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第2章 パラレリアクロス
2-4 襲い来る羽虫
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ハザードが工事現場に駆けつけるとメタリックな水色の羽を持つ異界の羽虫が何十匹と群れをなして居住区画へめざして行進している。
この羽虫達は人間は良い栄養源になるので本能的に人間を狩り更に繁殖しようとする生態を持つ。
まるでその姿はカマキリが人間の大きさまで成長したような姿だった。この羽虫達はほぼ世界中で目撃情報が寄せられている。
対策はしかし確立されていないのが現状だった。せいぜいマシンガンなどで無理矢理駆除するという方法しかない。
厄介な事に羽虫達は拳銃の弾に対する防御力が高く火力のある拳銃を使わないとならない。
民間にそんな拳銃が出回っている訳でもなく、故に警備員達にその対処を一任されている。公に警備会社に務める者達には拳銃の使用は許可されている。
今回の羽虫騒動で連邦政府が特例措置をした一例である。
サイド7の工事現場にはハザードの他にも警備員が配属されており、羽虫達の駆除は彼らの任務でもあった。
既に彼らは羽虫に対してマシンガンで対抗を始めているが、一向に羽虫の進軍は止まらない。
「バズーカを出せ! 一匹たりとも侵入させるな!」
カサカサと羽を鳴らして進む羽虫達の群れに警備員達は苛立ち始める。
「ワサワサとうざったいんだよ! この化け物共がぁ!」
「クソ! マシンガンの火力でも足止めするのが困難になってきたぜ! あいつらに有効な武器は無いのか?!」
「余所見するな! 羽虫共をこの区画で足止めするんだ!」
ジェニファーは羽虫の対策に追われているハザードに助け船を出せないかとキッドに聞いた。
「助ける事はできないの!? キッド」
「せめてこの武器さえ渡す事ができれば勝機が見えるんだけどよ」
キッドの手にはアルトカークス製の拳銃が握られている。アルトカークス製の拳銃はこの地球とは違う鉱石を使った弾丸なので羽虫に対して効果的なのだ。
しかも弾も拳銃自ら自動生成してくれるというハイテクノロジーな武器なのだ。
こうなったら何としてもこのアルトカークス製の拳銃をハザードに渡す必要がある。
しかし、一般市民はシェルターにて避難するように警報が出されている。
どうしたらハザードにこの拳銃を渡す事が出来るのだろうか?
「そうだ! ハザードの上司の主任にこの拳銃を彼に渡すように掛け合ってみようか!」
彼女らはシャッターで隔離された工事現場の主任と話したいと入口付近の警備員に直談判する。彼女らの迫力に気圧されたのか警備員は主任と呼ばれる男性を呼んだ。
程なく主任警備員が彼女達と面会する。
こんな状況で一体、何の用があるのか?
主任は回りくどい話を避けて本題にすぐ入る。
「一体、何の用ですかな?」
「ハザード・レスターにこの拳銃を渡して欲しいのです」
彼女らは一丁の拳銃を机の上に置いた。
一目では何の変哲もない拳銃に見える。
だが、ハザード・レスターにこれを渡して欲しいというのだからただの拳銃ではなさそうだ。
ハザードの射撃技術は警備員の中でもトップクラスで、流石は元エースパイロットと評価を得ている。
深く詮索している時間はない。羽虫の進軍は止まる事を知らない。
「わかった。ハザード・レスターに渡せば良いのだな?」
「はい!」
羽虫達も警備員の手により何十匹と駆除された。しかし輪をかけて増殖していくばかりだ。徐々に彼らにも焦りが出てくる。
「畜生! 奴ら、一体、どういう繁殖力なんだよ! 一向に数が減らねえ!」
「気圧されるな! ビビった奴が負けるぞ! 怯むな! 数は確実に減らしているんだ!」
「ハザード! 主任が呼んでいる! 新しい拳銃を手に入れたから取りに来い!」
「しばらく時間稼ぎは出来るか!?」
「5分くらいは!」
「頼む!」
ハザードは一旦、最前線から去ると作戦指示室へ駆け込む。
そこで主任がハザードに先程の二人組の女性が渡した拳銃を手渡した。
「これは?」
「あの羽虫に対して効果抜群の拳銃らしい。弾は自動生成されるからこれで掃討してこい」
受け渡しをされた拳銃は何の変哲もない拳銃に見える。しかし、羽虫に効果抜群なら絶望的な状況から脱する事が出来るかもしれない。
やるしかない。
「了解!」
また戦場に戻るハザードは、その道のりで拳銃の確認をする。どうやら弾の発射のやり方は従来型と同じ。
性能は実戦テストで推して知るべしという感じか。
スコープが付いているという事は狙撃も可能という事か。
彼が戦場に舞い戻ると試射として羽虫に一撃を入れた。
すると羽虫が一撃で葬られた。体を四散させて完全にバラバラに粉砕する。
しかもその弾の軌跡はまるでビーム兵器のような光線放ったのだ。
周囲の警備員達が沸き出す。
あれなら勝てる! 勝てるぞ!
