82 / 146
サタン@現実世界/カイ・グランデ編
母親との最期の会話
しおりを挟む
床にはドクドクと血が流れ、土に広がっていく。
「カ…イ……。よ、かっ………た」
母親は笑顔になった。
笑顔なのだから、きっと大丈夫。
その時、俺はなぜかそう思った。
「ま、待ってて!」
俺はお母さんの体の下から這い出るとお母さんの上に乗っている鉄やら機材やらを降ろしていく。
だけど、棚だけはどうしても動かせなかった。
そして、棒状の形をした鉄骨。
それがお母さんのお腹に上から突き刺さっている。
「い、今、他の人、呼んでくるから!」
「カ、イ……ま…って……」
母親に優しく止められる。
「お、お母さん……」
「カ……イ。よく……聞い……て」
「うん……」
「お母……さん……の……つく……えの…引き出し……。そこに……ある…もの…を、ぜん……ぶ、ミランダ叔母さんに……渡し…て」
「え?な、なに言ってるの?」
「カ……イの……ため……溜め…たお金……入って……るから…」
「お母さん…!やだ!!死なないで!!」
ーーー子供ながらに、母親の死を悟った。
「カ…イ……。もっ……と、お…花……のこと……教え…て……あげら…れな……く…て……ごめ…ん……ね」
「いやだ!!お願いお母さん!!お、俺、今日だって、これ、頑張って取ったんだよ!!お母さんにあげようと思って!!」
そう言って赤い花を見せた。
言いながら、涙が止まらない。
ポロポロと次から次へと溢れ出し、血溜まりに落ちる。
「わぁ……。大きい…お花……。すご…い…ねぇ。カイ……あり…が…とう」
「お母さん!!」
「だい…すき………………」
母親はそれっきり喋らなくなった。
「うわぁああああああ!!!」
母親の亡骸に顔を擦り付け、夜通し泣いた。
次の日の朝、工場の前を通りかかった人が俺の声に気づき、2人は発見された。
その日から、俺の人生は180度変わったのだった。
貴族街の書店の前で思い出したくもない過去を思い出してしまった。
本は好きだが、本を見ると母親を思い出してしまうというジレンマ。
だから『本を読んでみたい』という誘惑を慌てて振り払う。
(俺が本なんて……。どうせ買ったって何が書いてあるのかわかんないし……)
文字の読み書きができれば違ったのに。
(でも、見るだけなら……)
しばらく葛藤していたが、気づくと俺は書店の中にいた。
中に入ると、紙特有の香りがする。
3人ほどお客がいたが、明らかにスラムの子供であろう、薄汚れた俺の姿を確認すると、皆出ていった。
(……これで見やすくなった)
その状況に少し悲しくなったが、気丈に振る舞うことにした。
すると、すぐ目の前の棚に釘付けになる。
色々な本が売っていたが、俺の目に入ってきたのは、6歳の日に母に買ってもらったような図鑑のコーナー。
(これ、面白そう!)
一冊手に取って見てみると、面白そうな野菜や果物イラストがたくさん描かれていた。
しかし、しばらく夢中で読んでいたものの、肝心の内容がわからない。
諦めて棚に戻し、俺はとぼとぼと入り口に向かった。
「ちょいとお待ち」
すると、店主の老婆に呼び止められた。
「カ…イ……。よ、かっ………た」
母親は笑顔になった。
笑顔なのだから、きっと大丈夫。
その時、俺はなぜかそう思った。
「ま、待ってて!」
俺はお母さんの体の下から這い出るとお母さんの上に乗っている鉄やら機材やらを降ろしていく。
だけど、棚だけはどうしても動かせなかった。
そして、棒状の形をした鉄骨。
それがお母さんのお腹に上から突き刺さっている。
「い、今、他の人、呼んでくるから!」
「カ、イ……ま…って……」
母親に優しく止められる。
「お、お母さん……」
「カ……イ。よく……聞い……て」
「うん……」
「お母……さん……の……つく……えの…引き出し……。そこに……ある…もの…を、ぜん……ぶ、ミランダ叔母さんに……渡し…て」
「え?な、なに言ってるの?」
「カ……イの……ため……溜め…たお金……入って……るから…」
「お母さん…!やだ!!死なないで!!」
ーーー子供ながらに、母親の死を悟った。
「カ…イ……。もっ……と、お…花……のこと……教え…て……あげら…れな……く…て……ごめ…ん……ね」
「いやだ!!お願いお母さん!!お、俺、今日だって、これ、頑張って取ったんだよ!!お母さんにあげようと思って!!」
そう言って赤い花を見せた。
言いながら、涙が止まらない。
ポロポロと次から次へと溢れ出し、血溜まりに落ちる。
「わぁ……。大きい…お花……。すご…い…ねぇ。カイ……あり…が…とう」
「お母さん!!」
「だい…すき………………」
母親はそれっきり喋らなくなった。
「うわぁああああああ!!!」
母親の亡骸に顔を擦り付け、夜通し泣いた。
次の日の朝、工場の前を通りかかった人が俺の声に気づき、2人は発見された。
その日から、俺の人生は180度変わったのだった。
貴族街の書店の前で思い出したくもない過去を思い出してしまった。
本は好きだが、本を見ると母親を思い出してしまうというジレンマ。
だから『本を読んでみたい』という誘惑を慌てて振り払う。
(俺が本なんて……。どうせ買ったって何が書いてあるのかわかんないし……)
文字の読み書きができれば違ったのに。
(でも、見るだけなら……)
しばらく葛藤していたが、気づくと俺は書店の中にいた。
中に入ると、紙特有の香りがする。
3人ほどお客がいたが、明らかにスラムの子供であろう、薄汚れた俺の姿を確認すると、皆出ていった。
(……これで見やすくなった)
その状況に少し悲しくなったが、気丈に振る舞うことにした。
すると、すぐ目の前の棚に釘付けになる。
色々な本が売っていたが、俺の目に入ってきたのは、6歳の日に母に買ってもらったような図鑑のコーナー。
(これ、面白そう!)
一冊手に取って見てみると、面白そうな野菜や果物イラストがたくさん描かれていた。
しかし、しばらく夢中で読んでいたものの、肝心の内容がわからない。
諦めて棚に戻し、俺はとぼとぼと入り口に向かった。
「ちょいとお待ち」
すると、店主の老婆に呼び止められた。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう
味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる