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谷真守 編
親友と彼女の破局、その後
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「これからどうするの?」
私はシゲに問いかける。
「明日由香里さんが一度話したいって言うから、そこで完全にお別れしてこようと思う」
「そっか」
「うん。浮気は悲しかったけど、由香里さんには優柔不断で頼りない僕に自信を付けてくれた恩人でもあるんだ。だからしっかりお礼を言いたい」
浮気されてなお相手への恩を語るあたり、シゲという人間の器の広さが窺えた。
「シゲはすごいね」
私は素直にそう思った。
「いや、全然すごくないよ……。やっぱりホテルのことを聞いた時は怒ったし、悲しかった。それに、付き合ってる時も、彼女にはもっと僕を頼って欲しかった……。そりゃ頼りないかもしれないけど……」
シゲは小さな声で苦笑した。
「シゲ……」
「それにプロポーズを考えたいって言われた時も、すごく悲しかった。今思えば、ホテルの彼を好きだったんだから、仕方ないけど……。そういう気持ちも全部伝えてこようと思う」
「……わかった。頑張ってね」
もう何も言う必要は無い私は、そう伝えると電話を切った。
(一件落着かな。さ、小説の続きを読まなくちゃ)
ウキウキとした気分になり、小説の栞を挟んだページを勢いよく開いた。
11月5日木曜日。
その後、シゲはしっかりと自分の気持ちを伝えてお別れしたようだ。
勇気を出して気持ちを伝えたプロポーズを保留されて悲しかったこと。
もう少し自分を頼ってほしかったこと。
浮気されてショックを受けたこと。
しかし、それらは自分の不甲斐なさが招いた結果だと、最後まで彼女のせいにはしなかった。
そして今日、義明は大学時代の友達と飲み会を開いている。
名目としては彼女と別れた義明を慰める会。
友人の1人のおばあちゃんが伊勢原に住んでおり、その家に集まるらしい。
(シゲ、早く立ち直れると良いな)
私はそう祈りながら横浜線に乗っていた。
しかし、私の心は別件でひどく苛立っていた。
私はシゲに問いかける。
「明日由香里さんが一度話したいって言うから、そこで完全にお別れしてこようと思う」
「そっか」
「うん。浮気は悲しかったけど、由香里さんには優柔不断で頼りない僕に自信を付けてくれた恩人でもあるんだ。だからしっかりお礼を言いたい」
浮気されてなお相手への恩を語るあたり、シゲという人間の器の広さが窺えた。
「シゲはすごいね」
私は素直にそう思った。
「いや、全然すごくないよ……。やっぱりホテルのことを聞いた時は怒ったし、悲しかった。それに、付き合ってる時も、彼女にはもっと僕を頼って欲しかった……。そりゃ頼りないかもしれないけど……」
シゲは小さな声で苦笑した。
「シゲ……」
「それにプロポーズを考えたいって言われた時も、すごく悲しかった。今思えば、ホテルの彼を好きだったんだから、仕方ないけど……。そういう気持ちも全部伝えてこようと思う」
「……わかった。頑張ってね」
もう何も言う必要は無い私は、そう伝えると電話を切った。
(一件落着かな。さ、小説の続きを読まなくちゃ)
ウキウキとした気分になり、小説の栞を挟んだページを勢いよく開いた。
11月5日木曜日。
その後、シゲはしっかりと自分の気持ちを伝えてお別れしたようだ。
勇気を出して気持ちを伝えたプロポーズを保留されて悲しかったこと。
もう少し自分を頼ってほしかったこと。
浮気されてショックを受けたこと。
しかし、それらは自分の不甲斐なさが招いた結果だと、最後まで彼女のせいにはしなかった。
そして今日、義明は大学時代の友達と飲み会を開いている。
名目としては彼女と別れた義明を慰める会。
友人の1人のおばあちゃんが伊勢原に住んでおり、その家に集まるらしい。
(シゲ、早く立ち直れると良いな)
私はそう祈りながら横浜線に乗っていた。
しかし、私の心は別件でひどく苛立っていた。
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