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第三話
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あれよあれよという間に着替えさせられ、車に乗せられた僕は、現在渡から説明という名の言い訳を聞いている。
「そもそもなんでこんなことになっちゃたかというとだな。こないだのパーティーの時にシンフォニーの社長に話しかけられたんだ」
飲んでいたお茶を吹き出してしまった。咳き込んでいる僕に渡が大丈夫かと背中をさすってくれたが、今はそれどころではない。
「ねぇ、渡。それほんとにシンフォニーの社長さん?僕の知ってる方だよね?同じ名前の他の会社とかじゃないよね?」
シンフォニーとは、今の芸能界の中でも一、二を争うほどの大手事務所である。アイドル、タレント、俳優、歌手、モデルに至るまで多種多様なエンターテイナーたちが揃っている。その社長は、ほぼ表に出てくることはなく、本名を知る人も数少ないため、基本的に何故か「シンフォの人」と呼ばれている。もちろん、渡は大企業の御令息なので、パーティーにでていることや、芸能関係者と知り合いであることに驚きはない。しかし、シンフォニーの社長ともなると話は変わってくる。それほどに、レアな存在であるのだ。
「うん。信じられないかもしれないけど、多分その人で合ってるよ」
マジか。ちょっと待ってくれ。もしかして…
「ねぇねぇ渡くん。もしかしてもしかしたりする?」
渡は苦い顔で言う。
「そう。もしかしてもしかするんだ。シンフォニーの社長に会ってくれ」
はいはい。そう言うことですか。道理で渡が謝り倒すわけだ。
よし。帰ろう。
「じゃあ渡。僕帰るから」
「まぁまぁまぁ。連れないこと言うなって」
「いやいやいや。無理だから」
「行ける。行ける」
そんな押し問答が5分ほど続き、僕は渡の購入プリン数を10個まで引き上げて、踏みとどまった。
「渡。どっちに依頼が来たの?天川神楽という渡の友達か。かぐらという顔出し厳禁のダンサーか」
「かぐらの方だよ」
「裏切り者っ」
「申し訳ないとほんとに思ってる」
そんな会話をしているうちに、会社の前までついてしまった。どうやら覚悟を決めるしかないようだ。
「そもそもなんでこんなことになっちゃたかというとだな。こないだのパーティーの時にシンフォニーの社長に話しかけられたんだ」
飲んでいたお茶を吹き出してしまった。咳き込んでいる僕に渡が大丈夫かと背中をさすってくれたが、今はそれどころではない。
「ねぇ、渡。それほんとにシンフォニーの社長さん?僕の知ってる方だよね?同じ名前の他の会社とかじゃないよね?」
シンフォニーとは、今の芸能界の中でも一、二を争うほどの大手事務所である。アイドル、タレント、俳優、歌手、モデルに至るまで多種多様なエンターテイナーたちが揃っている。その社長は、ほぼ表に出てくることはなく、本名を知る人も数少ないため、基本的に何故か「シンフォの人」と呼ばれている。もちろん、渡は大企業の御令息なので、パーティーにでていることや、芸能関係者と知り合いであることに驚きはない。しかし、シンフォニーの社長ともなると話は変わってくる。それほどに、レアな存在であるのだ。
「うん。信じられないかもしれないけど、多分その人で合ってるよ」
マジか。ちょっと待ってくれ。もしかして…
「ねぇねぇ渡くん。もしかしてもしかしたりする?」
渡は苦い顔で言う。
「そう。もしかしてもしかするんだ。シンフォニーの社長に会ってくれ」
はいはい。そう言うことですか。道理で渡が謝り倒すわけだ。
よし。帰ろう。
「じゃあ渡。僕帰るから」
「まぁまぁまぁ。連れないこと言うなって」
「いやいやいや。無理だから」
「行ける。行ける」
そんな押し問答が5分ほど続き、僕は渡の購入プリン数を10個まで引き上げて、踏みとどまった。
「渡。どっちに依頼が来たの?天川神楽という渡の友達か。かぐらという顔出し厳禁のダンサーか」
「かぐらの方だよ」
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「申し訳ないとほんとに思ってる」
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