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サタン@現実世界/カイ・グランデ編

孤独な少年は廃工場で母親と再会する

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ガシャン!

なんとか4段目に着地。

「ふぅ~。………ううう。怖い……」

安堵した瞬間、ポロポロと涙が溢れる。

これをあと4回繰り返す。

頭がおかしくなりそうだったが、誰も助けに来てくれる気配はない。

外に活気はあり、人は多くいるようだが、それゆえにこの工場からの小さな声は届かない。

涙を拭って、再び手を足場にかけた。



ーーーそうしてついに2段目まで来た。

あとはもう一段降りるだけ。

その時、工場の外から声が聞こえた。


「カイーーー!!カイーーー!!」


それは紛れもなく母親の声だった。


「お母さーーーん!!お母さーーーん!!」

俺は泣き出しながら、母親に聞こえるように声を張り上げた。

「カイ!?どこなのーーー!?」

母親はなんとか俺の声に気づいたようだ。

「工場だよーーー!工場の中ーーー!!」

「こ、工場ですって!?」

そして、外から母親がガチャガチャと施錠された扉を開けようとする。

しかし、なかなか開かない。

「お母さん!その右側に少し捲れた壁があるよ!!そこから入ったんだ!」

俺が教えると、母親はそこから入ろうとする。

が、隙間は子供用の大きさしかなく、大人が入るのは難しそうだった。

そこで捲れた壁を思いっきり蹴り始める。

すると、裂け目が広がり、なんとか入ってこれるようになった。

母親がランタンで辺りを照らすと、俺が棚に乗っかっているのが見えたらしい。

「カイーーー!!もう!!何やってるの!!」

母親は慌てて駆け寄る。

俺も駆け寄りたくなって。

ーーー2段目から勢いよく飛び降りた。

ギシギシギシ……。

棚が鈍い音を立てる。

そして、俺はすぐに切り落とした花を棚と壁の隙間から拾い上げる。


「あのね!お母さん!これ……」


ーーーその瞬間は、今でも忘れない。

ーーー振り向いた瞬間、スローモーションのように、こちらに駆け寄る母親。

ーーー何が起きてるかわからない俺。

ーーー俺の体に母親が上から覆いかぶさったと同時に、



ガラガラゴロゴロガシャーーーーーン!!!


3段目から上の棚が、上から降ってきた。


「う……」

すごい音がしたが、どうやら無事だったようだ。

お母さんもちゃんと逃げられただろうか。

お母さんが落としたランタンが転がって、俺の視界を明るくする。

ーーーそこにお母さんはいた。

俺の上に覆いかぶさりながら、腕で地面を支えている。

俺に棚が当たらないようにしてくれたのだろう。

ーーーだから。そこまでしてくれたから。


ーーーだから、お母さんのお腹を、大きな鉄骨が貫いていた。


「お母さーーーーーん!!!」

俺は泣き出ながら絶叫した。
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