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第二章 裏切り
第九話
しおりを挟む迷宮から戻った俺に待っていたのは1つの現実と牢屋だった。
俺は眞城先生を殺したあと城に戻った。すると、それを門番に止められた。
「なんですか?これは。これじゃ中に入れないじゃないですか」
「失礼ですが。他の方々はどうしましたか?」
「・・・全員、殺されました思い出させないでください」
「なるほど、ちなみになにがあったのですか?」
門番に迷宮の中で起こったことを話した。
騎士の人たちに囮に使われたこと。
入り口に戻ったら騎士の人たちがどこからか現れた仮面に殺されていたこと。
それらを伝えると、眞城先生のことを話そうと(もちろん本当のことは言えないが)していた俺を手で制した。
「もう結構です。それ以上なにも言わないでください」
ん?なんか急に雰囲気が変わったな。・・・あ、そういうことか。なにをしようとしているのか大体わかったが、まあ、気づいていないフリでもした方がいいだろう。
「どうかしたんですか?なにか不自然な点でも?」
「ええ。正直おかしなところばかりですよ。なにせあなたと同行した騎士たちは平均レベル52。そんな彼らが死んだというのに、レベル1の筈のあなたが死んでいないということがおかしいんですよ」
いや、別におかしくないだろ?普通騎士の人たちが逃したと考えた方が自然な筈だ。この口振りだと、この門番は第二王女様の部下というところだろうな。・・・いや、この城だと王ちゃんたち以外はこれが普通だったな。
「い、いえ。騎士の皆さんが逃してくださって・・・」
「はいはい。騎士の方々が戦っているのを放っておいて1人で逃げたのですね」
「いえ。ですから」
「それともなんですか?あなたが不意打ちでもして彼らを殺したのですか?そうですよね。そうでないと彼らが死んだ理由が思いつきませんので」
なんかイライラするな。決めつけてんじゃねえよ。こっちの話もちゃんと聞けや。
「ぼ、僕が騎士の人たちを!!そ、そんな。なんで僕がそんなことをしなくちゃいけないんですか!!」
「レベルが一気に上がるからですよ。いくら貴方みたいな弱い人でも不意をつけば殺せるでしょう?そしてレベルを上げたのでしょう?」
いやいやいや、騎士の人たちがそんなに強いんならその弱い人が不意をつけるわけないだろ。仮についたとしても返り討ちにされるのがオチだ。
「それだけではありません。貴方には前国王夫妻殺害の嫌疑がかかっています」
・・・は?殺害?
「どういうことですか!?王様が死んだって!!」
「言葉の通りですよ。勇者の皆様が迷宮に行ったのを見送った後になかなか部屋から出てこないのが気になった王女様が部屋に確認に行ったのです。すると、そこには国王夫妻が死んでおられたそうなのです!!確か、最後に国王夫妻に会っていたのは貴方でしたよね?」
え?王ちゃんが死んだのか。はっ!!あのときの目はこういうことが起こると予感していたのか!!
