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第2章 パラレリアクロス
2-10 女神の瞳
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正体不明の敵を倒す事になったのはいいが、レーダーにも探知されない敵をどうやって倒すのか?
紅い稲妻、ジョニー・ライトニングの話では更に追い打ちをかけるような証言があった。
「そいつ、レーダーにも探知されないどころか、眼でも視えない敵なんだ」
「視えない敵ってことか?」
「本当、視えない敵だよ」
「何か対策を取れないかな?」
「一つだけ方法は無くもないわ」
「レナ、教えてくれよ」
「ねぇ? ジェニファーさん? あなた、夢でお父様の姿を観たことはある?」
「あるよ。凄くはっきりと状況がわかるくらいに鮮明なの」
「あなたの目には【女神の瞳】と呼ばれる目には視えない物を見るチカラがあるの。それは今の見えざる敵を発見する事もできるわ」
「それって昔の人々が持っていたという千里眼みたいなものってことかい?」
「そうね。そういうものよ」
「ただね。その代償として、そのチカラを使うとあなたの寿命が縮んでしまうの。徐々に、だけど確実に」
「そ、そんな──」
だからお父さんの姿が見えたんだ。
ジェニファーの身に起きた不思議な出来事。
それは死んだはずの父親の姿が夢うつつで状況がはっきりとわかるくらいに鮮明な映像として見えたことだった。
謎の騎士との戦いも、父親が護っている女性の姿も、一切合切が全て見えていた。
それは向こうの世界の女性ルーアが持っている【女神の瞳】とジェニファーがリンクして繋がっているから。
ルーアが見える事はジェニファーも見える。
逆にジェニファーが見える事はルーアも見えるということでもある。
代償が生命力という重いものだが、今回のような不可視の敵を倒すにはまさに必要な能力でもあった。
ジェニファーは先程から妙な気配を確かに感じていた。
すぐ近くでもない。しかし嫌な気配だ。
纏わりつくようなべっとりとした湿り気のある不快極まりない気配だった。
「私、感じるよ。あっちから嫌な気配を感じる」
ジェニファーが歩き始める。
その気配がある場所へ、皆を導く為に。
指を指して歩いていく──。
彼らは黙って彼女の後ろに着いていく。
傍から見れは何も無い空を指さしているが、ジェニファーは【女神の瞳】でそれが視える。
歩くこと5分。瓦礫の山を指さして彼女の脚が止まった。
「ジェニファー、どうした?」
「いるよ。目の前に嫌な気配がいる」
「とても大きな敵だよ──あんなの信じられない」
「例えるならどんな奴?」
「巨人──見えない巨人──だよね」
彼らには何にも視えなかった。
ただ瓦礫の山が広がるばかりだ。
ハザードがアルトカークスの拳銃を構えた。
そしてジェニファーが視える方角を聞いた。
「ジェニファー、狙撃してみる。方角を言ってくれ。言いやすい言葉でいい」
「右の方角、10メートルの方角かな」
彼らは射線から離れるとハザードがレールガンを発砲した。すると正体不明の敵がその形を彼らに視えるように表した!
それはまさに巨人だ。向こうは何も言葉を発しない。可視化された巨人に彼らはその巨大さに脚が竦みそうになる──。
「何だ!? こいつは!?」
「デカすぎるぞ!」
「見えざる巨人──確かにそうだな」
「やるしかねえのか?!」
「ハザードはもうやる気だ。キッド! ジョニーには向こうの世界の武器は渡さないのか?!」
「ジョニー! これを使ってくれ!」
キッドが差し出した武器は特殊なギミックの大剣だった。
装飾が施されたいかにもアルトカークスらしい大剣。
ギミックは見えざる敵を可視化させる異空間を引き裂く機能らしい。
見えざる巨人は時々揺らめきながらその姿を消しながら動いている。
感じるのは地震のような震動と圧迫感みたいなものだ。ジェニファーが絶えずその場所を示しているが、【女神の瞳】を使い過ぎると生命に関わる。
ジョニーの大剣はその不可視の敵を暴く為のギミックが施されているというのだ。
「つまりは見えない敵を見えるようにするって事だな。どうすればいい!?」
「ジョニー。あんた、勘は働くかい? 大げさなものじゃなくていいから」
「少しはな。瞬間的な勘なら」
「その大剣は持ち主の『見えざる敵』を引き裂く。勘で今、そいつが何処に居るかを感じてそのまま剣を振り下ろせばいい」
「やってやるよ」
ジョニーがそのまましばらくハザードとジェニファーとロベルトが闘う様子を観ていた。ジェニファーがある程度の場所の指示を出して、そこへ攻撃を加えている。
時間差がその間5秒程あるが闘いの場では5秒のタイムラグは死に繋がる。
さっさと可視化させないとならない。
ジョニーは次の場所へ直感的に走り出し、アルトカークスの大剣を思い切り振り下ろした。
