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第二章 変化、触発
第六話
しおりを挟む初日からいろいろなことがあったミーナとベルルとの城下町の散策も最終日になった。
ロスルは初日の夜以降姿を現していない。
・・・魔国に来てしばらく経つが、いまだにアイツのことがつかめない。心の声も聞こえなければ自分を出そうともしない。
・・・やめよう。いまはアイツのことは忘れよう。それよりもいまは最後の休暇を楽しもう。そう思っていた。
「それで、今日はどこに行くんだ?」
「・・・・・」
「・・・ミーナ?」
「え?あ、はい!!今日は劇を見に行こうと思っています」
劇か、そういえば見たことがなかったな。さて、どんなものなのだろうか。楽しみであるわけだがミーナの表情がいつもより暗いのが気になる。
「わーい!!おでかけだー!!」
ベルルは今日も元気だ。そのせいかミーナの気の落ちようが目立つ。
『あんなのが魔王様と同じ魔王だなんて、認めない!!』
っ!?なんだ?いきなり聞こえてきた。これは、いまミーナが思っていることなのか?魔王?まあ何も言ってこないし気にしなくていい・・・・・・
『あのとき、俺がミーナに聞いていれば、こんなことには!!』
うぐっ!!こんどはなんだ!?これは、俺の声?なんでそんなものが聞こえてくるんだ?聞いておけば?まるで過去形だな。
「・・・なあ、ミーナ。ヒュプノス以外の魔王ってどんなのがいるんだ?」
「!?な、なぜそのようなことを聞かれるのですか?」
動揺してる?なにかあるのか?
「ふと気になったからだ。魔国が複数あるなら魔王も複数いておかしくないだろ。だったら他の魔王のことも知っておいたほうがいいと思ってな」
「・・・わかりました。ですが歩きながらでよろしいでしょうか?ベルルちゃんが退屈していますし」
「ああ、構わない」
ベルルが強請ってきたのでベルルを肩車して劇場に向かう。
「この大陸、人族がいうところの魔大陸には4つの魔国といくつかの小国が存在します。それらにそれぞれ国を治める魔王様が存在しています。ヒュプノス様が治めていらっしゃるこの国はイース。この大陸の東部に位置します」
ここってイースっていう名前だったのか。知らなかった。
「北部に位置するスノーを治めていらっしゃるのはゴブリンエンペラーのプガー様。戦闘はあまり得意ではありませんが籠城戦で負け無しを誇っています」
ゴブリンエンペラーか、ならその国は帝国っていうわけか。
「西部に位置するスウザを治めていらっしゃるのは龍人族のシェマ様です。賭け事になると負け無しということが特徴です」
グレイヴのときから思っていたが、龍人ってキャラが濃い連中なのか?
「最後に、南部を治めていらっしゃるクーガー様です。ある日突然魔国に現れて魔王になった方です。種族は不明ですが、なんでも触れたものを武器に変えられるそうです」
・・・よし、クーガーとかいうやつには会わないようにしよう。なんか色々とヤバイ気がするから。
「で、やっぱ小国にも魔王っているのか?」
「はい。なかでも有名な三大魔王であるオーガのメルピス様、虐殺人形のラザ様、そして・・・」
「そして、なんだ?」
「・・・そしてインキュバスのイジュン様です」
なーんか様子がおかしいな。流れ的にイジュンってやつが関係してそうだな。
「で、三代魔王ってなんだ?」
「三大魔王というのはですね、簡単に言いますと次の東西南北の魔王に任命されることが決まっている魔王様達のことなのです」
「なら4人じゃないのか?」
「いえ、ヒュプノス様はまだ任命されていらっしゃらないので3名だけであっています。『必要ない』とおっしゃられていました」
ま、アイツが死ぬ姿なんて想像できないけどな。というか魔王って指名制かよ。
「なら、どいつがどこの魔王から任命されているんだ?」
「プガー様がイジュン様を、シェマ様がメルピス様を、そしてクーガー様がラザ様を指名されております」
「なるほどな」
三大魔王について詳しく話を聞こうとしたが、それはすぐには無理そうだな。
「そこにいるやつ、出てこいよ」
「意外だな。バレるなんて思わなかったよ。って、気配消してないんだから当たり前か」
そう言いながら物陰からなにかが現れた。両手に持っているのは、銃か?
「だ、誰ですか!!」
「俺か?俺はギリアス。八騎将の1人だ」
・・・・なるほど、こうきたわけか。ギリアスとかいう女は八騎将という幹部の1人らしいな。
「まあ場所を移そうや。無関係の奴ら、巻き込みたくないだろ?」
・・・どうやら俺にとって初めての魔王のところの幹部戦になりそうだ。
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予定を変更し、今回で日常編は終わりです。次回からは戦闘編に入ります。
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