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第三章 魔王城

第二話

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まさかのロリコン発言を聞いた俺は、軍服に着替えたヒュプノスに連れられて別の幹部がいるという場所にへと向かっていた。

ムロムリのおっさんとメルクとは別れた。なんでもムロムリのおっさんはポーカーの続きをしに戻り、メルクは自分の仕事に戻って行ったらしい。

・・・なんだこの行動の差は。

「それで、一体どこに向かっているんだ?」
「ん?地下の牢屋」
「・・・おい、そいつって軍法違反してぶちこまれたやつじゃないだろうな?」

たしか牢屋に送ったって言ってたし。

「え?・・・ああ。ごめん。説明が足りていなかったよ」テヘッ♪

頭をコツンって叩くな。それ気分によっては結構イラッと来るんだから。

「それで説明だけどね。さっき牢屋に送られたやつは最下層の牢屋に入れられているんだよ。でね。ここからが面白い話なんだけどね」
「なんだよ」

まさかもう1人軍法違反を犯しましたってか?

「なんとね。牢屋が心地いいって言って自室にしてるんだよね」

・・・・・・・・・。

正直「あっそうなんだ」ぐらいしか感想がなかった。一体どんなやつなんだ?なんかネクラな匂いがするんだが。

「え?くんくん。別に臭わないよ?」
「言葉の綾だ。あとナチュラルに俺の思ったことを読み取るな。しまいにゃ殺すぞ」
「勇者だけに?」
「・・・はぁ。バカになに言っても無駄か」
「なんだとぉぉ!!」

そんな感じにバカをしながら歩いていると、目的地に着いたらしい。だが、そこにいたのは思ってもいないやつだった。

「・・・なあ。本当にあいつなのか?」
「うん。そうだよ」
「いや、でもあれって」
「姿と趣味は関係ないと思います!!」

ビシッ!!と手を上げながらヒュプノスがそんなことを言っているが、あれってどうみても

「半龍人だよな」

そう。ゴツい鱗。鋭い爪。極め付けに背中に生えた大きな翼。どうみても半龍人だ。だが、俺の目がおかしいのか?さっきからそいつは

「~~♪これで完成っと。・・・ん?あ、魔王様。お戻りになられたのですか」
「うん。ただいま!!相変わらずそういうのばかりやってるね。飽きないの?」
「いえ!!楽しんでおります。次は10段に挑戦します!!」
「おっ!!トランプをまた新しいのを出すのかい?これで一体何箱目だい?」
「そうですね・・・多分30に近づくと思います」

この会話から分かるようにトランプタワーをやっておるのだ。よく見ると、牢屋の中にはその他にルービックキューブやジグゾーパズル、それにドミノなどがあった。

じ、地味なゲームしかない!!

だが、9段のトランプタワーをその目に見ると、自分ではできないなと思ったからか

「・・・スゲェ」

と自然と口からこぼしていた。そしてその言葉に過剰な反応をする者が1人。

「え?」

このアホではない。

「わ、わかってくれるかい!!」

こっちである。

「そうだよね。一見地味だと思われがちだけど、じゃあやってみろって言われてもすぐにはできないからね。そういう意味でかなり誇れるんだよ!!」
「まあ、確かにな。俺はできても4段が限界だからな。・・・9段とか初めて見た」
「そうでしょそうでしょ」

なんかものすごくご機嫌だな。それにしても見た感じだとものすごく高くなっている。それなのになんで倒れないんだ?バランスがいいからなのか?

「キリサメ。これがクインテットの1人で、特攻隊長の『猛攻のグレイブ』だよ!!あ、それと彼が魔王軍の新しい幹部になるキリサメだよ。挨拶してね」
「あ、そうだったんですか!!これは大変失礼しました。私はグレイブといいます。種族はエリゴスです。よろしくお願いします!!それと魔王様。背中叩かないでください。痛いですので」
「ああ。よろしく。それとヒュプノスもやめてやれ」

部下を、それも幹部なのに「これ」扱いとは、・・・なんとも不憫な。

「そういえば、キリサメ殿には肩書きとかはつけないのですか?1人だけ名前だけというのも変でしょう?」

あ!!余計なことを!!厨二っぽいからいらないと思ってたのに!!

「それもそうだね。うーん。なにかいいのはないか。・・・後で決めればいいや!!キリサメ、次に行くよ。グレイブ。時間的に丁度いいから着いてきて」
「はい。わかりました」

さっきから思っていたんだが。こんな性格良さそうな奴が特攻隊長とか務まるのか?

まあ、それは置いといて。次のやつで3人目か。どんなやつなのやら。





グレイブが片手で知恵の輪をしながらもう片方の手でルービックキューブを回しているのが見えたが、見なかったことにしておこう。
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