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井口泰平 編
最悪の取引先を引き継いだ上司"平畑"の思惑
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11月5日木曜日。
17時50分。
(ヤベェ、コンディション最悪……!)
昨日の戸崎との銀だこ&ハイボール酒場のダメージが残ったまま、俺は渋谷でこの日最後の営業活動を終えた所だった。
連日夜まで仕事をしており、さらに週の後半に差し掛かっているため、俺の扁平足は午前中の営業ですでに破壊されつつあった。
死ぬ気でなんとか気力を保っていたが、それももう限界。
あとはなんとか自宅まで帰り、ゆっくり休むだけ。
(今日は直帰して明日に備えよう……)
そんな状態でハチ公前を足を引きずりながら歩いていると、スマホが鳴った。
嫌な予感がするが、画面を見ると先輩の平畑からだった。
昨日、戸崎に飲みに連れて行かれてわかったが、想像通り、会社の取引先の中でもかなりめんどくさい部類に入りそうだ。
縦社会だし、何より過去の話が多い。
これからの未来の話がしたい若手の人間にとって、時代が違う過去の栄光を延々と話されるのは笑える話ならまだしも、基本的には苦痛でしかない。
そんな戸崎という男を知っていながら俺に押し付けてくるあたり、平畑の性格が窺えた。
入社してから平畑と同じチームでやってきたが、何でも短時間で平均点以上をサクッと取る俺のことを平畑が疎ましく思っていることは明白だった。
平畑は俺とは真逆の働き方で、頭の回転が遅いのか、残業もたっぷりして、時間をかけて色々と慎重に進める人間だった。
そして会社の評価制度では業績はもちろん見られるものの、プロセスも同じくらい評価される。
例え結果は散々でも、上司に対して真摯に取り組んでいる姿を見せているかどうかはかなりの得点で、その甲斐あって平畑は課長代理に昇進していた。
だから平畑の昇進は、結果の出せないくせに残業ばかりしているゴミクズの働き方が蔓延してしまうのではないか、と少し嫌な予感がしていたのだ。
そしてその予想は的中し、地獄のライラックを引き継ぐハメになった。
(俺にムダな働きをさせる気だ……!)
しかも戸崎のいるライラックという会社は、会社への売上も少なく、自分の掛けた労力には到底見合わない。
今の専務が昔お世話になった、という理由で『仲良くしとくのが当たり前』という会社だった。
だから時間をかけて戸崎と仲良くなっても評価もされないが、逆に仲が悪くなったら責任を取らされるという最悪の取引先だった。
それを知って平畑は俺にその取引先を振った。
そして、ここに来て終業間際の電話。
泰平は嫌な気持ちのまま電話に出た。
「はい、井口です」
17時50分。
(ヤベェ、コンディション最悪……!)
昨日の戸崎との銀だこ&ハイボール酒場のダメージが残ったまま、俺は渋谷でこの日最後の営業活動を終えた所だった。
連日夜まで仕事をしており、さらに週の後半に差し掛かっているため、俺の扁平足は午前中の営業ですでに破壊されつつあった。
死ぬ気でなんとか気力を保っていたが、それももう限界。
あとはなんとか自宅まで帰り、ゆっくり休むだけ。
(今日は直帰して明日に備えよう……)
そんな状態でハチ公前を足を引きずりながら歩いていると、スマホが鳴った。
嫌な予感がするが、画面を見ると先輩の平畑からだった。
昨日、戸崎に飲みに連れて行かれてわかったが、想像通り、会社の取引先の中でもかなりめんどくさい部類に入りそうだ。
縦社会だし、何より過去の話が多い。
これからの未来の話がしたい若手の人間にとって、時代が違う過去の栄光を延々と話されるのは笑える話ならまだしも、基本的には苦痛でしかない。
そんな戸崎という男を知っていながら俺に押し付けてくるあたり、平畑の性格が窺えた。
入社してから平畑と同じチームでやってきたが、何でも短時間で平均点以上をサクッと取る俺のことを平畑が疎ましく思っていることは明白だった。
平畑は俺とは真逆の働き方で、頭の回転が遅いのか、残業もたっぷりして、時間をかけて色々と慎重に進める人間だった。
そして会社の評価制度では業績はもちろん見られるものの、プロセスも同じくらい評価される。
例え結果は散々でも、上司に対して真摯に取り組んでいる姿を見せているかどうかはかなりの得点で、その甲斐あって平畑は課長代理に昇進していた。
だから平畑の昇進は、結果の出せないくせに残業ばかりしているゴミクズの働き方が蔓延してしまうのではないか、と少し嫌な予感がしていたのだ。
そしてその予想は的中し、地獄のライラックを引き継ぐハメになった。
(俺にムダな働きをさせる気だ……!)
しかも戸崎のいるライラックという会社は、会社への売上も少なく、自分の掛けた労力には到底見合わない。
今の専務が昔お世話になった、という理由で『仲良くしとくのが当たり前』という会社だった。
だから時間をかけて戸崎と仲良くなっても評価もされないが、逆に仲が悪くなったら責任を取らされるという最悪の取引先だった。
それを知って平畑は俺にその取引先を振った。
そして、ここに来て終業間際の電話。
泰平は嫌な気持ちのまま電話に出た。
「はい、井口です」
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