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最終章 龍と英雄の子
第十一話
しおりを挟む「生きて、いたんだな」
「まあな。にしてもあのとき斬られたあの感じ、痛かったぜぇ。まったく。恩を仇で返しやがってよ。なあ、霧雨!!」
「恩?お前達には恨みこそあれそんなものを感じた覚えはない」
「そう怒るな。同じ師の元で剣術を学んだ仲だろ?」
「本当にそう思っているのか?」
「けけけ。ちげぇねぇ」
仮面の正体はやはり刃堂 翔也だった。
翔也は俺と同時期に同じ剣術を学んだ同門生だ。あの事を俺と、被害者になったアイツの2人を除いた翔也を含めた3人が行い。その結果アイツが殺された。
それを聞いた俺は5人を1人残らず殺した。無論、ヴェルディア・フライトを使った。そのときの俺は「人を殺した」という感覚よりも「人の皮を被った化け物」を殺した感覚だった。そのためそれは俺の中では人殺しに含めないことにしていた。
だが、まさか生きていたとはな。
「流石にアレは死んだと思ったよ。だが俺は生きていた。そしてこの世界にやってきた。いやぁ楽しかったよ。夜のお世話と言って娼婦どもを連れてきたときはよかったよ。そのおかげで毎日毎日殺す人間に困らなかったからな」
「・・・・・」
「娼婦に関しても壊れたから殺したって言ってしまえば次が補充される。そしてそいつを急所にならないところに刃を突き立て、血を噴き出させ、ジワリジワリと死ぬ様を観察する。そしてまた補充する。その連続だ。例えバレても俺は使者だ。何をしても許される。いやぁ、異世界さまさまだよ」
「・・・・・」
「そうだ。オマエもうちに来いよ。同じ剣術を学んだ仲だ。紹介してやるよ。まあ、言葉が話せなくなる仮面はかけなくちゃならないが」
「・・・死ねよ」
これ以上聞く気は無いと行動で伝えるために目の前に転移し、切り込む。それを翔也はアッサリと避ける。
「おいおい。危ねえじゃねえか。また殺す気かよ」
「そう言ったんだが?」
「・・・そうかよ」
翔也の顔つきが険しくなる。こっからが本当の戦いだ。
「さっき俺に死ねって言ったよな。オマエが死ね」
そう言って短剣を構える。
「銃刀流“拳”」
銃刀流。正確にはじゅう刀流。始めの基礎となる部分は一緒だが、そこから先は自分の鍛錬によって自分の剣術を作り出す剣術。
翔也の銃刀流は刃物を銃弾のように消耗品として捉え、そして銃で撃つ様に刃物を撃ち出す剣術だ。
相手との距離があればあるほど強くなるというのが特徴だ。
撃たれた短剣をギリギリで回避する。仮面をつけていたときより速い。
「ほらほらほら!!ドンドンいくぞ“散弾”“散弾”“散弾!!」
また短剣を撃ってくる。その短剣は途中で砕ける。だが、これは失敗ではない。これが翔也の散弾銃の弾だ。砕けた破片が俺に襲いかかってくる。
「“転移”!!」
それを転移で躱す。だが
「突きつけられる恐怖をいま“マグネティア”!!そして銃刀流“追尾”!!」
一瞬だけ違和感を感じた。その正体はすぐにわかることになった。
「なっ!!」
先程躱した破片がUターンしてこちらに迫ってくる。
「“転移”」
「“追尾”」
別の場所に転移したが既に破片が迫ってきている。そして、遂に躱しきれなくなり
「っ!!」
俺を撃ち抜く。
「な、なにが起こった」
「あん?なにが起こったか?それはな・・・・・って敵にわざわざ教えるかよタコ!!“散弾”そして機関”そして“追尾”!!」
またしても撃ってくる。先程と同じ破片だけでなく短剣を機関銃の如く撃ってくる。それを避けながら必死に考える。
先程の『マグネティア』というのは状況から考えるに相手を磁石にするというものだろう。それなら破片がUターンしてきたことにも説明がつく。
しかし、そう考えるとおかしいことがある。
あのとき俺はアイツを挟んで向こう側にいた。あの距離でも反応する磁石が近くにあるのに翔也の持つ他の短剣やナイフが反応しなかった。
仮に収納系のスキルを持っていたにしても俺の刀が反応しないのはおかしい。
ということは磁石ではない。だったらほかになにかないか。クソッ!!ヒュプノスにあんな大見栄を張ったくせに、また負けんのかよ。また、負け・・・・・。
それがあったか。
急ブレーキをとって後ろを振り返り、そのまま破片に向かって走っていく。破片を躱しながら刀を振るう。すると目の前にはやはり糸があった。
やはり、翔也は糸で破片などを操っていた。
「なっ!!俺の“マグネティア”を破っただと!!」
「これで、トドメだ!!」
破片を躱したときの速度のまま翔也に接近し、そのまま刀を振り下ろす。これで決まる。そう思った。
だが、なにか嫌な予感がしたため急いで転移した。そして、その予感は気のせいでなかったことを知る。
そう。先程までおれがいた場所に破片や短剣が雨のように降っていたからだ。
翔也はこっちに顔を向けると確かにそう口にした。
「あらら。残念。仕留め損ねちゃったよ」
そのときの表情は悪人のする笑顔のそれだった。
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