すると空間が引き裂かれ出てきたのは可視化された巨人の姿だ。そのままジョニーの大剣は次の一撃を巨人に入れていた。
ハザードのレールガンが可視化された巨人へ明後日の方角から撃ち込まれる。
ロベルトのレールガンもハザードの弾丸が撃ち込まれた場所と同じ所を撃ち込んだ。
ジェニファーのクロスボウも弱点と思われる巨人のコアへ矢が突き刺さった。
「そこか! 弱点は!」
そこでジョニーの大剣に紅い稲妻が疾走る。
彼はそのまま一気に弱点のコアへ大剣を突き刺して紅い稲妻をエネルギーにして送り込んだ。
何万ボルト程もある電流が一気に送り込まれ、巨人は音を立ててスクラップとなって崩れ落ちていくのであった。
「この大剣──気に入ったぜ」
「お前の武器も凄いな! ジョニー」
「何だよ、お前らの武器も大したものじゃないか!」
「大丈夫かい? ジェニファーちゃん」
「【女神の瞳】を結構な時間、使わせてしまったからな。少し休んだ方がいい」
「大丈夫──ありがとう、ハザードさん、ロベルトさん」
だが、ジェニファーの体はふらついている。
慌ててキッドがその体を支えた。
肩を貸して、近くの大きな岩に座った。
「キッド──」
「しばらく休んだ方がいいよ。後始末は皆に任せようぜ」
「──ごめんね」
そこでジェニファーはチカラを使い果たして、キッドの肩へ顔を傾けてぐったりと気を失ってしまった──。
ジョニーはすぐに救急車を手配するように頼んで、ロベルトはハザードと共に残骸を調べている様子だった。
ハザードは残骸となった巨人の部品を一部分を掴んでその材質を確認していた。
「あの巨人。材質的には俺達が乗る戦闘機と同じ材質に見えたけど、遥かに頑丈な金属に覆われていたようだ」
「あんな見えない奴らに連続で襲われたりしたら身が保たないな」
「ジェニファーちゃんは?」
「キッドが側で看病してくれているよ。俺達にできる事はこいつらの分析と後々の為の対策を立てる事さ」
「ジョニーの大剣のお陰だな。今回の奴を倒せたのは」
「不可視の敵か──。厄介な敵が出てきたな」
彼らは厚い雲に覆われた空を見上げる。
まだ真っ黒な雨は降り注いでいたのであった。
彼らの不安を表すように──。
紅い稲妻、ジョニー・ライトニングの話では更に追い打ちをかけるような証言があった。
「そいつ、レーダーにも探知されないどころか、眼でも視えない敵なんだ」
「視えない敵ってことか?」
「本当、視えない敵だよ」
「何か対策を取れないかな?」
「一つだけ方法は無くもないわ」
「レナ、教えてくれよ」
「ねぇ? ジェニファーさん? あなた、夢でお父様の姿を観たことはある?」
「あるよ。凄くはっきりと状況がわかるくらいに鮮明なの」
「あなたの目には【女神の瞳】と呼ばれる目には視えない物を見るチカラがあるの。それは今の見えざる敵を発見する事もできるわ」
「それって昔の人々が持っていたという千里眼みたいなものってことかい?」
「そうね。そういうものよ」
「ただね。その代償として、そのチカラを使うとあなたの寿命が縮んでしまうの。徐々に、だけど確実に」
「そ、そんな──」
だからお父さんの姿が見えたんだ。
ジェニファーの身に起きた不思議な出来事。
それは死んだはずの父親の姿が夢うつつで状況がはっきりとわかるくらいに鮮明な映像として見えたことだった。
謎の騎士との戦いも、父親が護っている女性の姿も、一切合切が全て見えていた。
それは向こうの世界の女性ルーアが持っている【女神の瞳】とジェニファーがリンクして繋がっているから。
ルーアが見える事はジェニファーも見える。
逆にジェニファーが見える事はルーアも見えるということでもある。
代償が生命力という重いものだが、今回のような不可視の敵を倒すにはまさに必要な能力でもあった。
ジェニファーは先程から妙な気配を確かに感じていた。
すぐ近くでもない。しかし嫌な気配だ。
纏わりつくようなべっとりとした湿り気のある不快極まりない気配だった。
「私、感じるよ。あっちから嫌な気配を感じる」
ジェニファーが歩き始める。
その気配がある場所へ、皆を導く為に。
指を指して歩いていく──。
彼らは黙って彼女の後ろに着いていく。
傍から見れは何も無い空を指さしているが、ジェニファーは【女神の瞳】でそれが視える。
歩くこと5分。瓦礫の山を指さして彼女の脚が止まった。
「ジェニファー、どうした?」
「いるよ。目の前に嫌な気配がいる」
「とても大きな敵だよ──あんなの信じられない」
「例えるならどんな奴?」
「巨人──見えない巨人──だよね」
彼らには何にも視えなかった。
ただ瓦礫の山が広がるばかりだ。
ハザードがアルトカークスの拳銃を構えた。
そしてジェニファーが視える方角を聞いた。
「ジェニファー、狙撃してみる。方角を言ってくれ。言いやすい言葉でいい」
「右の方角、10メートルの方角かな」
彼らは射線から離れるとハザードがレールガンを発砲した。すると正体不明の敵がその形を彼らに視えるように表した!
