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サタン@異世界編PART2
絶望するほど最凶の魔王級モンスター『ゼロ』
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「ああ。なんか、『ゼロ』って聞いたことあるな~って思って」
俺は手配書を受け取る。
写真が残っていないのか、文字だけになっている。
すると、手配書を見ていたユカがつらそうな顔をした。
「うむ。ゼロは我々が必ず討伐しなければならない宿敵だ。ユカの両親も奴に殺されてしまっている」
「マジか……」
俺は悪いことを聞いた気がしてバツが悪くなる。
「こいつだけは……!私が命を賭してでも必ず一矢報いてみせる……!こんなのがいたら、民も安心して暮らせない」
「そんなにヤバい奴なのか。懸賞金も異常だし」
「うむ。そうだね。ヤバさで言ったらこの金額でも安いくらいさ。前に帝国騎士団とバッドボブ海賊団で秘密裏に討伐作戦を行ったんだが、結果は悲惨だった」
「あ!それか!デューが言ってたわ」
「部隊は8割が壊滅。成果は2人で連携して浅い斬撃を一撃与えられただけ。何か別に目的ができたみたいで消えていったけど、あのままやり合ってたら確実に全員死んでいた」
「そんなにかい。これ、写真無いけど?」
俺は手配書をピラピラさせながら聞く。
「ゼロの人間状態の見た目はコロコロ変わるから意味をなさない。だから写真は無いんだ」
「常に色んな人間に化けてるってことか」
「うむ。でも、滅多に無いが、戦う時には人間から魔王級モンスターに変化する。その時の姿が真の姿だと思う。ボクも一度見た」
「巨人とか?」
「いいや。単なる銀髪の少年だ。15~16歳くらいの普通の人間にしか見えない。だが、その魔力は圧倒的というほかない。普通の火魔法『ファイア』が100倍くらいの威力で撃たれる」
「そ、そんなの勝てないじゃん!」
カトリーナも驚きの声を上げる。
「うむ。呪術師がいなくても、奴になら跡形も無く消してもらえるよ」
「でも俺的には負けた感じで死ぬのはヤダなぁ」
「ならボクたちと一緒に……」
「いやいや!やらないよ!デューと同じこと言うな!」
「ふん!貴様の力など借りずとも、この私が……!!」
ユカはすごい形相でレイピアの持ち手を握りしめる。
「ユカ。君の気持ちは痛いほどわかる。ボクも幼い頃にモンスターに父を殺されているからね。……だが、我々は民のための騎士団だ。もしその時が来たら、私怨を捨て、冷静にね」
「は、はい……。すみません。ロクサス様もつらいのに」
「いや、ユカほどではないさ。だから、一緒に頑張ろう」
そう言うと、ロクサスはユカの肩に手を置いた。
「は、はい!」
「おーい、現代で上司から部下へのボディタッチはアウトですよー。キモいおっさんがやったらアウトなのにイケメン風ならやっても大丈夫なのおかしくないですかー。帝国労働組合さん、どうなんですかー」
俺は目の前でイチャつく奴らに対して、架空の労組に令和の理を問うた。
「セクハラって、相手がそう思った時点で成立するんですよね。ですから、まだ組合案件ではないかと」
突如青髪のモブ騎士が割り込んできた。
「組合員かい」
「はい!選挙管理委員です!」
「一番楽な役職じゃねーか!」
俺はしたり顔の青髪にツッコんだ。
「とにかく!俺の前で桃色のオーラ出すことは許さねー!やるなら帰ってやれ!!」
「貴様!誰がプラトニックラブだ!!」
「いや、言ってねーから!ってかさっきからお前の頭ん中どうなってんの!?」
ユカのあまりの不条理なツッコミにクラクラしてきた。
「じゃあ、依頼の件、よろしくね」
ロクサスはこちらに向き直って改めて笑顔を見せた。
「ふん。そっちこそ優秀な呪術師の紹介、忘れるなよ」
指差して念を押す。
「うむ。不死の辛さはボクにはわかりかねるが……。君はおどけているが、相当深刻な問題なんだろう」
「ふん。……うるせーよ」
「とはいえ、約束が果たされない場合は、ボクも騎士の仕事をする。……仮にボクが君を粉々にしてから捕まえて、再生する前に『次元牢』に幽閉したとしたら、不死のまま一生出られないからね。そこのところ、よく考えておいてくれ」
「マ、マジかよ……」
その状況を想像して、俺はちょっぴり寒気がした。
ーーーふと横を見ると、少し俯きながらカトリーナが足で小石を転がしている。
「……どうした?」
俺は思わず問いかける。
「サ、サタンはさ……。あたし達と一緒にいるの、楽しくない……?」
ーーー絞り出すような声。
「……え?いや。そりゃ……。まぁ……楽しくなくも……ない」
俺は何か疑問を持ってそうなカトリーナに向かって歯切れ悪く言った。
そりゃ、楽しくなければ一緒にはいない。
ただ、あまり長く付き合っていたくないのも事実だった。
(俺だって、ひとりのメンタル弱めの生物なんだよ……)
「だ、だったらさ!別に呪術師に会ったりとかしなくて良いんじゃない?ま、まだ世界で見てないとことかいっぱいあるし!」
「いや、まぁそうだけど、俺は……」
その俺の言葉をカトリーナは遮った。
「ほら!サタン行こう!ロクサスさん、ユカさん、またね!」
そう言って俺の手を取り走り出す。
「うむ!また会おう!魔王の芽の回収、よろしく頼む!!」
ロクサスは右手を上げる。
「ああ!今回は見逃してやる!次は貴様を牢獄へ叩き込んでやるからな!」
ユカも最後まで気合いが入っていた。
