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私が愛したアサシンドクター
1話 宵闇の銀髪の狩人
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アサシンドクター。とある世界に存在する表向きは、とある街で評判の医師として働き患者の生命を守る男が、裏の稼業として人間の生命を奪う暗殺者として生きる者がいた。
美しい灰色がかった銀髪の医師、エリオット・ノアール。ただし、彼はその名前はあえて伏せて、”エリオット・レム”という偽名を使い医師としてある街に滞在している。
その街は新緑の平和都市、ジオニックシティ。森の国と呼ばれる国の首都で、有数の大企業の本社や小学校、中学、高校など様々な施設が建ち並ぶ有数の大都市である。
潤沢な森の恩恵を受ける大都市に、この物語を紡ぐ男性が経営するクリニックがある。レムクリニック。内科、外科、小児科専門の個人病院である。
そして、この大都市から離れた郊外の一軒家では、今、女性が悲痛な叫びを上げて彼の強引なセックスに無理矢理付き合わされている光景があった。
だが、女の声は既に悦びに満ちた嬌声じみた声になって、この暗殺者の身体を求めている。ベッドが彼ら二人の体重で軋み、シーツは女の愛液と男の愛液でしっとりと濡れ、暗殺者はこの女の大輪の花びらを夢中で犯している。
薄暗い彼のベッドルームに女の嬌声が響く。この女は今、暗殺者の報酬として抱かれている。前金として法外な額を絞り取った後、「依頼」を果たした後で請求される「もう一つの報酬」。
だが、愛のないこのセックスに快楽に溺れるのは、いつも”彼”ではなく”女”の方だった。強姦のような荒々しいこの上ない行為。だが、男の表情は険しい。まるで、それに嫌がる様子で、抱いている女を無理矢理、快楽の絶頂へあげさせた。
寝室に響くまるで喘ぎのような激しい呼吸。女は快楽の絶頂へあげさせられ放心として余韻に浸っている。この女は暗殺者に自らの夫を殺させた。彼女の夫がよりにもよって不倫の末に他の女を寝取ったのが原因だ。
そして、暗殺者である彼は法外とも呼べる額の現金を契約金としてもらい、そして始末した。もちろん警察などには絶対にばれないように秘密裏に。
そして、今、最後の報酬を受け取り、彼は素肌の上に灰色のインナーシャツを着て、下着を穿き、ズボンを穿いていた。不機嫌そうに着替えた男は最後にこう呟く。
「用が済んだらさっさとここから去るんだな。安易に暗殺など頼まないことだ」
この暗殺者が、最後の報酬を貰った後の決まりの台詞だった。女はまだ、快楽の余韻に浸って黙っていることしかできないでいた。
そして、夜が更け、朝日が昇った。
そして、今日も、彼の”医師”としての生活が始まる。
森の国の郊外に住む彼は、整った背広姿になると、しっかりとネクタイをきちんと巻き締めて、最後にコートを羽織って、鞄を片手に出勤する。
割とおしゃれなその姿は、大都市でも評判になるほど、端正な男性だ。落ち着いた渋い大人の男の佇まい、軽く纏わせる独特の”色気”を感じる顔と空気。どこか飄々とした言葉遣いと話術はどれもこれも魅力的な要素として”彼”という人間を演出していた。
郊外から都市部へ入ると、彼は大通りを歩いている。心地よい澄んだ空気の朝には、小学生や中学生が通う姿も見える。悪くない普通の光景だが、何故か彼には眩しく見える。
それは、彼には過去、自分の愛娘がいたことがある。生きていればこの通りを歩く子供たちと同じ年齢になっていたはずの女の子。だが、その子はもうこの世にはいない。愛妻もこの世にはいない。
その前に処刑されてしまった。過去に自らが犯した過ちで。彼はいつも毎日のように子供たちの姿を見ると想ってしまう。愛しい妻を、娘を。
「だけど……もういないんだよな。君も、あの子も」
口癖のように呟く言葉に、かき消され、無邪気にはしゃぐ子供たちを見て、少しうらやましい気持ちが湧いた。
