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サタン@現実世界/カイ・グランデ編

パリ貴族の令嬢を護衛することになったチンピラ

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翌日。

俺は工場内のオーナー室へ呼ばれていた。

扉を開けると、そこにはあの日俺が銃撃した、"謎の生物"が立っていた。

「Yo♪カイ改め『ジョウチン』♪今日の『調子』はまた『意気消沈』?♪イェー」

金髪をなびかせるキレイな見た目に反して、いたずらっ子のような笑みを浮かべる謎の男が、歌いながらこちらに歩いてくる。

「うるせーよ!俺は情緒不安定キャラじゃねぇ!」

「ギャン泣きしといて、それは『笑止』」

「黙れよ!」

男はゲラゲラ笑った後、改めて俺に向き直った。

「あ、そうそうちょっとジョウチンにお願いがあってさ」

そう言うと、オーナー室のソファに座る女の方を見た。

歳は20代前半、服装から貴族階級の娘のようだ。

「ん?そいつは?」

「うん。彼女はレスター卿の娘で"オリヴィア"。訳あって俺が預かっている」

「レスター卿ってあの……」

大昔から続く貴族で、本流にあたる一族のはずだ。

確か最近、最大の領地から反乱に合ったとかなんとかだっけか……。

俺はなんとなく彼女がここにいる理由を察した。

「知ってるなら話が早い。そういうわけで、今彼女は追われる身にある。捕まれば最悪殺されてもおかしくない。だから、後よろ」

「……え?おい!ふざけんな!なんだ『後よろ』って!」

「お前の工場の仕事は一旦解く。そんで、この子の警護役に任命する。ジョージには俺から言っとくから、後よろ」

「な、なんだよそれ!おい!待て!」

すると、どうやったのか、あいつはすでにいなくなっていた。


「あ、あの……」

振り向くと、レスターの令嬢オリヴィアがこちらを伺っていた。

「あ?なんだよ?」

「い、いえ……」

彼女はそれ以上何も言わなかった。

にしても、どうすればいいのか、全くわからない。

警護っていっても誰から守るのか。

どうやって敵だと判断するのか。

考えれば考えるほど、いきなり厄介ごとを押し付けられた感じが否めないが、ひとまずジョージに相談してみよう。

そう決めた。

「おい、オリヴィア。行くぞ」

「え、え……。あ、はい!」

「ん?どうした?」

「い、いえ!なんでも!行きましょう」

俺が名を呼ぶと少し動揺したようだったが、とりあえず俺たちはジョージの所長室を目指した。




「ジョージ。いるかー」

雑に扉を開けると、ふんぞり返ってコーヒーを飲むジョージがいた。

「おいおい。ここァ神聖な所長室だぜ。デートに使う場所じゃねェ」

「こんなくせー部屋でデートする奴がいるか」

「く、臭くありません!!」

「あ、あの……」

オリヴィアが気まずそうに様子を伺う。

「なぁ、ジョージ。こいつなんだけどさ……」

「ん?ああ。聞いてるよ。警護するってんだろ。頑張れよ。工場内は自由に使っていい」

「いや、そういうことじゃなくて。そもそも意味わかんねーんだけど。誰から守るんだかもよくわかんねーし」

「そりゃその嬢ちゃんが知ってるんじゃねェのか?」

「……………」

オリヴィアは少し悲しそうに俯いた。

どうやらあまり話したくない話題らしい。

「寝るとことかどうすりゃいいんだ?」

「あー!ったく。指示待ち人間かてめーは!そんなん自分で考えろ!このクソ寒い工場に寝かして風邪引かすか、お前ん家に連れて帰るかの2択だろ!」

「いや、後者はさすがにまずいだろ!!」

「知るかァーーー!!出てけェーーー!!!」

ジョージはそう言うと俺たちを部屋から放り出した。

「な、なんなんだよあいつらは!!ちょっとくらい相談乗ってくれても良いじゃねぇか!!」

「あ、あの……。ご迷惑をおかけしてしまって……すみません……」

「い、いや。別に迷惑ってんじゃねーけどよ……。でもあんたも俺ん家じゃ嫌だろ……?仕方ねーからどっかの宿でも……」

「いえ……!カイ様さえよろしければ、お家へお邪魔させて頂けないでしょうか……。外の宿より安心して眠れます」

外の宿も見張られているほどの案件なのだろうか。

とりあえずオリヴィアは宿へは行きたくないようだった。

「でもマジで汚いから……。貴族のお嬢様が泊まって良いような家じゃねーんだわ」

「それでしたら、私がお掃除させて頂きますわ!泊めて頂くのに、何もしないというのも申し訳ないですし」

「いや、でも……」

「さあ、カイ様!行きましょう!」

「ちょ、ちょっと待て……」

そうして俺たちはスラムの外れにある、俺のボロ家に向かった。
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