そして、俺たちはユカの蹴りで壁にめり込んでピクつく三下騎士を横目に地下の出口を目指して走っていった。
俺は手配書を受け取る。
写真が残っていないのか、文字だけになっている。
すると、手配書を見ていたユカがつらそうな顔をした。
「うむ。ゼロは我々が必ず討伐しなければならない宿敵だ。ユカの両親も奴に殺されてしまっている」
「マジか……」
俺は悪いことを聞いた気がしてバツが悪くなる。
「こいつだけは……!私が命を賭してでも必ず一矢報いてみせる……!こんなのがいたら、民も安心して暮らせない」
「そんなにヤバい奴なのか。懸賞金も異常だし」
「うむ。そうだね。ヤバさで言ったらこの金額でも安いくらいさ。前に帝国騎士団とバッドボブ海賊団で秘密裏に討伐作戦を行ったんだが、結果は悲惨だった」
「あ!それか!デューが言ってたわ」
「部隊は8割が壊滅。成果は2人で連携して浅い斬撃を一撃与えられただけ。何か別に目的ができたみたいで消えていったけど、あのままやり合ってたら確実に全員死んでいた」
「そんなにかい。これ、写真無いけど?」
俺は手配書をピラピラさせながら聞く。
「ゼロの人間状態の見た目はコロコロ変わるから意味をなさない。だから写真は無いんだ」
「常に色んな人間に化けてるってことか」
「うむ。でも、滅多に無いが、戦う時には人間から魔王級モンスターに変化する。その時の姿が真の姿だと思う。ボクも一度見た」
「巨人とか?」
「いいや。単なる銀髪の少年だ。15~16歳くらいの普通の人間にしか見えない。だが、その魔力は圧倒的というほかない。普通の火魔法『ファイア』が100倍くらいの威力で撃たれる」
「そ、そんなの勝てないじゃん!」
カトリーナも驚きの声を上げる。
「うむ。呪術師がいなくても、奴になら跡形も無く消してもらえるよ」
「でも俺的には負けた感じで死ぬのはヤダなぁ」
「ならボクたちと一緒に……」
「いやいや!やらないよ!デューと同じこと言うな!」
「ふん!貴様の力など借りずとも、この私が……!!」
ユカはすごい形相でレイピアの持ち手を握りしめる。
「ユカ。君の気持ちは痛いほどわかる。ボクも幼い頃にモンスターに父を殺されているからね。……だが、我々は民のための騎士団だ。もしその時が来たら、私怨を捨て、冷静にね」
「は、はい……。すみません。ロクサス様もつらいのに」
「いや、ユカほどではないさ。だから、一緒に頑張ろう」
そう言うと、ロクサスはユカの肩に手を置いた。
「は、はい!」
「おーい、現代で上司から部下へのボディタッチはアウトですよー。キモいおっさんがやったらアウトなのにイケメン風ならやっても大丈夫なのおかしくないですかー。帝国労働組合さん、どうなんですかー」
俺は目の前でイチャつく奴らに対して、架空の労組に令和の理を問うた。
「セクハラって、相手がそう思った時点で成立するんですよね。ですから、まだ組合案件ではないかと」
突如青髪のモブ騎士が割り込んできた。
「組合員かい」
「はい!選挙管理委員です!」
「一番楽な役職じゃねーか!」
俺はしたり顔の青髪にツッコんだ。
「とにかく!俺の前で桃色のオーラ出すことは許さねー!やるなら帰ってやれ!!」
「貴様!誰がプラトニックラブだ!!」
「いや、言ってねーから!ってかさっきからお前の頭ん中どうなってんの!?」
ユカのあまりの不条理なツッコミにクラクラしてきた。
「じゃあ、依頼の件、よろしくね」
ロクサスはこちらに向き直って改めて笑顔を見せた。
「ふん。そっちこそ優秀な呪術師の紹介、忘れるなよ」
指差して念を押す。
「うむ。不死の辛さはボクにはわかりかねるが……。君はおどけているが、相当深刻な問題なんだろう」
「ふん。……うるせーよ」
「とはいえ、約束が果たされない場合は、ボクも騎士の仕事をする。……仮にボクが君を粉々にしてから捕まえて、再生する前に『次元牢』に幽閉したとしたら、不死のまま一生出られないからね。そこのところ、よく考えておいてくれ」
「マ、マジかよ……」
その状況を想像して、俺はちょっぴり寒気がした。
ーーーふと横を見ると、少し俯きながらカトリーナが足で小石を転がしている。
「……どうした?」
俺は思わず問いかける。
「サ、サタンはさ……。あたし達と一緒にいるの、楽しくない……?」
ーーー絞り出すような声。
「……え?いや。そりゃ……。まぁ……楽しくなくも……ない」
俺は何か疑問を持ってそうなカトリーナに向かって歯切れ悪く言った。
そりゃ、楽しくなければ一緒にはいない。
ただ、あまり長く付き合っていたくないのも事実だった。
(俺だって、ひとりのメンタル弱めの生物なんだよ……)
「だ、だったらさ!別に呪術師に会ったりとかしなくて良いんじゃない?ま、まだ世界で見てないとことかいっぱいあるし!」
「いや、まぁそうだけど、俺は……」
その俺の言葉をカトリーナは遮った。
「ほら!サタン行こう!ロクサスさん、ユカさん、またね!」
そう言って俺の手を取り走り出す。
「うむ!また会おう!魔王の芽の回収、よろしく頼む!!」
ロクサスは右手を上げる。
「ああ!今回は見逃してやる!次は貴様を牢獄へ叩き込んでやるからな!」
ユカも最後まで気合いが入っていた。
そして、俺たちはユカの蹴りで壁にめり込んでピクつく三下騎士を横目に地下の出口を目指して走っていった。
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