満員電車バトル〜座席を奪い合う4人、それぞれの人生〜

ウケン

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谷真守 編

生まれて初めてレベルの絶叫

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その時、シゲの声がした気がした。

『泣くなよ。気にすんな』

(でも、シゲをこんなにしちゃって……)

『ちょっと言葉足らずだったけど、お前は相談受けたり、人の役に立ちたいと思っただけじゃん。悪くないよ』

涙が溢れて止まらない。

「ぐっ……。うっ……。ぐすっ……」

『それじゃあな。あんま自分を責めすぎるなよ。……俺の名言をもう聞かせられないのは残念だけど、そろそろ行くわ』

「………い、いやだ!いや!」

『"本当の友達は一緒にいる時、無言でも苦痛にならない"って思うんだけどさ、俺はお前と黙って飲むマックの爽健美茶、好きだったよ』

「やだやだやだぁァ!」

「あっ!谷くん泣いてるんですけど~!ウケるゥぅぅ!やだやだ、とか言って(爆)キッモ!(笑)」

美穂が囃し立てる。

『……それじゃな』

そう言うとシゲの声は消えていった。

今のは、私の妄想だろうか?

そうであってほしい。

ひとまずそうだと信じるしかない。

それにしても、こんな時、何もできない自分が嫌になる。

力も無ければ、アイデアも無い。

女の子に好かれるだけが取り柄の下らない生き物。

(自信持てって言われたって、そんなのできないよぉ……シゲ……)

相変わらず涙が出て止まらなかったが、そんなボクを尻目に爆笑していた美穂が悪魔の口を開いた。

「お兄ちゃん!そろそろやろ?❤️」

(……やる?まだ何かやるの……?)

「はーい!寄ってらっしゃい見てらっしゃい!茂森マグロの解体ショー始まるよ~♪」

そう言うと、美穂の兄がチェーンソーの電源ケーブルを引っ張る。

ブウォンブウォン!!と大きな音がすると、ブボボボボボと勢いよく回転を始めた。

そのままシゲに向かって近づいていく。

「谷くーん♪まだ私の罰を伝えてなかったと思うんだけどぉ~。そ、れ、は、谷くんの一番親しい友達を目の前で処刑する、ってやつなんだよねぇ~」

(シ、シゲ……)

「マグロっていうか、むしろカニ?あ、でもカニは解体ショーとかしないっけ?」

(や、やだ……)

「とりあえず、谷くんのせいで茂森くんの両足が無くなる所を見ててもらいまーす。純情な乙女を"告らせゲーム"で弄んだ罪を噛み締めながら、謝罪してくださーい」

「お、お願い……」

私は絞り出すように声を出したが、チェーンソーの音でかき消される。

「や、やめて……」

まだ聞こえない。ダメだ。

「み、美穂……やめて……」

ここ、ここだけでいい。

「………めて」




自分に自信を持て。




「…………やめろって言ってるでしょ!!!」







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