満員電車バトル〜座席を奪い合う4人、それぞれの人生〜

ウケン

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谷真守 編

ラーメン博物館で並んでない店へ入る

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時刻は17時40分。

今日は仕事が休みだったため、新横浜のラーメン博物館に来ていた。

今読んでいる小説の主人公の父親がラーメン博物館で働いている設定になっていたため、聖地巡礼も兼ねてラーメンを食べに行ってきた。

しかし、15時頃に到着したものの、平日のお昼過ぎにも関わらず予想外の混雑。

食べるのは半ラーメンにして、3軒くらいハシゴしちゃおう、なんてウキウキしていたが、そんな甘い考えは入った瞬間に打ち砕かれた。

どの店舗も30~60分待ちは当たり前。

特に美味しそうだと目星を付けていた店はほとんど行列だった。

私がこの世で一番嫌いなのは、食べ物屋の行列に並ぶこと。

時間の無駄に加えて、その店に対してのハードルが上がってしまうためだ。

これだけ並んだのだから、美味しいに違いない。

そう思ってしまう。

どれだけ期待しないように気持ちを調整しても抗えぬ期待感。

結果、こんだけ並んだのに意外と大したことない、という結論になってしまい、満足することができない。

だから私は、並んで食べる名店の味よりも、フラッと期待値0で入った店の方が美味しく感じられる人間だった。

その観点も踏まえて、まずはどの店に入るか決めなければならない。

一番食べたいと思っていた味噌ラーメンのお店を見てみると、折り返しての大行列。

さらに子連れも多くいるため、進みも遅そう。

(ぐっ……!)

ここは諦めざるを得なかった。

次に食べてみたかった辛いラーメンのお店を見てみると、こちらも大行列。

立て札には60~75分待ちの文字。

(くっ……!)

ここも諦めるしかなかった。

しばらくぐるりと回ってみるも、どこも多少の差はあれど、行列だった。

並びたくないという希望はあるが、このまま歩いて様子を見るだけでは、時間だけが過ぎていってしまう。

(最初の味噌ラーメン、人数少し減ったかな……)

諦めて元の店へ戻ろうとしたその時。

建物の角部分に、ひっそりとした店構えの洋風のパブのようなラーメン屋が見えた。

店の前まで来てみると、『初出店』の文字。

手元のパンフレットで店の情報を見てみると、イギリス人の店主による、新感覚のラーメンらしい。

そして何より、誰一人並んでいない。

そこに一筋の光が見えた私は、誰もいない店内へ足を踏み入れた。
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