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第二章 変化、触発
第五話
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風が気持ちよく、ぽかぽかと太陽が気持ちいい。いつまでも眠っていたい。
「きーりーうーくん。目をあっけて♪」
………誰だよ。人が気持ちよく眠っているのにそれを邪魔するのは。
「はーやーく。目をあっけて」
うるさいなぁ。黙ってろよ。
「ちゅーーー」
「やめい」
「アイタ!?」
流石にイラッときたので目を開いて目の前にあった頭にチョップを繰り出す。
「あたたたた。いきなり何するの。こうふ・・・・・痛いじゃない!!」
目の前にいる少女が大声で叫ぶ。見たところ制服を着ている。この制服は、たしか俺が通っていた中学校の・・・・・。
「というかあんた誰?」
「ひどいなぁ。修行をしないで逃げ出したっておじいちゃんが怒ってたよって伝えに来たのに」
顔のところに靄がかかっているので誰かわからなかったが、中学のときにここまで俺に話しかけてきたのは芽衣を除くと1人しかいない。
「ああ、先輩か。・・・ってあれ?なんで中学の制服を着て?」
「なんでって、さっき授業が終わったばかりだからだよ。そのまま走ってきたんだから」
・・・ああ、そっか。たしか今日は2年生はマーク模試があったから遅くなったんだったな。俺も来年は受けることになるんだな・・・。
目の前で頬を膨らませている先輩の頬をつんつんと突きながらそんなことを考える。肌やわらけー。
「むーーー」
お、まだ膨らむのか。・・・っと、そろそろ遊ぶのはやめるか。頬を突いていた指を離してそのまま頭に手をのせて頭を撫でる。
「よーしよしよしよしよし」
「・・・私、犬じゃないんだけど?」
すみません。
__________________________________
「まったくもぉ、霧雨くんはなんでそんなに私をからかうかなぁ。このままだと私、霧雨くんのこと嫌いになっちゃうぞ?」
「アハハ。それは困りますねぇ」
はじめの頃は煩わしい先輩だと思っていた。だけど、芽衣や健斗たちが思っている汚い部分を聞ける俺にとって先輩は心の支えのようになっていた。他の人たちと違って先輩は考えていることを口にしているからか心の声が聞こえてこないのだ。
「ところでさあ、霧雨くんって好きな人いるの?」
「先輩以外嫌いですが?」
「そうじゃなくて、男と女としてっていう意味だよ」
「ああ、そっちですか」
うーん。先輩のことは好きだけど友達としてだしなぁ。そんなことを考えているとふと頭の中に一瞬だけ人影がよぎった。・・・一体誰の影だ?知っているような影ではあったが。
その人影について思い出そうと必死に記憶を探る。だが、知っているはずなのにまったく誰なのかわからなかった。
「アハハ。霧雨くんってば真面目だなぁ。今はそれでいいよ。でもね・・・・・君は、そう遠くない未来で選ばされることになる。殺すか、生かすかをね」
・・・いきなり先輩の雰囲気が変わった。この気配を俺は知っている。まったく、夢なら夢らしく夢を見せていればいいのに。
「人の夢の中に何の用だ?ロスル」
「・・・へえ、これが夢だと自覚できるんだ」
そういうと目の前の先輩の姿が消えてロスルに変わる。ちょうどいい、前回よくわからないことを言いやがったからそれを問いただそう。
「なあ、前回言っていたことだが・・・」
「悪いけどその件はあれ以上話す気は無いよ。そんなことをしたらネタバレになっちゃうじゃないか」
「・・・そうかよ。ならいったい何の用だ?」
「ミーナって言ったよね。君とベルルがいま行動を共にしているあのサキュバスは」
「・・・それがなんだ?」
「決断しろ。彼女に危機が迫ったなら助けるのか、それとも放っておくのか」
「・・・いきなりなんだ」
まだなにも起こっていないじゃないか。
「いいからはやく決断しろ」
「・・・助けるよ。ミーナにそう約束したからな」
約束は破らない。そうじゃないと俺は俺で無くなりそうだ。
「いい返事だ。そんな君にこちらからのアドバイスだ」
「なんだ」
「守りたいなら躊躇うな。判断が遅くなればなるほど悪化する」
「はあ、またふざけたことを言うのか。オマエなぁ「忘れるな。忘れたらそれで終わる」・・・」
いつになく、真面目だな。となるとこれはマジなやつか。
「・・・オマエがなにを知っているのか知らないが、このことは覚えていてやる。それでいいか」
「ああ。こちらはそれで構わない。・・・そろそろ時間だ。こちらは失礼するよ」
「あ、おい!!」
『キリサメさん。朝ですよ』
その言葉を聞くと、俺はその場から消えるのを感じた。
・・・・・そういえば、なんでロスルは先輩のことを知っていたんだ?
