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第2章 パラレリアクロス
2-12 時間と空間を越える旅へ
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ハザード達が見つけてきた【オーパーツ】は今は今後の旅の方針を決める為にジョニーの伝手で手配した作戦会議室のテーブルに置かれていた。
まるで天使の羽のようなレリーフの彫像みたいなアイテムだ。
キッドの答えではこれは『鍵』らしい。
一体、これから何が起きようとしているのか?
彼らは固唾を呑んでキッドの言葉を待った。
「一体、その【オーパーツ】を使ってこれからどうする気なんだい?」
「あの隕石の近くに行くよ」
「大丈夫なのか? あの隕石?」
「ああ。あの隕石こそレムが導かれた異世界【アルトカークス】と地球の様々な場所へ行く為の扉──【セラフィックゲート】なんだ」
「今にニューヤークだけじゃなく世界中にこの隕石は落下してくると思う。その隕石の近くには必ず【オーパーツ】がある筈。その【オーパーツ】を使い、その場所で起きている歪んだ世界を解決していけばやがてアルトカークスへと行ける寸法さ」
「これから先は生身での闘いになる。ハザードもロベルトも、そしてジョニーもある程度の準備を整えてくれ」
「……」
「どうした? ジェニファー?」
「……ううん、ちょっと考え事してただけ」
これから起きる闘いの旅は楽しみではある。
しかし、ジェニファーの心は迷路のように迷っていた──。
あの【女神の瞳】で観た光景の中には、父の行動全てが視えていた。
父が護るべき女性と愛を交わす時も。
まるで自分自身が抱かれる錯覚を起こしたようにルーアの【女神の瞳】には父との愛の交換のシーンが覗けてしまった。
不思議と疎外感は感じなかった。
父のレムはそこでは余りにも美しく、余りにも艶やかで、心を剥き出しにしてルーアと体を重ねていた──。
父はその端正な姿でカルベローナ公国の技術士官大佐の地位を守っていた逸話がある。
偽りだらけの恋愛の連続で、彼の心にはいつも雨が降っていた。
吐息を甘く絡ませ、自分自身を偽り、相手を悦ばして、そうして己の地位を守っていた事に虚しさを感じていた。
しかし、夢うつつで観たルーアとの営みは偽りの想いではしてなかった。
そして私は迂闊だった──。
その実の娘である私は父の肌を感じてみたいと思うようになった。許されない事は解っている。
確かに父はこの機械仕掛けのクロスボウを与えて私に勇気をくれた。
周囲のパイロット達は私を頼ってくれて、お礼も言ってくれる。
初めて友人と言える女の子にも会えた。
だけど、この全ての闘いが終わった時───父は果たして地球に戻ってきてくれるだろうか?
まだ私は、地球の為に闘おうなんて覚悟は決まっていない───。
父ともう一度会いたい。父の声を聞きたい。
それだけだ。
そんな覚悟でこれからの旅を続けられるのであろうか?
「隕石の近くに寄っても大丈夫そうなら、まじまじと観察してみたいな」
「本当に隕石なのか確かめる必要はあるよな」
「ジェニファーちゃん」
「あ、はい」
「何か凄く考え事があるのは判るけど、少し息を抜こう。レム大佐は誰かを裏切る人ではないよ」
「少し旅を続ければ『自分自身の闘い』も見えてくるはずさ。焦る必要はないさ──」
「ハザードさん」
「俺達もレム大佐に会いたい気持ちはあるから安心しろよ」
パイロット達は皆、闘いに慣れていないジェニファーにフォローをしてくれる。
キッドはこの人達はただ強いだけのエースパイロットではないなと思う。
戦力を集める中でも彼らは、『闘うべき相手』と『闘うべきではない相手』をきちんと考えて行動している。
レムが友人として信頼するのも判る。
こういう人達こそ、訳の解らない怨霊や化け物などに殺されないで欲しい。
ジェニファー達は全員揃って隕石の前に立った。
彼らの手にはアルトカークスの武器が収まったケースや諸々の持ち物などが一つの袋に収まるように入っている。
ジェニファーも割りと身軽な荷物だった。
キッドは最後の確認を取った。
「このオーパーツを使えば何処に飛ばされるか分からないからサイド3 に帰還するのは困難だよ。準備と覚悟はいいかい?」
「おう! 何でもかかってこいや!」
「ロベルトの奴、結構、楽しみっぽいな。俺も良いぜ」
「ワクワクしてきたな。こういうのを俺は待ってきたのかもな」
「ジェニファー?」
「───私も大丈夫。行こう!」
キッドは隕石の前にオーパーツを差し出すと、オーパーツが金色の光を放ち、彼らを何処かへと連れ去った。
その旅立ちの前のジェニファーの不安な心の内側はこの質問だった。
ねえ? お父さん。全てが終わった時、お父さんは地球に戻ってきてくれるの?
それともルーアさんと一緒の人生を歩むの?
どっちなの───?
地球とアルトカークス───どちらを選ぶの?