すると、無邪気にはしゃぐ子供たちの間で、彼の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「レム先生!」
「その声は、アニーか?」
「おはようございます、レム先生」
「奇遇じゃないか。アニー。今日も一段と綺麗だね」
「何を言ってるんですか?レム先生の方が素敵です」
「照れるね。最大の褒め言葉だね」
道すがら、彼の相棒を務める看護師、アニーと出会う。
彼女は美しい金髪のロングヘアーの美女で、通勤姿はまるでオフィスレディの姿と変わらない。整えられた女性用のスーツに、通勤用のショルダーバッグを左肩に下げ、足にはパンプスが履かれている。
スーツの色は黒に近い灰色。目には眼鏡をかけている。黒ぶちの知的なメガネの奥の緑色の瞳がとても柔らかい輝きを宿していた。唇には軽く薄いピンクのルージュが引かれている。
知的なウーマンという印象を与える女性であった。実際、彼女はまさに知的な相棒だ。採血の腕もプロフェッショナルだし、様々な”医療”に携わった技術の腕も本物。
自らの”相棒”として彼女はなくてはならない人だった。女性としても。
通勤途中の道で彼らはしばらく世間話に花を咲かせた。
「最近、乳がん検診で有効な機械が導入されたって話は聞きました?」
「マンモグラフィー検査だろう?うちの病院にも導入しようか検討しているんだよね」
「でも、あれ、かなり高額な施設ですよ。レムクリニックに導入するのは難しくないですか?」
「資金の目処は立っている。後はどこにそれを入れるかだよな」
「目処は立っているって、もうそんな資金が用意出来たんですか?」
「まあ、ね。裏稼業では随分と荒稼ぎしているからな」
「……そんなに”依頼人”が増えているのですか…?」
「こんな平和な街なのに、”依頼人”が増えるのは人間の性がそうさせているのさ」
ここは公共の場なので、彼は言葉を選んで、その”依頼人”が増えている現状を報告した。
実際、彼の下には、数件の”依頼”が舞いこんでいる。その、どれもこれもがいわゆる男女関係のもつれから来ている内容なのだ。
彼は実は女性の依頼人しか受け付けていない。男からの依頼を受けないのは、色気がないからという理由と単純に女の方が憎悪が大きいからそれを利用しているという理由だ。
一見、平和なこの街も、男女のもつれはどこにでも存在する。この世に男と女がいるだけで、それは起こる。
自分はそれを利用しているだけなのだ。ちなみにその法外な値段は人間一人につき、彼は80万は貰っている。二人目で160万。三人目で240万と跳ね上がる。
それが彼が決めた”人間の命の価値”だ。それを契約の時に全て現金一括、その場で支払ってもらっている。晴れて契約金の支払いがされると一日か二日には仕事を終わらせて標的を始末する。
この手際の良さが裏評判となり、”依頼人”が増えているという現状だ。
「手際が良いというのも考えものですね。先生」
「まあ、手際が良いのは医師の世界では重要だからね」
そんなことを話していたら、彼の個人病院に到着する。
「それじゃあ……今日も1日、よろしく頼むよ」
「はい。レム先生」
そうして、彼らコンビの1日も始まった。
彼がまず初めにすることが一つある。それは夜の間にその裏稼業の”依頼”が舞いこんでいるかの確認だ。
それは警察にばれないように”特別検査”と称して、窓口を用意している。決まり事は「依頼は全て手紙で送ること」。手紙の方が状況はわかりやすいし、女の心情を読むうえでも便利なツールだ。その手紙には憎しみに燃える、もしくば悲しみに沈む女の心情と状況が事細かに書かれている。
あまり読むとこちらの心にも”負の感情”がすりこまれてしまうので、1通か2通で彼は終わりにしている。まあ、依頼人が増えていると言っても、彼は暗殺業界ではかなりの法外な値段の暗殺者だ。そうそうくるわけでもない。
だが、どうやら、その”依頼”が来ていたのだろう。ホストに投函されていた。封筒を見ると”特別検査依頼”と書かれている。つまり、”暗殺”の依頼だった。
「どうやら、”依頼人”がいるようだ。院長室にいるから、君はいつもの開業準備を頼む」
「はい、先生」
