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サタン@異世界編PART1

最強魔王級モンスター『ゼロ』

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その後、俺とデューは適当な岩場に座って語り合っていた。

「マルタの連中の件は悪かった。まぁでも、殺すつもりなんて無かったぜ。投石機をぶっ壊して戦意を削ぐだけのつもりだった」

俺は少し安堵した。

「じゃあ、俺はもう文句は無い。お前が総司令のリーダーを引きずり出したから、とりあえずダリア軍も撤退したみたいだしな」

軍は帝都ではなく、元のダリアへ戻って行ったようだった。

「それはそうと、あんたマジで強いな!!しかもどんな撃ち込んでも再生するとか反則だろ!」

「いや、別にそんな良いもんじゃ……」

「しかも、あんなに速くて超威力の攻撃なのに"属性"も無いとかヤバすぎだろ!そんなん聞いたことないぜ!」

「強いて言うなら"美男子属性"かな」

「ヤベエぜ……」

「流すな!」

「マジであんたなら、"ゼロ"も倒せるかもしれねぇな」

「ゼロっていうと、魔王級モンスターとかいうやつか?」

「ああ。10年前、帝国騎士団長のロクサスと一緒に一度やり合ったが、ありゃあマジのバケモンだ」

「そんなに強いのか」

「強いなんてもんじゃねぇ。2人がかりでたった一撃しか与えられなかった。それに俺の部下と騎士団の連中で500人は死なせちまった」

デューは死んだ仲間を想ってか、顔を伏せた。

「そっか。……それはヤバかったな」

「ああ。いつか復讐してやりてぇが、俺だけでやっても勝てる気がしねぇ。だからよ、その時が来たら……」

「じ、じゃあ、俺、行くわ」

「おい!めんどくさそうな顔してんじゃねぇ!!」

俺はカトリーナたちがいる所までピューっと逃げ出した。

「ったく……。でも、マジですげぇ兄ちゃんだ。こりゃ、ロクサスも黙ってねぇな」

背後でデューが何か言っていたが俺は聞かないことにした。





「サタン!あのバッドボブの船長と互角に渡り合うなんてマジでヤバいよ!!もうさっきのLIVE配信、300万再生行ってるよ!!」

戻るなりカトリーナが駆け寄ってくる。

「へーへー」

俺は適当に相槌を打つ。

そのうちメイジーとクロエも走ってきた。

「サタン様!お疲れ様です。やはりお強いですわ!」

「ええ。想像以上でした」

「そりゃどうも……」

現実世界では長年誰かから称賛されることなど無かった俺は、柄にもなく少し照れた。

「サ、サタン様。本当に、あ、ありがとう……ございました……」

マルタの村長は俺にお礼を言った瞬間、糸が切れたように倒れ伏した。

「ば、婆さん!!メイジー!回復頼む!」

俺は慌てて駆け寄り抱き抱えるとメイジーに指示した。

「は、はい!」

メイジーが手のひらをかざすと、水色の魔法陣が現れ、回復魔法が発動した。

「う……」

「お!意識が戻った!」

しかし、若干安堵した俺にメイジーが告げた。

「これは……外傷ではなく、栄養失調、飢餓による生命危機ですわ。早く何か食べさせないと……」

「誰か!すぐ食える食い物持ってないか!?」

俺は聞くが、皆、一様に顔を伏せた。

すでに食糧は枯渇していたようだ。

ーーーその時、少女の声が響き渡った。



「サタン様!とうもろこし、あるよ!!」



少女は、涙を流しながらとうもろこしを手に持っていた。

「でも、それはお前の親父さんが、最期にお前に……」

「ぐすっ……。良いの!私、村長に生きてもらいたい!私はまだ大丈夫だから!」

「お前、名前は?」

「ミア……」

「ミア。サンキューな。頑張って街に着いたら、腹一杯食わせてやるから」

俺は泣きべそをかく少女の頭をグシャッと撫でた。

「サタン様。では、私がそのとうもろこし、流動食に加工しましょう」

クロエは少女からとうもろこしを受け取ると、残っていた少しの水とキレイな木を使って加工し始めた。

そして、それを婆さんの口へ運ぶと、「ん……」と婆さんは口を動かして無事に飲み込めたようだった。

ひとまず命の危機は去り、俺は深く息を吐いた。
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