「ハザード・レスターを集中的に守れ! 羽虫共をハザードの射線に入るように攻撃するんだ! そうすればいずれは殲滅出来るぞ!」
「了解!」
「こりゃあ凄い拳銃だな。弾切れの心配をする必要もないし、羽虫は一撃で倒せる。後は俺の腕次第って訳か」
次から次へと羽虫達の肉体がビームの一撃で四散していく。
ハザードの的確な射撃にも磨きがかかる。
そして羽虫の襲来が来て3時間弱でようやく羽虫の全滅を確認した。
「やった……! 完全に殲滅する事が出来たぞー!」
「やりましたね! ハザードさん!」
「皆の協力があればこそだよ! 後はこの拳銃を届けた人に感謝だな」
主任も羽虫の殲滅を確認して、その場に残っていたジェニファーとキッドに礼を述べた。
「羽虫の殲滅に成功した様子です。貴女達が渡してくれた拳銃のお陰ですかな」
そこにハザードがその拳銃を携帯したまま、作戦司令室へと入ってきた。
「主任。羽虫の殲滅作戦、完了しました! ジェニファーちゃん! キッド! 聞いたぜ! お前達がこの拳銃を届けてくれたんだってな! 感謝するぜ」
「この女性達から詳しい話を聞いたよ。世界中で起きている不審な事件を。ハザード。この際だから同行したらどうだ?」
「よろしいのですか?」
「その拳銃はどうやらハザード、お前しか扱えない代物と聞く。だが、それに似た武器なら今の科学技術を駆使すれば製造する事はできるかもしれない。なら、その異変の根源を断つのが平和への近道だろう?」
「実は俺もそう思っていました。先の戦争でこの世界は痛手を被ったのに、また戦争が起きる。そんなのは御免こうむりたい」
「じゃあ──」
「行こう! 今度は俺達がレム大佐を助ける番だ!」
こうしてハザード・レスターを仲間に加えたジェニファー一行は、次の目的地にサイド3【カルベローナ】へと進む事になった。
この羽虫達は人間は良い栄養源になるので本能的に人間を狩り更に繁殖しようとする生態を持つ。
まるでその姿はカマキリが人間の大きさまで成長したような姿だった。この羽虫達はほぼ世界中で目撃情報が寄せられている。
対策はしかし確立されていないのが現状だった。せいぜいマシンガンなどで無理矢理駆除するという方法しかない。
厄介な事に羽虫達は拳銃の弾に対する防御力が高く火力のある拳銃を使わないとならない。
民間にそんな拳銃が出回っている訳でもなく、故に警備員達にその対処を一任されている。公に警備会社に務める者達には拳銃の使用は許可されている。
今回の羽虫騒動で連邦政府が特例措置をした一例である。
サイド7の工事現場にはハザードの他にも警備員が配属されており、羽虫達の駆除は彼らの任務でもあった。
既に彼らは羽虫に対してマシンガンで対抗を始めているが、一向に羽虫の進軍は止まらない。
「バズーカを出せ! 一匹たりとも侵入させるな!」
カサカサと羽を鳴らして進む羽虫達の群れに警備員達は苛立ち始める。
「ワサワサとうざったいんだよ! この化け物共がぁ!」
「クソ! マシンガンの火力でも足止めするのが困難になってきたぜ! あいつらに有効な武器は無いのか?!」
「余所見するな! 羽虫共をこの区画で足止めするんだ!」
ジェニファーは羽虫の対策に追われているハザードに助け船を出せないかとキッドに聞いた。
「助ける事はできないの!? キッド」
「せめてこの武器さえ渡す事ができれば勝機が見えるんだけどよ」
キッドの手にはアルトカークス製の拳銃が握られている。アルトカークス製の拳銃はこの地球とは違う鉱石を使った弾丸なので羽虫に対して効果的なのだ。
しかも弾も拳銃自ら自動生成してくれるというハイテクノロジーな武器なのだ。
こうなったら何としてもこのアルトカークス製の拳銃をハザードに渡す必要がある。
しかし、一般市民はシェルターにて避難するように警報が出されている。
どうしたらハザードにこの拳銃を渡す事が出来るのだろうか?
