが注文した物を作ってきて、それを受け取った。
カツ・ドゥーンとは思ったとおりカツ丼(卵の色が紫色だったが、魔国の卵はそういう色らしい)であり、マーガニクとは骨付き肉。つまり漫画に出てくるような肉のことだった。
ちなみに、俺が頼んだサーンの塩焼きとはサンマの塩焼きのことだった。
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