院長室に入ると、彼はコートを脱いで、ハンガーにかけ、テーブル越しの椅子に座ると、通勤鞄をテーブルの上に載せ、手紙の封を開けた。手紙がしたためられている。
彼はその手紙を読み始めた。依頼人はもちろん女性。どうやら、手紙の内容からして最愛の恋人が寝取られた様子だ。その寝取った女を殺して欲しいという依頼だった。
「やれやれ。世の中の男性も女性も「寝取り」が好きな様子だな。最近、その手が流行っているのか?」
呆れつつも返信用封筒が同封されていたので、彼はそこで契約の日程などを記載して、速達で届くように切手を貼って、いつも来る郵便局の職員に渡している。
レムクリニックではかなり速達を利用するのが業務上でもあるので、別段、疑われる心配もない。
そうして、彼の”医師”としての1日が本当に始まった。
医師としての彼の性格は、まさにフレンドリーで親身に患者に寄りそう医師だった。
実際、その手際が良い治療はこの国ではナンバーワン。すぐに最善の治療を施してくれるし、けがの治療も出血が少ないうちに済ませてくれる。
この森の国では実は野生の魔物が多く生息しており、森でその魔物に傷を負わされて担ぎ込まれる患者が多い。
また温暖な気候だが、インフルエンザはやはりはやるのか、ワクチンの注射も予約なしで受けられる。
きちんと患者のアフターケアもしてくれるのが評判になり、レムクリニックは森の国で一番という評価を貰っていた。
そんな忙しい医師としての1日も終わり、郊外の家に帰るのが彼の日課だった。
時にはアニーの家にお邪魔して2人で酒も飲むこともしている。患者からは差し入れにケーキが来たり、酒をプレゼントされたりするので、密かな楽しみとして2人で楽しむのだ。
そして、最後はお休みのセックス。愛のないセックスを交わす彼のひと時の本当の愛の営みはいつも彼女の家でする。そうして暗殺によるすさんだ心を潤しているのだ。
だが、今夜は、とりあえず明日、暗殺の正式な契約が来るので、彼は郊外の一軒家に帰った。
暗殺の契約は彼の自宅。そこで契約が成立すれば、後は手際よく殺せばいい。それだけで裏稼業はいい。その稼いだ金は自らの趣味と病院運営の資金として使用しているのだ。
そうして、約束の日程を記した本日。
宵闇と静寂が支配する彼の自宅にその”依頼人”が姿を現した…。
美しい灰色がかった銀髪の医師、エリオット・ノアール。ただし、彼はその名前はあえて伏せて、”エリオット・レム”という偽名を使い医師としてある街に滞在している。
その街は新緑の平和都市、ジオニックシティ。森の国と呼ばれる国の首都で、有数の大企業の本社や小学校、中学、高校など様々な施設が建ち並ぶ有数の大都市である。
潤沢な森の恩恵を受ける大都市に、この物語を紡ぐ男性が経営するクリニックがある。レムクリニック。内科、外科、小児科専門の個人病院である。
そして、この大都市から離れた郊外の一軒家では、今、女性が悲痛な叫びを上げて彼の強引なセックスに無理矢理付き合わされている光景があった。
だが、女の声は既に悦びに満ちた嬌声じみた声になって、この暗殺者の身体を求めている。ベッドが彼ら二人の体重で軋み、シーツは女の愛液と男の愛液でしっとりと濡れ、暗殺者はこの女の大輪の花びらを夢中で犯している。
薄暗い彼のベッドルームに女の嬌声が響く。この女は今、暗殺者の報酬として抱かれている。前金として法外な額を絞り取った後、「依頼」を果たした後で請求される「もう一つの報酬」。
だが、愛のないこのセックスに快楽に溺れるのは、いつも”彼”ではなく”女”の方だった。強姦のような荒々しいこの上ない行為。だが、男の表情は険しい。まるで、それに嫌がる様子で、抱いている女を無理矢理、快楽の絶頂へあげさせた。
寝室に響くまるで喘ぎのような激しい呼吸。女は快楽の絶頂へあげさせられ放心として余韻に浸っている。この女は暗殺者に自らの夫を殺させた。彼女の夫がよりにもよって不倫の末に他の女を寝取ったのが原因だ。
そして、暗殺者である彼は法外とも呼べる額の現金を契約金としてもらい、そして始末した。もちろん警察などには絶対にばれないように秘密裏に。