ジェニファーは不安を抱きながら、地球の異変を正す旅立ちを迎えた。
一抹の不安を感じながら──。
世界を救う為に。
まるで天使の羽のようなレリーフの彫像みたいなアイテムだ。
キッドの答えではこれは『鍵』らしい。
一体、これから何が起きようとしているのか?
彼らは固唾を呑んでキッドの言葉を待った。
「一体、その【オーパーツ】を使ってこれからどうする気なんだい?」
「あの隕石の近くに行くよ」
「大丈夫なのか? あの隕石?」
「ああ。あの隕石こそレムが導かれた異世界【アルトカークス】と地球の様々な場所へ行く為の扉──【セラフィックゲート】なんだ」
「今にニューヤークだけじゃなく世界中にこの隕石は落下してくると思う。その隕石の近くには必ず【オーパーツ】がある筈。その【オーパーツ】を使い、その場所で起きている歪んだ世界を解決していけばやがてアルトカークスへと行ける寸法さ」
「これから先は生身での闘いになる。ハザードもロベルトも、そしてジョニーもある程度の準備を整えてくれ」
「……」
「どうした? ジェニファー?」
「……ううん、ちょっと考え事してただけ」
これから起きる闘いの旅は楽しみではある。
しかし、ジェニファーの心は迷路のように迷っていた──。
あの【女神の瞳】で観た光景の中には、父の行動全てが視えていた。
父が護るべき女性と愛を交わす時も。
まるで自分自身が抱かれる錯覚を起こしたようにルーアの【女神の瞳】には父との愛の交換のシーンが覗けてしまった。
不思議と疎外感は感じなかった。
父のレムはそこでは余りにも美しく、余りにも艶やかで、心を剥き出しにしてルーアと体を重ねていた──。
父はその端正な姿でカルベローナ公国の技術士官大佐の地位を守っていた逸話がある。
偽りだらけの恋愛の連続で、彼の心にはいつも雨が降っていた。
吐息を甘く絡ませ、自分自身を偽り、相手を悦ばして、そうして己の地位を守っていた事に虚しさを感じていた。
しかし、夢うつつで観たルーアとの営みは偽りの想いではしてなかった。
そして私は迂闊だった──。
その実の娘である私は父の肌を感じてみたいと思うようになった。許されない事は解っている。
確かに父はこの機械仕掛けのクロスボウを与えて私に勇気をくれた。
周囲のパイロット達は私を頼ってくれて、お礼も言ってくれる。
初めて友人と言える女の子にも会えた。
だけど、この全ての闘いが終わった時───父は果たして地球に戻ってきてくれるだろうか?
まだ私は、地球の為に闘おうなんて覚悟は決まっていない───。
父ともう一度会いたい。父の声を聞きたい。
それだけだ。
そんな覚悟でこれからの旅を続けられるのであろうか?
「隕石の近くに寄っても大丈夫そうなら、まじまじと観察してみたいな」
「本当に隕石なのか確かめる必要はあるよな」
「ジェニファーちゃん」
「あ、はい」
「何か凄く考え事があるのは判るけど、少し息を抜こう。レム大佐は誰かを裏切る人ではないよ」
「少し旅を続ければ『自分自身の闘い』も見えてくるはずさ。焦る必要はないさ──」
「ハザードさん」
「俺達もレム大佐に会いたい気持ちはあるから安心しろよ」
パイロット達は皆、闘いに慣れていないジェニファーにフォローをしてくれる。
キッドはこの人達はただ強いだけのエースパイロットではないなと思う。
戦力を集める中でも彼らは、『闘うべき相手』と『闘うべきではない相手』をきちんと考えて行動している。
レムが友人として信頼するのも判る。
こういう人達こそ、訳の解らない怨霊や化け物などに殺されないで欲しい。
ジェニファー達は全員揃って隕石の前に立った。
彼らの手にはアルトカークスの武器が収まったケースや諸々の持ち物などが一つの袋に収まるように入っている。
ジェニファーも割りと身軽な荷物だった。
キッドは最後の確認を取った。
「このオーパーツを使えば何処に飛ばされるか分からないからサイド3 に帰還するのは困難だよ。準備と覚悟はいいかい?」
「おう! 何でもかかってこいや!」
「ロベルトの奴、結構、楽しみっぽいな。俺も良いぜ」
「ワクワクしてきたな。こういうのを俺は待ってきたのかもな」
「ジェニファー?」
「───私も大丈夫。行こう!」
キッドは隕石の前にオーパーツを差し出すと、オーパーツが金色の光を放ち、彼らを何処かへと連れ去った。
その旅立ちの前のジェニファーの不安な心の内側はこの質問だった。
ねえ? お父さん。全てが終わった時、お父さんは地球に戻ってきてくれるの?
それともルーアさんと一緒の人生を歩むの?
どっちなの───?
地球とアルトカークス───どちらを選ぶの?
ジェニファーは不安を抱きながら、地球の異変を正す旅立ちを迎えた。
一抹の不安を感じながら──。
世界を救う為に。
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