それはまさに巨人だ。向こうは何も言葉を発しない。可視化された巨人に彼らはその巨大さに脚が竦みそうになる──。
「何だ!? こいつは!?」
「デカすぎるぞ!」
「見えざる巨人──確かにそうだな」
「やるしかねえのか?!」
「ハザードはもうやる気だ。キッド! ジョニーには向こうの世界の武器は渡さないのか?!」
「ジョニー! これを使ってくれ!」
キッドが差し出した武器は特殊なギミックの大剣だった。
装飾が施されたいかにもアルトカークスらしい大剣。
ギミックは見えざる敵を可視化させる異空間を引き裂く機能らしい。
見えざる巨人は時々揺らめきながらその姿を消しながら動いている。
感じるのは地震のような震動と圧迫感みたいなものだ。ジェニファーが絶えずその場所を示しているが、【女神の瞳】を使い過ぎると生命に関わる。
ジョニーの大剣はその不可視の敵を暴く為のギミックが施されているというのだ。
「つまりは見えない敵を見えるようにするって事だな。どうすればいい!?」
「ジョニー。あんた、勘は働くかい? 大げさなものじゃなくていいから」
「少しはな。瞬間的な勘なら」
「その大剣は持ち主の『見えざる敵』を引き裂く。勘で今、そいつが何処に居るかを感じてそのまま剣を振り下ろせばいい」
「やってやるよ」
ジョニーがそのまましばらくハザードとジェニファーとロベルトが闘う様子を観ていた。ジェニファーがある程度の場所の指示を出して、そこへ攻撃を加えている。
時間差がその間5秒程あるが闘いの場では5秒のタイムラグは死に繋がる。
さっさと可視化させないとならない。
ジョニーは次の場所へ直感的に走り出し、アルトカークスの大剣を思い切り振り下ろした。
すると空間が引き裂かれ出てきたのは可視化された巨人の姿だ。そのままジョニーの大剣は次の一撃を巨人に入れていた。
ハザードのレールガンが可視化された巨人へ明後日の方角から撃ち込まれる。
ロベルトのレールガンもハザードの弾丸が撃ち込まれた場所と同じ所を撃ち込んだ。
ジェニファーのクロスボウも弱点と思われる巨人のコアへ矢が突き刺さった。
「そこか! 弱点は!」
そこでジョニーの大剣に紅い稲妻が疾走る。
彼はそのまま一気に弱点のコアへ大剣を突き刺して紅い稲妻をエネルギーにして送り込んだ。
何万ボルト程もある電流が一気に送り込まれ、巨人は音を立ててスクラップとなって崩れ落ちていくのであった。
「この大剣──気に入ったぜ」
「お前の武器も凄いな! ジョニー」
「何だよ、お前らの武器も大したものじゃないか!」
「大丈夫かい? ジェニファーちゃん」
「【女神の瞳】を結構な時間、使わせてしまったからな。少し休んだ方がいい」
「大丈夫──ありがとう、ハザードさん、ロベルトさん」
だが、ジェニファーの体はふらついている。
慌ててキッドがその体を支えた。
肩を貸して、近くの大きな岩に座った。
「キッド──」
「しばらく休んだ方がいいよ。後始末は皆に任せようぜ」
「──ごめんね」
そこでジェニファーはチカラを使い果たして、キッドの肩へ顔を傾けてぐったりと気を失ってしまった──。
ジョニーはすぐに救急車を手配するように頼んで、ロベルトはハザードと共に残骸を調べている様子だった。
ハザードは残骸となった巨人の部品を一部分を掴んでその材質を確認していた。
「あの巨人。材質的には俺達が乗る戦闘機と同じ材質に見えたけど、遥かに頑丈な金属に覆われていたようだ」
「あんな見えない奴らに連続で襲われたりしたら身が保たないな」
「ジェニファーちゃんは?」
「キッドが側で看病してくれているよ。俺達にできる事はこいつらの分析と後々の為の対策を立てる事さ」
「ジョニーの大剣のお陰だな。今回の奴を倒せたのは」
「不可視の敵か──。厄介な敵が出てきたな」
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