そして、今、最後の報酬を受け取り、彼は素肌の上に灰色のインナーシャツを着て、下着を穿き、ズボンを穿いていた。不機嫌そうに着替えた男は最後にこう呟く。
「用が済んだらさっさとここから去るんだな。安易に暗殺など頼まないことだ」
この暗殺者が、最後の報酬を貰った後の決まりの台詞だった。女はまだ、快楽の余韻に浸って黙っていることしかできないでいた。
そして、夜が更け、朝日が昇った。
そして、今日も、彼の”医師”としての生活が始まる。
森の国の郊外に住む彼は、整った背広姿になると、しっかりとネクタイをきちんと巻き締めて、最後にコートを羽織って、鞄を片手に出勤する。
割とおしゃれなその姿は、大都市でも評判になるほど、端正な男性だ。落ち着いた渋い大人の男の佇まい、軽く纏わせる独特の”色気”を感じる顔と空気。どこか飄々とした言葉遣いと話術はどれもこれも魅力的な要素として”彼”という人間を演出していた。
郊外から都市部へ入ると、彼は大通りを歩いている。心地よい澄んだ空気の朝には、小学生や中学生が通う姿も見える。悪くない普通の光景だが、何故か彼には眩しく見える。
それは、彼には過去、自分の愛娘がいたことがある。生きていればこの通りを歩く子供たちと同じ年齢になっていたはずの女の子。だが、その子はもうこの世にはいない。愛妻もこの世にはいない。
その前に処刑されてしまった。過去に自らが犯した過ちで。彼はいつも毎日のように子供たちの姿を見ると想ってしまう。愛しい妻を、娘を。
「だけど……もういないんだよな。君も、あの子も」
口癖のように呟く言葉に、かき消され、無邪気にはしゃぐ子供たちを見て、少しうらやましい気持ちが湧いた。
すると、無邪気にはしゃぐ子供たちの間で、彼の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「レム先生!」
「その声は、アニーか?」
「おはようございます、レム先生」
「奇遇じゃないか。アニー。今日も一段と綺麗だね」
「何を言ってるんですか?レム先生の方が素敵です」
「照れるね。最大の褒め言葉だね」
道すがら、彼の相棒を務める看護師、アニーと出会う。
彼女は美しい金髪のロングヘアーの美女で、通勤姿はまるでオフィスレディの姿と変わらない。整えられた女性用のスーツに、通勤用のショルダーバッグを左肩に下げ、足にはパンプスが履かれている。
スーツの色は黒に近い灰色。目には眼鏡をかけている。黒ぶちの知的なメガネの奥の緑色の瞳がとても柔らかい輝きを宿していた。唇には軽く薄いピンクのルージュが引かれている。
知的なウーマンという印象を与える女性であった。実際、彼女はまさに知的な相棒だ。採血の腕もプロフェッショナルだし、様々な”医療”に携わった技術の腕も本物。
自らの”相棒”として彼女はなくてはならない人だった。女性としても。
通勤途中の道で彼らはしばらく世間話に花を咲かせた。
「最近、乳がん検診で有効な機械が導入されたって話は聞きました?」
「マンモグラフィー検査だろう?うちの病院にも導入しようか検討しているんだよね」
「でも、あれ、かなり高額な施設ですよ。レムクリニックに導入するのは難しくないですか?」
「資金の目処は立っている。後はどこにそれを入れるかだよな」
「目処は立っているって、もうそんな資金が用意出来たんですか?」
「まあ、ね。裏稼業では随分と荒稼ぎしているからな」
「……そんなに”依頼人”が増えているのですか…?」
「こんな平和な街なのに、”依頼人”が増えるのは人間の性がそうさせているのさ」
ここは公共の場なので、彼は言葉を選んで、その”依頼人”が増えている現状を報告した。
実際、彼の下には、数件の”依頼”が舞いこんでいる。その、どれもこれもがいわゆる男女関係のもつれから来ている内容なのだ。
彼は実は女性の依頼人しか受け付けていない。男からの依頼を受けないのは、色気がないからという理由と単純に女の方が憎悪が大きいからそれを利用しているという理由だ。
一見、平和なこの街も、男女のもつれはどこにでも存在する。この世に男と女がいるだけで、それは起こる。
