上 下
46 / 146
サタン@異世界編PART1

父親探しの依頼料は少年の"動画出演"

しおりを挟む
その後、クロエが全ての客を気絶させ、店内は静かになった。

少年が尻もちをつきながら目を丸くする。

「び、びっくりした……。や、やっぱり強いんだね……」

「あいつがな」

俺はクロエを指差して言うと、クロエはメイジーの服に付着した怪物ウニをおしぼりで拭いていた。

「そ、それで……。サタンさん……。父ちゃんを探してくれる……?」

少年が目線を逸らしながら聞いてくる。

「えー?タダで?」

「そ、それは……」

少年は涙目になった。

「お、おい。サタン……。確かにそうだけど言い方ってもんが……」

カトリーナが微妙な気遣いをする。

「ま、俺もピッピンプンスカ教会には行く予定だったし。行き先は一致してるけど、タダ働きはしない主義なんだ」

「………」

少年は唇を噛む。

「それに、将来お前が『人間は善意で助けてくれるもんだ』って思うのも良くない」

「そ、そんなことわかってらぁ!誰も助けてなんかくれないって!」

少年が立ち上がって拳を握る。

「じゃあさ。この子にも仕事してもらえば良いんじゃない?」

カトリーナが笑顔で提案する。

「仕事って?」

俺は耳をほじほじしながら聞き返した。

「うん!だから、この子にも『ピッピンプンスカ教会の闇を暴いてみた!』動画の出演者になってもらうんだよ」

カトリーナは自分の思いつきに胸を叩いた。

「し、出演者?」

少年も驚いた声を上げる。

「そう!お父さんのこととか、怪物ウニの話とか、ピッピンプンスカ教会の闇をぜんぶこの『カトサタンおんえあ』の動画にぶつけるんだ!」

「ぶ、ぶつけるって……」

「思ってることを全部話せばいいんだよ!それで再生回数が上がれば、私とサタンも人気になってお金になるし!」

カトリーナなりの優しさだったのだろう。

その粋な提案をされてしまっては俺も諦めるしかなかった。

「ったく。わかったよ……。今回だけな。次回依頼する時はお小遣いで10000万ギルは用意しとけよ」

子供にはありえない金額に「ははは!」とみんなで笑い合う。

「サタン様とカトリーナさんはお優しいですのね」

メイジーもほほほ、と笑う。

そんな優しい雰囲気に包まれた店内に、少年の声が響く。



「え、個人情報特定されるから嫌なんですけど」



「「「おい!!!」」」



思わず全員でツッコむ。

「ガキが個人情報なんて気にしてんじゃねぇ!!」

「そこは"パァァ"とか笑顔になるとこだろ!!なんだお前!!!」

「ま、まあまあ……」

「気持ちはわからなくもないですが……」

各々が声を上げる。



「特定されたら責任取れるんですか?」


「うるせーよ!!」


俺はガタガタ言う少年をなんとか説得すると、動画を撮るため店を出た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻
恋愛
 ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。 「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」  呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。  王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。  その意味することとは?  慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?  なぜこのような状況になったのだろうか?  ご指摘いただき一部変更いたしました。  みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。 今後ともよろしくお願いします。 たくさんのお気に入り嬉しいです! 大変励みになります。 ありがとうございます。 おかげさまで160万pt達成! ↓これよりネタバレあらすじ 第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。 親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。 ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

処理中です...