満員電車バトル〜座席を奪い合う4人、それぞれの人生〜

ウケン

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谷真守 編

シゲが犯した罪

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「シ、シゲーー!」

慌てて駆け寄ってみると、シゲはパイプイスに縛られて、ぐったりとしていた。

腕や指は変な方向へ曲がっているし、頭からは血を流している。

長い間暴力を振るわれていたのか、頭の血は所々黒ずんで固まっていた。

生きているのか死んでいるのかわからないくらい、ピクリとも動かない。

「ど、どうしてこんな……」

ボクはシゲをこんなにしたであろう、工場内で黙って立っている周りの大人たちを見た。

見た目からして恐らく反社的な人間たちだ。

その中でリーダー格の男がのそのそとボクの前に歩いて来る。

でかいダウンジャケットにダボっとした迷彩のズボンを履いており、身長は185cmくらいだろうか。

顔は黒いマスクで隠されているから全てはわからないが、肩から顔にかけて入れ墨が入っているようだった。

そして、手にはチェーンソーを持っていた。

「君が谷くん?」

男は低い声で聞いてきた。

「は、はい。あなたは?」

「あ?そんなことどうでもよくね?」

有無を言わせぬ迫力に思わずたじろぐ。

「谷くん、まだ紹介してなかったよね。お兄ちゃんです」

まあそうでしょうよ、と思った。

「そ、そうなんだ。こんにちは……」

知り合いの兄弟ということでこんな状況なのに挨拶してしまった。

「あー。妹がお世話になったみたいじゃん。君、モテるんだって?うらやましいね」

チェーンソーの刃の部分でお尻を叩かれる。

「い、いや、そんなことは。それよりシゲ、……彼はボクの友達なんですけど……。な、何か悪いことを?」

恐る恐る聞いてみた。

「あー。彼ね。彼はとんでもない罪を犯しちゃったのね。だからちょーっとお仕置きしてあげただけ」


そう言いながら周りの連中とくっくっと笑う。

何を言っているのかよくわからず、唯一知り合いの美穂の方に助けを求める。

「み、美穂。シゲは何をしたの?」

すると彼女は鼻で笑いながら言った。

「恋愛詐欺師の犯罪者である谷くんの"心の支え"になった罪でーす」

リーダーの妹による罪状の発表に、周りの大人たちはドッと笑い出した。

「こないだマックで聞かせてもらったよー。お前、真由もフって傷つけたんだよね。そんなお前に対してヘラヘラしながら"名言出ちゃいました~"みたいな舐めたノリしてたから拉致ってボコったの~」

「……え?え?」

あの時、後ろから見られていたような気がしていたが、それは美穂だったらしい。

「だから、お前みたいな犯罪者に優しくした罪ってこと~。お前に友達なんて許される訳ないでしょ」

「な、なに言って……」

「まぁその罰はすでに実行されて、両手全指折りと1週間連続鉄パイプ殴りで償わせたけど。みんなで順番に鉄パイプで殴っていったんだけど、お兄ちゃんと雅さんとゴーリーさんの時だけめっちゃ良い音鳴るし、痛かったのか絶叫しててウケた(笑)」

凄惨な事実が語られていく。

「美穂ちゃん、後でもっかい殴り方のコツ教えてあげるよ!ギャハハ」

雅さんらしき人物がガラガラ声で笑う。

「まぁ、あとはお兄ちゃんの持ってるチェーンソーで足を2本切断したら、こいつの罪は許してもいいかな。私、優しいでしょ」

美穂が異常なことを言っている。

「あと美穂、こいつの処刑はどうする?」

兄が美穂へ問いかけた。

「あ、うん。それに関しては、これからみんなに聞くね」

そう言うと、美穂はLINEのグループ通話をかけ始めた。
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