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最終章 龍と英雄の子
第九話
しおりを挟む「さあ、次はキミの番だよ」
「い、嫌だ!!まだ死にたくない!!おいキュロス!!早く起きろ!!」
なーんか、つまらな過ぎたな。聖剣を持っているって聞いたからどれだけ強いんだろうと思ったら、まさか自分の聖剣の能力を正確に把握していなかったとはね。
あの聖剣の能力は、剣で受けた敵の武器の耐久力を奪い、それを自分のものとする能力みたいだ。
事実、まだここで剣をそんなに使っていないのに既にボロボロになっているし、撃ち合うたびに聖剣の方の強度が増している気がした。
だったら話がはやい。空間ごと斬って仕舞えばいい。空間ごとなら触れないから斬ることができる。
そして聖剣ごとその持ち手を斬った。
あーあ。また聖剣を1本斬っちゃったよ。人間にとって貴重なものなのに。
「こ、殺さないでくれ!!そ、そうだ。俺たちと手を組まないか?そうすればこの世界を」
それ以上の言葉はいらなかった。というより声を聞きたくなかった。だから黙らせることにした。
「・・・・・自分で邪悪とか言ってた奴と手を組もうとするなよ。それに、ボクは自分の国にしか興味がない。世界征服?したら後が面倒くさいじゃないか」
そのボクの呟きを洗い流すように赤い雨がボクを濡らした。
「・・・さて、そっちは終わったか?ゴロージ」
「ハ!!一人も逃さず皆殺しにいたしました」
本拠地の外からゴロージがやって来た。全身血で染まっている。どうやら本当に終わったみたいだ。
「それで?グレイヴは死んでいないよね?」
「はい。少し本気を出さなければ危なかったみたいですが撃退したようです」
「そうかい。それはよかったよ。彼には死んでもらうわけにはいかないからね」
もしそうなると大変なことになってしまう。
「それにしても魔王様。よかったのですか?こんな騙すような真似をして」
「ああ。キリサメに嘘の配置を教えたことかい?別にいいよ」
ボクはこの戦いにおいてキリサメには嘘の情報を教えていた。それはミーナの部隊とグレイヴの部隊の配置を反対にしたことだ。そのためグレイヴたち特攻部隊の前にミーナたち遊撃部隊を配置していた。
「このようなことにどのような意味が?」
「理由かい?それなら2つあるよ。1つは敵は最前線の部隊は確実に捨て駒に使ってくる。そんな連中の中に飛び道具を使ってくる奴らはまずいない。それなら確実に飛び道具を使ってくる1つ後ろの部隊に当たらせる。仮にグレイヴたちをこっちにぶつけていたら流石に無傷では済まないからね」
死者は出ないだろうが被害は出てくる。そうなると救護班のいるところまで下がらせる必要ができ、それに人員を割いてしまう。
「そうですか。それならもう1つの理由は?」
「それはね。・・・今からすることをキリサメはまだ見ないほうがいいからだよ。もし見てしまったら、もう彼は引き返せなくなる」
もし見てしまったら、彼の中にまだ残っている人としてのものが失われてしまうだろう。それで我を失ってしまったら彼を、いや彼らを止めるためにボクは彼らを殺さなければならなくなる。まだそのときではない。
「ですがもしあの仮面がキリサメの前に現れなければいったい」
「え?なにを言ってるの?仮面は確実にキリサメの前に現れるよ」
「なにを根拠に」
「多分だけど、キリサメがあの仮面を憎んでいるように仮面もキリサメ憎んでいると思うからさ」
「そのような理由で現れますかね?」
「ゴロージ。知っておいたほうがいいよ。恋と憎しみは、理屈じゃないんだよ」
そういうと、ゴロージたちを転移で魔国へと帰し、ボクはボロボロになった剣を捨て、別の剣を取り出すとヒルドスの王都へと移動を始めた。
キリサメへの心配?そんなのはしない。もし死んでいたらそれまででしょ?
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