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第二章 裏切り

第三話

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迷宮の中は思っていたよりも綺麗だった。というよりも広すぎる。まるでゲームのボスが待ち構えているような部屋だった。構成としては草原というところだろう。部屋の中央には大きな木があり、その下に一人の女の子がもう一人の女の子の膝の上で寝ている石像が置かれてあった。

「この石像の意味はなんだろうね?」
「うわ!!眞城先生。驚かさないでくださいよ」

いきなり背後から声を掛けられたら驚くじゃないか。

「マジョウ様、トウシマ様、この部屋には何もなさそうなので先に進みましょう。なんだか嫌な予感もしますので」
「わかりました。今行きます。遠島くん。行きましょ」
「はい。わかりました」

俺たちはそのまま進んだ。だが、石像のことが気になったため石像をよく観察してみると、そこには石板が置かれてあった。その石板にはなにやら文字が書いてあった。

[あれは・・・悪夢だった。どれだけ逃げても逃げきれず、行きと帰りで場所が違う。・・・・]

文字が途中で薄れていて読めなくなっている。だが、1つ疑問に思ったことがある。それは

「遠島くん。なにをしてるの?置いていかれるわよ」
「!?は、はい!!今行きます」

それは、この石板の文字は馴染みの深い日本語であったことだ。

つまり俺たち以外にも日本から召喚された者たちが存在する。

そして、おそらくそいつの立場は悪かったのだろう。

つまり、わかったことが一つ。

「なんか陰謀が始まったみたいだな」

その呟きは誰にも聞こえなかったと思うが、眞城先生が目だけを俺に向けた気がする。念の為に警戒しておこう。

・・・そういえばあの文字。どっかで見た覚えがあるんだけど、どこで見たんだっけか?

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迷宮内部

なんというか。思っていたよりかは普通っていう感じだな。てっきりグロテスクな模様が描かれていると思っていたのだが、ただ血がそこら中にベットリと付着しているだけか。まあ、(自称)屈強な騎士たちがいるのだから大丈夫だろう。

そう思っていると前方に何やら影が現れた。それは魔物であった。そこはまあ普通だ。だが、そのステータスがおかしかった。

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トランプ兵(スペード)
レベル 500 

魔力 30000
攻撃 1
防御 0
敏捷 1000000

スキル
ハイクイック
ダメージ固定化__________________________________

おかしすぎるだろ。これが雑魚だと?確かに攻撃力も防御力も紙同然だ。だが、敏捷と魔力がおかしい。レベルも500だと?高すぎるだろ。どう考えても俺らを殺す気だろう。しかも軽く十体はいるし。
姿も頭がスペードのマークになっているだけで他は人間の騎士と変わらねえな。武器は槍か。いかにもスピード特化だな。勝てるとしたら罠を張ることが必須だな。一体こかせるだけでもだいぶ変わってくるからな。

ここにはそれがわかっている奴がいないのか?

「クソッ!!当たらない!!何故なのだ!!」
「くっ!こちらの攻撃は当たらないのに向こうの虫けらのような攻撃ばかり当たる」
「グハッ!!よ、鎧を貫通しやがった。気をつけろ!!こいつら攻撃力はカスだが的確に攻撃してきやがる」
「ぐっ!!マジョウ様たちを死守せよ!!」

相手は人間じゃないんだから騎士道精神が効くわけないだろ。それと最後の奴。露骨に俺の名前を言わなかったな?二人しかいないんだから「たち」でくくらなくていいだろ。

「・・・・・仕方ないか」

そう呟いてそこらへんにあった石を拾い。そして騎士がトランプ兵に突きをくらわせようとした瞬間に合わせてトランプ兵の顔が通る位置に石を投げて牽制した。するとほんの少しだけ動きを止めたトランプ兵を騎士の剣が貫いた。
 するとどうだろう?やっとの事で一体倒した騎士様の完成だ。
・・・はあ。これをあと九回もするのか。

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「敵の気配。消えました」
「ハア、ハア、やっと終わった」
「み、見たか。これが俺たちの力だ」

あれから一時間半ほどたった。連続でやったら確実に調子にのるかもしれないからするわけにはいかなかった。ま、三体倒したところで撤退していったんだが。こいつら気づいていないのか?まあ、それはともかく。今から俺がするべきことは。

「す、凄い。あんな強そうな敵を倒すだなんて」
「あ、当たり前だ。あんな奴らただの雑魚に過ぎないからな。お前みたいな無能とは違うんだよ」
「そうそう。姫さまからの指示がなければとっくにおいていってるつうの」
「す、すみません………」

はあ。あんな敵を数匹倒すだけで息切れしている奴らがなんか言ってるな。というか俺への扱いを隠す余裕すらないらしいな。はあ、こんな奴らに陰謀を企てられているのか。

「あの、気を抜いているところ悪いのですが」
「ん?どうかされましたか?マジョウ殿」
「あちらから何かこちらに来ているようなのですが?」
「はい?」

何が来ているのか俺も気になったので眞城先生が指をさした方向を見てみた。そこにはハートの頭の兵士たちがこちらに向かっていた。

「た、退却ゥゥゥ!!」
「マジョウ様、こちらです!!」
「ちょっと待ってください!!まだ遠島くんが残っています!!彼も一緒に逃げないと」
「彼よりもあなたの方が我々には必要なのです!!わかってください!!」
「遠島くん。遠島くん!!」

兵士たちは先生の手を掴んで逃げていった。先生は俺に逃げるように言っていたが、都合がいいから聞こえないふりをしておこう。まあ、あの兵士達は俺に殿をつとめさせるらしいしな。

「先生!!また後で、何処かで合流しましょう!!僕は大丈夫ですから」

そう言うと先生は安心したのかこちらを向いたままだが、兵士達と逃げていった。

「ったく。屈強な兵士様達はどこに行ったんだか。ま、それよりも」

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トランプ兵(ハート)
レベル 500

魔力 30000
攻撃 600
防御 53800
敏捷 426
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今度は硬いやつか。めんどくさいなあ。

そう思いながらも、俺は刀を手にゆっくりと敵にむかって行った。
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