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石口由香里 編
好き=友達として好き
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「でも由香里が結婚するって聞いて俺、ちょっと嫉妬したわー。なんか、俺が一番だったと思ってたから負けた感じする」
幸せなはずの孝之からの子供っぽい発言に、不覚にもちょっと可愛さを覚えてしまった。
「勝ち負けとかじゃないでしょ。それに子供と奥さんと幸せな生活があるんだから、孝之の方が羨ましいわ」
「いやー。今の奥さんとかは全然由香里とは違うし……。なんていうか、毎日怒っててさ。こんなん言うのよくないんだけど、やっぱこの結婚、間違ってたんじゃないかって……」
孝之は自虐的な顔でビールに口をつけた。
「そんなこと言わないで。子供も産まれたんだから」
「それはそうだね。子供は死ぬほど可愛いよ。俺に似ててさ」
その笑顔は幸せな人のそれだった。
「へー!写真見せて見せて」
私は学生時代から知っている人の子供がどんな感じなのか、純粋に興味があった。
「うん、良いよ。えーっと……。あ、あったあった!こんな感じ」
孝之はしばらくスクロールして、一番お気に入りの子供の写真を見せてくれた。
「へぇー!可愛い!目が孝之に似てる気がするわね」
写真の女の子の笑った顔は少し下がり気味の孝之の目元にそっくりだった。
「でしょ!……良いのか悪いのかわからないけど(笑)」
「良いじゃん!私は孝之の目は好きだったよ。目はね(笑)」
「目だけかよ!もうちょいなんかあるだろ!」
私たちは笑い合った。
「でもさ、俺、由香里と飲んでたら、やっぱ由香里のこと好きだなーって思ったわ」
"好き"の意味はわからないが、好意を向けられていることはわかった。
「それはありがとう。私も孝之のことは好きよ。じゃなきゃ飲みに来てないしね」
好き=最高の友達、という意味で私は返した。
「マジか!そう言ってもらえて嬉しいなー」
孝之がそう言ったあたりで店員さんが話しかけてきた。
「失礼致します。ただ今でラストオーダーになるのですが、いかがでしょうか?」
時刻は23時10分。気づいたらかなりいい時間になっていた。
「どうしようか?最後飲む?」
私が聞くと、片手で遮って孝之は店員さんに「大丈夫です」と言った。
わかりました、と言って店員さんは戻っていった。
孝之は「お会計してくるから」と言ってレジへ向かったが、まだ解散する気配は無い空気を纏っていた。
幸せなはずの孝之からの子供っぽい発言に、不覚にもちょっと可愛さを覚えてしまった。
「勝ち負けとかじゃないでしょ。それに子供と奥さんと幸せな生活があるんだから、孝之の方が羨ましいわ」
「いやー。今の奥さんとかは全然由香里とは違うし……。なんていうか、毎日怒っててさ。こんなん言うのよくないんだけど、やっぱこの結婚、間違ってたんじゃないかって……」
孝之は自虐的な顔でビールに口をつけた。
「そんなこと言わないで。子供も産まれたんだから」
「それはそうだね。子供は死ぬほど可愛いよ。俺に似ててさ」
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「でしょ!……良いのか悪いのかわからないけど(笑)」
「良いじゃん!私は孝之の目は好きだったよ。目はね(笑)」
「目だけかよ!もうちょいなんかあるだろ!」
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"好き"の意味はわからないが、好意を向けられていることはわかった。
「それはありがとう。私も孝之のことは好きよ。じゃなきゃ飲みに来てないしね」
好き=最高の友達、という意味で私は返した。
「マジか!そう言ってもらえて嬉しいなー」
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「失礼致します。ただ今でラストオーダーになるのですが、いかがでしょうか?」
時刻は23時10分。気づいたらかなりいい時間になっていた。
「どうしようか?最後飲む?」
私が聞くと、片手で遮って孝之は店員さんに「大丈夫です」と言った。
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