「そうだ! ハザードの上司の主任にこの拳銃を彼に渡すように掛け合ってみようか!」
彼女らはシャッターで隔離された工事現場の主任と話したいと入口付近の警備員に直談判する。彼女らの迫力に気圧されたのか警備員は主任と呼ばれる男性を呼んだ。
程なく主任警備員が彼女達と面会する。
こんな状況で一体、何の用があるのか?
主任は回りくどい話を避けて本題にすぐ入る。
「一体、何の用ですかな?」
「ハザード・レスターにこの拳銃を渡して欲しいのです」
彼女らは一丁の拳銃を机の上に置いた。
一目では何の変哲もない拳銃に見える。
だが、ハザード・レスターにこれを渡して欲しいというのだからただの拳銃ではなさそうだ。
ハザードの射撃技術は警備員の中でもトップクラスで、流石は元エースパイロットと評価を得ている。
深く詮索している時間はない。羽虫の進軍は止まる事を知らない。
「わかった。ハザード・レスターに渡せば良いのだな?」
「はい!」
羽虫達も警備員の手により何十匹と駆除された。しかし輪をかけて増殖していくばかりだ。徐々に彼らにも焦りが出てくる。
「畜生! 奴ら、一体、どういう繁殖力なんだよ! 一向に数が減らねえ!」
「気圧されるな! ビビった奴が負けるぞ! 怯むな! 数は確実に減らしているんだ!」
「ハザード! 主任が呼んでいる! 新しい拳銃を手に入れたから取りに来い!」
「しばらく時間稼ぎは出来るか!?」
「5分くらいは!」
「頼む!」
ハザードは一旦、最前線から去ると作戦指示室へ駆け込む。
そこで主任がハザードに先程の二人組の女性が渡した拳銃を手渡した。
「これは?」
「あの羽虫に対して効果抜群の拳銃らしい。弾は自動生成されるからこれで掃討してこい」
受け渡しをされた拳銃は何の変哲もない拳銃に見える。しかし、羽虫に効果抜群なら絶望的な状況から脱する事が出来るかもしれない。
やるしかない。
「了解!」
また戦場に戻るハザードは、その道のりで拳銃の確認をする。どうやら弾の発射のやり方は従来型と同じ。
性能は実戦テストで推して知るべしという感じか。
スコープが付いているという事は狙撃も可能という事か。
彼が戦場に舞い戻ると試射として羽虫に一撃を入れた。
すると羽虫が一撃で葬られた。体を四散させて完全にバラバラに粉砕する。
しかもその弾の軌跡はまるでビーム兵器のような光線放ったのだ。
周囲の警備員達が沸き出す。
あれなら勝てる! 勝てるぞ!
「ハザード・レスターを集中的に守れ! 羽虫共をハザードの射線に入るように攻撃するんだ! そうすればいずれは殲滅出来るぞ!」
「了解!」
「こりゃあ凄い拳銃だな。弾切れの心配をする必要もないし、羽虫は一撃で倒せる。後は俺の腕次第って訳か」
次から次へと羽虫達の肉体がビームの一撃で四散していく。
ハザードの的確な射撃にも磨きがかかる。
そして羽虫の襲来が来て3時間弱でようやく羽虫の全滅を確認した。
「やった……! 完全に殲滅する事が出来たぞー!」
「やりましたね! ハザードさん!」
「皆の協力があればこそだよ! 後はこの拳銃を届けた人に感謝だな」
主任も羽虫の殲滅を確認して、その場に残っていたジェニファーとキッドに礼を述べた。
「羽虫の殲滅に成功した様子です。貴女達が渡してくれた拳銃のお陰ですかな」
そこにハザードがその拳銃を携帯したまま、作戦司令室へと入ってきた。
「主任。羽虫の殲滅作戦、完了しました! ジェニファーちゃん! キッド! 聞いたぜ! お前達がこの拳銃を届けてくれたんだってな! 感謝するぜ」
「この女性達から詳しい話を聞いたよ。世界中で起きている不審な事件を。ハザード。この際だから同行したらどうだ?」
「よろしいのですか?」
「その拳銃はどうやらハザード、お前しか扱えない代物と聞く。だが、それに似た武器なら今の科学技術を駆使すれば製造する事はできるかもしれない。なら、その異変の根源を断つのが平和への近道だろう?」
「実は俺もそう思っていました。先の戦争でこの世界は痛手を被ったのに、また戦争が起きる。そんなのは御免こうむりたい」
「じゃあ──」
「行こう! 今度は俺達がレム大佐を助ける番だ!」
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