混沌の女神の騎士 

翔田美琴

文字の大きさ
上 下
44 / 49
第4章 遺された希望、遺した絶望

4-6 共同戦線

しおりを挟む
 茂みに姿を隠していた他のカルベローナ公国軍の人物達も姿を現して、ルイスと名乗ったレンジャーの隊長の導きで彼らのベースキャンプへとたどり着く。
 レンジャー隊の人数は25名程の部隊で、ベースキャンプにて待機しているのは今のところは12名程。他の部隊はそれぞれ班に別れてあの異形の魔物退治に出撃している。
 ロベルトが中心になり、ルイスからこのベネズエラの情報を彼らから得る。
 情報によると、あの水色の羽根を持つ異形の魔物はつい10日程前に突如として現れ、国立公園にて保護されている生物達を殺して回るので、彼らレンジャー隊に退治の要請が来ている。
 他の国のレンジャー隊も参加しており、異形の魔物の駆逐を任務として与えられている。異形の魔物にはあまり情報としては少ない。わかっている情報は銃弾に対しての防御力には目を見張るものがある、その他の生物に対しての敵意が激しく見境なく攻撃してくる、このくらいの情報しかない。
 
「俺たちが退治してきた奴等と生態が似ているな、ロベルト」
「ああ、水色の羽根に銃弾への防御力、生物を見境なく攻撃してくる……全く同じだ」
「今までのはもっと小型だったけどね」
「あんた達も水色の羽根の生物を退治した事があるのか?」
「ああ、カマキリみたいな外見の奴を退治しているぜ」
「こっちのは空中から襲い掛かるタイプか。あのカマキリが成長したのがあれかな」
「似ているっちゃ似ているよね」
「キッド、あの魔物は見たことあるか?」
「ああ、あるよ。割とポピュラーな魔物で、向こうの世界では集団で襲ってくる事も多い」
「しかも兵隊アリみたいな奴で女王と呼ばれる虫もいるとか」
「アリみたいな生態だな」
「……やけにそっちの姉ちゃんは詳しいな」

 ルイスは異形の魔物の生態に詳しいキッドに対して、驚くと同時に疑いの目を送る。
 もしかしてこいつがその魔物を寄越したんじゃないかと疑っている。
 だが、そんなベースキャンプでのやり取りの最中でも魔物達の襲撃は続いている。それはけたたましく鳴る緊急事態の無線信号であった。

「緊急事態発生! 緊急事態発生! 魔物が群れを成して他の国のレンジャー隊を壊滅させた! 至急、他の国のレンジャー隊は身を護る事を優先! 退避も検討してください!」
「クソ! ここから近いレンジャー隊か?」
「10キロ遠方のレンジャー隊らしいです。魔物の数は少なくとも30体!」
「30体以上か……俺たちでも荷が重いな」
「一体、どうなっているの……?」
「30体以上か……女王が誕生したかもな」
「女王を倒せば、あの魔物の繁殖を抑える事はできるのか?」
「大元は女王だから女王を倒せばいいよ。その代わり厄介だけどね」
「厄介だって?」
「女王は人間も喰うんだ。人間を襲ってくるのは食糧の確保で、いい餌になるってこと」
「餌扱いかよ、俺たちは」

 そんな時にルイスのレンジャー隊も残りのメンバー達も帰還してくる。
 ヤバいのに出くわしたという空気を出している。

「ルイス隊長! 俺たち、多分、ヤバいのに出くわしましたよ……!」
「もっと詳しく話してくれ」
「そいつ、見た目的にまるで戦車みたいな奴で、あの水色の羽根の昆虫を手足のように操って、襲ってきたんです。慌てて俺たちは退避してきました」
「だけど、他国のレンジャー隊が……女王に喰われて……クソっ!」
「キッド。その女王とやらは一匹だけなのか?」
「幸いにも一匹だけだよ。ただし、その女王が産む子供が絶対にいる。今は兵隊クラスしか遭遇していないけど、子供はかなり厄介だぜ」
「女王が子供を産む前に始末した方がいいな、そうなると」
「隊長! どうします?! 俺達もベースキャンプから一時的に退避しますか?! 魔物が群れを成しているのは危険ですが……」
「いや、敢えてこちらから攻めるのもありかもしれない……」
「隊長……?」
「みんなには紹介していないな。こちらの人たちもレンジャーなんだ。しかもかなり良い情報を持っている」
「カルベローナ公国軍のレンジャーです。よろしく」
「ああ、よろしく」
「ロベルト殿、勝機はありそうですか?」
「キッドからの情報によれば、女王を倒せば繁殖を抑える事は可能らしいです。後は巣を火で焼く必要がありそうですが……」
「国立公園の職員に相談ですね、火を使って巣を焼く話は」
「どこで遭遇したか、何か信号となるものはあるかい?」
「ハザード、どうするつもりだ」
「群れを成してやってくるなら、どの方角なのか頭に入れて置けば対処はしやすい。虚をつかれるのが危険なんだ。確実に処理をしようぜ」
「ルイス隊長。これで貴方の部隊の面々は揃っているのか?」
「イェーガーの部隊が戻っていない。その群れと遭遇しているかもしれないな……イェーガーのGPS信号は拾えるか?」
「拾えます」

 オペレーターはイェーガーが出している信号の方角を指し示す。

「座標はこのベースキャンプはZ地点に固定しています。A地点まで行くと他国の担当区域になります。今はC地点に信号があります。このベースキャンプから真正面のテーブルマウンテンの方角ですね」

 ベースキャンプの周辺には目印となるテーブルマウンテンは一つだけだった。
 なので絶好の目印として選ばれたそうだ。
 ベースキャンプからC地点までは距離にして8キロくらい。でも魔物は空中を飛んでいるので、すぐに到達する。思っている以上に近いといえる。

「やるか。グズグズしている暇も無さそうだ」

 彼らは昆虫殲滅の為にベースキャンプから出撃して一つのテーブルマウンテンを目指して行軍を開始した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...