「な、なんで決めつけるんですか!!僕は殺していません!!証拠もないでしょ!!」
・・・言った後に思ったことだが、さっきから俺“気の弱いキャラ”じゃなくて“負けフラグを構築しまくるキャラ”になってる気がする。こういうキャラが「証拠を出せ」と言うと、そのあとに出される言葉はきっと。
「なら、証拠を出しましょうか?」
ほらやっぱり!!そう思っていると、門番が俺の目の前に青い石を置いた。
「あの、これは?」
「これは“罪人の玉”という罪人を見破る石です。もし罪人が触るとその反応を起こします。そして、それを私の『鑑定』のスキルで見てその罪を調べることができます」
ふーん。これでね。へー。鑑定で。ほー。それは凄いね。
__________________________________
ナハトーシャ・ドミニク・レガーシャ(男)34歳
レベル 237 職業 世話係(ムーシャ・ド・シャルマータ・セフィロト)
魔力 2600
攻撃 450
防御 362
敏捷 238
スキル
刷り込み
捏造
闇魔法 レベル8
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__________________________________
ダンジョン石(青)
中級
ダンジョンの中ならどこにでも落ちている石。水の魔力が中に備わっている・・・・・と言われているが実質只の石。
かなりもろくなっており、力を入れれば壊れる。
__________________________________
まず、“鑑定”がないのに鑑定するの?ああ、“捏造”の方を使うのか。おお怖い。冤罪はこうやって作られるのか。まあ、今はのるしかないか。・・・絶対に黒になるだろうけど。
「えっと。石にさわればいいのですか?」
「ええ。そのまま少し力を入れ、もし砕ければ貴方は罪人となります」
まあ、今は好きにさせとくか。
そう思いつつ石に手で触れる。
「えっと。これで力を入れればいいのですか?」
「はい。そうですよ。砕けなければいいですね」
腹立つわぁ。あの迷宮の中にいた虫と同じくらい腹たつわぁ。というか王ちゃんと王妃様殺したのってどう考えてもその王女の手の者だろ。そんでその罪を俺に被してちゃんちゃんってか。
心の中で愚痴をこぼしながら力を入れた。すると分かってはいたが石が砕けた。
「・・・やはり貴方でしたか。おい!!警備の者を呼べ!!やはりこの出来損ないが犯人だ!!」
「「「はっ!!!」」」
「そ、そんな。僕は、僕は犯人なんかじゃない!!何かの間違いだ!!」
「それと、先ほど知ったことなのだが。この出来損ない、魔族とも繋がりがあったぞ!!あの魔族と同じ牢屋に繋げておけ!!」
「「「はっ!!!」」」
あの魔族?・・・まさかな。
こうして、俺は王ちゃんと王妃様が死んだという現実と牢屋に出迎えられて城へと入って行った。
__________________________________
「とまあ。こんな感じだ」
「ふぅん。キミも散々だったね」
やっぱりというか、牢屋に繋げられていた魔族はヒュプノスだった。牢屋に入れられて1日経った今話している理由は、単純に事情聴取させられたせいで2人が揃ったのが今になったからだ。
「お前に言われたくないな。城の中をフラフラしてて捕まったとか、魔王としてどうかと思うぞ。・・・ところで王ちゃんと王妃様は本当に死んだのか?」
事実だと思いたくはない。だが、ここはこういう世界なのだ。親しかった人も自分の知らないうちに死ぬのだ。だから、こういう疑問は早くに解決したほうがいい。
「・・・うん。僕が遊びに来たときにはフィスカロトはもう死んでたよ。ただ、ベルベットはまだ生きてたから回復は掛けたんだよ。でも、間に合わなかったんだよ。回復を掛けるのが遅すぎたんだよ。ボクが、ボクがもう少し早く部屋に行っていれば、どちらかは助けられたかもしれないのに」
珍しくヒュプノスが泣いている。やはり、親友の死というものは悲しいんだろうな。
「・・・ところで、誰が王ちゃんたちを殺したのか知らないか?」
「・・・知ってるよ。ベルベットが息をひきとる前にボクに教えてくれたから」
「やっぱりあの第二王女様か?」
今のところ王ちゃんが死ぬと一番特をするのはあいつだからな。なにせ王位継承権が一位なのだから。
「ううん。違うよ。ベルベットとフィスカロトを殺したやつの名前はね・・・・・」
その名前を聞いて、俺が初めに思ったことは『なんでそいつが?』だった。
まったく予想していなかった名前。それから導き出されることはただ一つ。
「・・・それが本当なら、異世界から呼ばれた俺たちの中に裏切り者がいる」
その答えが導かれたその瞬間。牢屋の扉が開かれた。
「貴様ら、とっとと出てこい。これからお前たちは勇者様たちの強さの糧となるのだ」
そういや昨日の聴取のときに今日処刑すると聞いたな。なんか急展開続きだが、大丈夫なのか?
・・・それはそうと、なんかこの兵士の声、どこかで聞いた覚えがあるんだが?
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次回、第二章最終回、その次から第三章に入ります。
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