81 / 146
サタン@現実世界/カイ・グランデ編
孤独な少年は廃工場で母親と再会する
しおりを挟む
ガシャン!
なんとか4段目に着地。
「ふぅ~。………ううう。怖い……」
安堵した瞬間、ポロポロと涙が溢れる。
これをあと4回繰り返す。
頭がおかしくなりそうだったが、誰も助けに来てくれる気配はない。
外に活気はあり、人は多くいるようだが、それゆえにこの工場からの小さな声は届かない。
涙を拭って、再び手を足場にかけた。
ーーーそうしてついに2段目まで来た。
あとはもう一段降りるだけ。
その時、工場の外から声が聞こえた。
「カイーーー!!カイーーー!!」
それは紛れもなく母親の声だった。
「お母さーーーん!!お母さーーーん!!」
俺は泣き出しながら、母親に聞こえるように声を張り上げた。
「カイ!?どこなのーーー!?」
母親はなんとか俺の声に気づいたようだ。
「工場だよーーー!工場の中ーーー!!」
「こ、工場ですって!?」
そして、外から母親がガチャガチャと施錠された扉を開けようとする。
しかし、なかなか開かない。
「お母さん!その右側に少し捲れた壁があるよ!!そこから入ったんだ!」
俺が教えると、母親はそこから入ろうとする。
が、隙間は子供用の大きさしかなく、大人が入るのは難しそうだった。
そこで捲れた壁を思いっきり蹴り始める。
すると、裂け目が広がり、なんとか入ってこれるようになった。
母親がランタンで辺りを照らすと、俺が棚に乗っかっているのが見えたらしい。
「カイーーー!!もう!!何やってるの!!」
母親は慌てて駆け寄る。
俺も駆け寄りたくなって。
ーーー2段目から勢いよく飛び降りた。
ギシギシギシ……。
棚が鈍い音を立てる。
そして、俺はすぐに切り落とした花を棚と壁の隙間から拾い上げる。
「あのね!お母さん!これ……」
ーーーその瞬間は、今でも忘れない。
ーーー振り向いた瞬間、スローモーションのように、こちらに駆け寄る母親。
ーーー何が起きてるかわからない俺。
ーーー俺の体に母親が上から覆いかぶさったと同時に、
ガラガラゴロゴロガシャーーーーーン!!!
3段目から上の棚が、上から降ってきた。
「う……」
すごい音がしたが、どうやら無事だったようだ。
お母さんもちゃんと逃げられただろうか。
お母さんが落としたランタンが転がって、俺の視界を明るくする。
ーーーそこにお母さんはいた。
俺の上に覆いかぶさりながら、腕で地面を支えている。
俺に棚が当たらないようにしてくれたのだろう。
ーーーだから。そこまでしてくれたから。
ーーーだから、お母さんのお腹を、大きな鉄骨が貫いていた。
「お母さーーーーーん!!!」
俺は泣き出ながら絶叫した。
なんとか4段目に着地。
「ふぅ~。………ううう。怖い……」
安堵した瞬間、ポロポロと涙が溢れる。
これをあと4回繰り返す。
頭がおかしくなりそうだったが、誰も助けに来てくれる気配はない。
外に活気はあり、人は多くいるようだが、それゆえにこの工場からの小さな声は届かない。
涙を拭って、再び手を足場にかけた。
ーーーそうしてついに2段目まで来た。
あとはもう一段降りるだけ。
その時、工場の外から声が聞こえた。
「カイーーー!!カイーーー!!」
それは紛れもなく母親の声だった。
「お母さーーーん!!お母さーーーん!!」
俺は泣き出しながら、母親に聞こえるように声を張り上げた。
「カイ!?どこなのーーー!?」
母親はなんとか俺の声に気づいたようだ。
「工場だよーーー!工場の中ーーー!!」
「こ、工場ですって!?」
そして、外から母親がガチャガチャと施錠された扉を開けようとする。
しかし、なかなか開かない。
「お母さん!その右側に少し捲れた壁があるよ!!そこから入ったんだ!」
俺が教えると、母親はそこから入ろうとする。
が、隙間は子供用の大きさしかなく、大人が入るのは難しそうだった。
そこで捲れた壁を思いっきり蹴り始める。
すると、裂け目が広がり、なんとか入ってこれるようになった。
母親がランタンで辺りを照らすと、俺が棚に乗っかっているのが見えたらしい。
「カイーーー!!もう!!何やってるの!!」
母親は慌てて駆け寄る。
俺も駆け寄りたくなって。
ーーー2段目から勢いよく飛び降りた。
ギシギシギシ……。
棚が鈍い音を立てる。
そして、俺はすぐに切り落とした花を棚と壁の隙間から拾い上げる。
「あのね!お母さん!これ……」
ーーーその瞬間は、今でも忘れない。
ーーー振り向いた瞬間、スローモーションのように、こちらに駆け寄る母親。
ーーー何が起きてるかわからない俺。
ーーー俺の体に母親が上から覆いかぶさったと同時に、
ガラガラゴロゴロガシャーーーーーン!!!
3段目から上の棚が、上から降ってきた。
「う……」
すごい音がしたが、どうやら無事だったようだ。
お母さんもちゃんと逃げられただろうか。
お母さんが落としたランタンが転がって、俺の視界を明るくする。
ーーーそこにお母さんはいた。
俺の上に覆いかぶさりながら、腕で地面を支えている。
俺に棚が当たらないようにしてくれたのだろう。
ーーーだから。そこまでしてくれたから。
ーーーだから、お母さんのお腹を、大きな鉄骨が貫いていた。
「お母さーーーーーん!!!」
俺は泣き出ながら絶叫した。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる