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最終章 龍と英雄の子
第八話
しおりを挟むまったく。敵が自陣にいるというのに危機感がない奴らだ。ボクの話なんか無視して攻撃をしてくればいいのに。ボクが話を始めた途端攻撃の手を緩めてきた。
まあどれだけ強い武器であっても当たらなければ意味がない。攻撃が緩んだなら避けながらでも躱せるわけだしね。それはこちら側としてはありがたいことだよ。でも
「それで隙を作ったら意味がないよね」
戦場では一瞬の油断で命を落としてしまう。瞬きしている間に魔法や矢が飛んでこないともかぎらないのだ。そんな中で油断していたらそりゃあ
「………………こうなるよね」
取り敢えず厄介そうな弓兵の首を1つ切り落とした。すると先程まではかろうじてあった統率が無くなった。
ある者たちは逃げようとした。
ある者たちはヤケクソに攻撃をしてくる。
ある者たちは泣いて命乞いをしている。
正直反吐が出そうだ。
「貴様!!いい加減にしろ!!」
「黙ってろよ」
グシャッ
そんな音が聞こえてくる。まあ、それをやったのはボクなんだけどね。
あーあ。魔法は使わないでおこうって思ってたのにな。
「この。魔族の分際で我等が神に逆らおうというのか!!我等が信仰こそが正しいのだ!!」
「そうだ!!貴様ら魔族は存在自体が穢れているのだ!!我等はそれを粛清するのだ!!」
「今ならまだ間に合う。その身をドミット様に差し出せ!!さすれば浄化されるだろう」
なんか煩いな。女を抱くことにしか頭がないのか。こいつらの神とやらもこんなのが信徒とは思っていなかっただろうな。
「さあ!!今すぐに降伏を「煩いって言ってるだろ」
グシャッ
またしても、血溜まりと肉塊が出来上がる。ボクは肉屋じゃないんだけどなぁ。
「い、いったいさっきからなにが起こっているんだ?」
「なにって、報復だよ。キミも望んでいたじゃないか。ボクを怒らせたかったんでしょ?それで冷静でなくなった時に畳み掛ける予定だったんでしょ?ほら。お望み通りボクは怒ってあげたよ。攻撃してきなよ」
「こ、こんなはずでは」
「攻撃してこいよ。………………攻撃しろって言ってんだろ!!」
怒鳴り声を上げながら思いっきり剣を振る。それだけで人間は死ぬ。まったく。こんなものでイキがるんじゃねぇよ。
ゆっくりと王子とやらの下に歩いて行く。そのときに魔法を無詠唱で撃ってきそうな奴がいたから先程からしている空気圧縮で潰しておく。そういえば敵の危険人物の中に無詠唱ができる魔術師がいたっけ?…………こんなものかよ。
「で?なに?ボクの部下をオモチャにしたって?じゃあボクも君たちをオモチャにしてもいいんだよね?」
「い、嫌だ」
「そう言ったボクの部下もオモチャにしたんでしょ?あ、そうそう。今外に逃げようとしている奴。いま出たら」
ギャァァァァァァ!!!!!
「死ぬよ?」
外にはボクが転移させたゴロージ達、最前線部隊がいる。逃げている奴らを追わない理由がそれだよ。
あーあ。弓兵は両方とも潰しちゃったし。国家魔術師は無詠唱ができるっていうだけだったし。散々だよ。・・・ん?なんか忘れているような。
「キサマァァァア!!!」
「おっと」
ああ、そういえばまだいたね。王子の側付きの聖剣を持っている奴が。聖剣を持っているんなら期待してもいいよね?
__________________________________
俺はドミット様の側付きであるキュロス。ドミット様より聖剣を与えられし者だ。俺は今までに王子が欲しいと言った女を手に入れ、そしてそのおこぼれに預かっていた。
たとえどれだけ多くの護衛がいたとしても、この聖剣とその使い手である俺の前ではすべてが雑魚だ。
そして、今回の戦いでも活躍し、また新しく性奴隷になる女どもで遊ぶのだ。
・・・そのはずだった。
「この!!クソ!!」
「・・・・・」
なんなんだこの女は!!こっちがどれだけ切り掛かっても全部避けてイヤがる。しかもこちらにカウンターを仕掛けてきやがる。
だが、それももうすぐ終わる。なにせあの女の剣はこの聖剣と打ち合って、かなりボロボロのはずだ。そうなれば俺の勝ちは決まりだ。
「………ねえ」
「なんだ?」
やはり余裕がなくなってきたのか?剣を持つ力が弱ってきてるぞ。
「その剣、傷1つ付いていないんだけど、なんでだい?」
「そんなこと、貴様にいう必要などないわ!!」
「あ、なるほど。それがその聖剣の能力か」
チッ。やはり気付くか。この“聖剣 アヴロン”は絶対折れず、刃こぼれもしない剣だ。どれだけの剣豪であっても、剣をおられて仕舞えばどうしようもない。接戦の中で剣をおられて無抵抗に切られていく剣士を見るのは愉快だった。それが女であれば犯して性奴隷に仕立てる。
まったく愉快だよ。いまからこの女もその1人になるのだからな。
そんなことを考えているときだった。その女がそう口にしたのは。
「ふぅーん。じゃあもういいや」
は?もういい?なんの話だ?
「なにがもういいんだ?………そうか。諦めて奴隷になる気に」
「なる気はないね」
そう言いながら剣を振り下ろしてきた。見た感じ、これを剣で受けたら確実にへし折れる!!
「ハハハ。終わったな!!」
勝利を確信し、剣を女の剣に向かって振るう。そうすればこの女の剣は折れる。そして、俺の鎧には対魔法性の金属でできている。魔法は効かない。これで終わりだ!!
キンッ!!
そう金属が落ちるような音が聞こえた。勝った!!そう確信し、女の顔を見る。女は俺に背を向け、右手に持った剣を殿下に向けてまた歩き始めた。・・・ん?今なにか変なことを言わなかったか?
あれ?視界が段々と暗く・・・なって・・・・・・・。
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