自分はそれを利用しているだけなのだ。ちなみにその法外な値段は人間一人につき、彼は80万は貰っている。二人目で160万。三人目で240万と跳ね上がる。
それが彼が決めた”人間の命の価値”だ。それを契約の時に全て現金一括、その場で支払ってもらっている。晴れて契約金の支払いがされると一日か二日には仕事を終わらせて標的を始末する。
この手際の良さが裏評判となり、”依頼人”が増えているという現状だ。
「手際が良いというのも考えものですね。先生」
「まあ、手際が良いのは医師の世界では重要だからね」
そんなことを話していたら、彼の個人病院に到着する。
「それじゃあ……今日も1日、よろしく頼むよ」
「はい。レム先生」
そうして、彼らコンビの1日も始まった。
彼がまず初めにすることが一つある。それは夜の間にその裏稼業の”依頼”が舞いこんでいるかの確認だ。
それは警察にばれないように”特別検査”と称して、窓口を用意している。決まり事は「依頼は全て手紙で送ること」。手紙の方が状況はわかりやすいし、女の心情を読むうえでも便利なツールだ。その手紙には憎しみに燃える、もしくば悲しみに沈む女の心情と状況が事細かに書かれている。
あまり読むとこちらの心にも”負の感情”がすりこまれてしまうので、1通か2通で彼は終わりにしている。まあ、依頼人が増えていると言っても、彼は暗殺業界ではかなりの法外な値段の暗殺者だ。そうそうくるわけでもない。
だが、どうやら、その”依頼”が来ていたのだろう。ホストに投函されていた。封筒を見ると”特別検査依頼”と書かれている。つまり、”暗殺”の依頼だった。
「どうやら、”依頼人”がいるようだ。院長室にいるから、君はいつもの開業準備を頼む」
「はい、先生」
院長室に入ると、彼はコートを脱いで、ハンガーにかけ、テーブル越しの椅子に座ると、通勤鞄をテーブルの上に載せ、手紙の封を開けた。手紙がしたためられている。
彼はその手紙を読み始めた。依頼人はもちろん女性。どうやら、手紙の内容からして最愛の恋人が寝取られた様子だ。その寝取った女を殺して欲しいという依頼だった。
「やれやれ。世の中の男性も女性も「寝取り」が好きな様子だな。最近、その手が流行っているのか?」
呆れつつも返信用封筒が同封されていたので、彼はそこで契約の日程などを記載して、速達で届くように切手を貼って、いつも来る郵便局の職員に渡している。
レムクリニックではかなり速達を利用するのが業務上でもあるので、別段、疑われる心配もない。
そうして、彼の”医師”としての1日が本当に始まった。
医師としての彼の性格は、まさにフレンドリーで親身に患者に寄りそう医師だった。
実際、その手際が良い治療はこの国ではナンバーワン。すぐに最善の治療を施してくれるし、けがの治療も出血が少ないうちに済ませてくれる。
この森の国では実は野生の魔物が多く生息しており、森でその魔物に傷を負わされて担ぎ込まれる患者が多い。
また温暖な気候だが、インフルエンザはやはりはやるのか、ワクチンの注射も予約なしで受けられる。
きちんと患者のアフターケアもしてくれるのが評判になり、レムクリニックは森の国で一番という評価を貰っていた。
そんな忙しい医師としての1日も終わり、郊外の家に帰るのが彼の日課だった。
時にはアニーの家にお邪魔して2人で酒も飲むこともしている。患者からは差し入れにケーキが来たり、酒をプレゼントされたりするので、密かな楽しみとして2人で楽しむのだ。
そして、最後はお休みのセックス。愛のないセックスを交わす彼のひと時の本当の愛の営みはいつも彼女の家でする。そうして暗殺によるすさんだ心を潤しているのだ。
だが、今夜は、とりあえず明日、暗殺の正式な契約が来るので、彼は郊外の一軒家に帰った。
暗殺の契約は彼の自宅。そこで契約が成立すれば、後は手際よく殺せばいい。それだけで裏稼業はいい。その稼いだ金は自らの趣味と病院運営の資金として使用しているのだ。
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