満員電車バトル〜座席を奪い合う4人、それぞれの人生〜

ウケン

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石口由香里 編

元カレ襲来〜強制海鮮居酒屋〜

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20時25分。

『99%の女性が知らない恋愛の極意(仮)』

担当している恋愛系エッセイ本のゲラに貼った大量の付箋を眺めながら、イスで伸びをする。

(ふー。今日はこんなもんかな)

明日からはまた別の取材で戻ってこれないから、大きな赤字だけは入れておきたかった。

(スキャンしてデザイナーに送ったら帰ろ……)


ガーガーガーガーガー。

巨大な会社用プリンターがゲラの束を1枚ずつ引き込んでいく。

(義明、連絡してこないな……)

仕事に没頭している時は良いのだが、こういった待ち時間があると考えるのは義明のことばかりだった。

(押してこないのはちょっと残念だけど、こっちから連絡してやるか……)

そんな諦めモードになった時、高校時代の元カレの孝之からLINEがあった。

『久しぶり~👍元気?由香里の職場って確か神保町だったよね?今仕事の関係で神保町にいるんだけど、暇だったら一杯どう??』

もう別れてから10年以上経つが、相手のスケジュールなどお構いなしに当日連絡してくるあたり、全然変わっていない。

最後に会ったのは3年くらい前。

その時も久しぶりに飲もうと誘われてお寿司を食べに行った。

「はぁ……。うぜ……」

と呟いたものの、私も少し飲みたい気分だった。

飲み相手としては役不足ではあるが、少し愚痴を聞いてもらうくらいはできるかもしれない。

そう思って軽い気持ちで返信した。

『久しぶり✨今ちょうど会社出ようと思ってたとこだよ🙌一杯やりますかぁ~🍻✨』

すると、すぐに返信が来る。

『お、良いですねぇ~❗️じゃあ少し水道橋寄りの方に由香里の好きそうな海鮮居酒屋あるから行こう👍三省堂の前で待ってるわ❗️』

今の彼とは違って、何でもちゃっちゃか決めてくれるのは久しぶりに味わう心地良さがあった。

(でもお互い自分で決めたい性格だったから合わなくて別れたのよね……)

「海鮮の気分じゃないんだけどな」

そう呟くと、スキャンの終わったゲラの束をトントン叩いてクリップで挟むと、デザイナーにメールを送り、会社を後にした。
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