「きーりーうーくん。目をあっけて♪」
………誰だよ。人が気持ちよく眠っているのにそれを邪魔するのは。
「はーやーく。目をあっけて」
うるさいなぁ。黙ってろよ。
「ちゅーーー」
「やめい」
「アイタ!?」
流石にイラッときたので目を開いて目の前にあった頭にチョップを繰り出す。
「あたたたた。いきなり何するの。こうふ・・・・・痛いじゃない!!」
目の前にいる少女が大声で叫ぶ。見たところ制服を着ている。この制服は、たしか俺が通っていた中学校の・・・・・。
「というかあんた誰?」
「ひどいなぁ。修行をしないで逃げ出したっておじいちゃんが怒ってたよって伝えに来たのに」
顔のところに靄がかかっているので誰かわからなかったが、中学のときにここまで俺に話しかけてきたのは芽衣を除くと1人しかいない。
「ああ、先輩か。・・・ってあれ?なんで中学の制服を着て?」
「なんでって、さっき授業が終わったばかりだからだよ。そのまま走ってきたんだから」
・・・ああ、そっか。たしか今日は2年生はマーク模試があったから遅くなったんだったな。俺も来年は受けることになるんだな・・・。
目の前で頬を膨らませている先輩の頬をつんつんと突きながらそんなことを考える。肌やわらけー。
「むーーー」
お、まだ膨らむのか。・・・っと、そろそろ遊ぶのはやめるか。頬を突いていた指を離してそのまま頭に手をのせて頭を撫でる。
「よーしよしよしよしよし」
「・・・私、犬じゃないんだけど?」
すみません。
__________________________________
「まったくもぉ、霧雨くんはなんでそんなに私をからかうかなぁ。このままだと私、霧雨くんのこと嫌いになっちゃうぞ?」
「アハハ。それは困りますねぇ」
はじめの頃は煩わしい先輩だと思っていた。だけど、芽衣や健斗たちが思っている汚い部分を聞ける俺にとって先輩は心の支えのようになっていた。他の人たちと違って先輩は考えていることを口にしているからか心の声が聞こえてこないのだ。
「ところでさあ、霧雨くんって好きな人いるの?」
「先輩以外嫌いですが?」
「そうじゃなくて、男と女としてっていう意味だよ」
「ああ、そっちですか」
うーん。先輩のことは好きだけど友達としてだしなぁ。そんなことを考えているとふと頭の中に一瞬だけ人影がよぎった。・・・一体誰の影だ?知っているような影ではあったが。
その人影について思い出そうと必死に記憶を探る。だが、知っているはずなのにまったく誰なのかわからなかった。
「アハハ。霧雨くんってば真面目だなぁ。今はそれでいいよ。でもね・・・・・君は、そう遠くない未来で選ばされることになる。殺すか、生かすかをね」
・・・いきなり先輩の雰囲気が変わった。この気配を俺は知っている。まったく、夢なら夢らしく夢を見せていればいいのに。
「人の夢の中に何の用だ?ロスル」
「・・・へえ、これが夢だと自覚できるんだ」
そういうと目の前の先輩の姿が消えてロスルに変わる。ちょうどいい、前回よくわからないことを言いやがったからそれを問いただそう。
「なあ、前回言っていたことだが・・・」
「悪いけどその件はあれ以上話す気は無いよ。そんなことをしたらネタバレになっちゃうじゃないか」
「・・・そうかよ。ならいったい何の用だ?」
「ミーナって言ったよね。君とベルルがいま行動を共にしているあのサキュバスは」
「・・・それがなんだ?」
「決断しろ。彼女に危機が迫ったなら助けるのか、それとも放っておくのか」
「・・・いきなりなんだ」
まだなにも起こっていないじゃないか。
「いいからはやく決断しろ」
「・・・助けるよ。ミーナにそう約束したからな」
約束は破らない。そうじゃないと俺は俺で無くなりそうだ。
「いい返事だ。そんな君にこちらからのアドバイスだ」
「なんだ」
「守りたいなら躊躇うな。判断が遅くなればなるほど悪化する」
「はあ、またふざけたことを言うのか。オマエなぁ「忘れるな。忘れたらそれで終わる」・・・」
いつになく、真面目だな。となるとこれはマジなやつか。
「・・・オマエがなにを知っているのか知らないが、このことは覚えていてやる。それでいいか」
「ああ。こちらはそれで構わない。・・・そろそろ時間だ。こちらは失礼するよ」
「あ、おい!!」
『キリサメさん。朝ですよ』
その言葉を聞くと、俺はその場から消えるのを感じた。
・・・・・そういえば、なんでロスルは先輩のことを知っていたんだ?
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